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救命活動with転生Girls!  作者: 涼雲ルミ
救世主と元JK
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8.元JKは全力を出し、

「グォォォォォオオオオ!!!!!」

「「ギャァァァァァァァァアアアアアアアアアア!!!」」


ドラゴンと少女、そして私の悲鳴が…森全体に響き渡る。

「やっぱり!だからいったじゃない!!」

「ごめんなざいぃぃぃぃいいい」

少女が呆れたように、そしてこれ以上無いくらい大声を出しながら叫ぶ。身体を張った大声に思わず拍手したくなるレベルだった。そして、その叫びと文句が長く続くか…と思いきや、思っていた以上に短く、すぐにその声は無くなり、ドラゴンの鳴き声だけが耳に残る。

それから、少女は急に立ち止まった。表情が見えず、先程の私のように下を向いていた。


「……」「ちょ、なにたちどまって…」

そう聞くが、何も答えない。でも、繋いだ手は…少しだけ震えていて、それでも力強い握りで。

思わず考えさせられる。…このままで良いのか、良いわけない、と…そう言っているかのようだった。…うん、そうだよね、ここに来てまで逃げ回るとか…女が廃る!!

「セラフィーナさん、いけるわね?」

少女の意を決したようなのにそれでも少し震えている瞳に、思わず吸い込まれる。

「…もちろん、だって…おとうさまについてくときめたのは、わたしなんだもん!」

私も、同じように出来るかはわからないけれど…、目を見開いて、意を表するようにそう答えた。


「グォォオオオ!!!」

「みぎ、ひだり!うえ、ッッ」

それから、少女が声に出してくれるお陰で幾らか避けやすくなった。前を見ているのに…まるでドラゴンが見えるかのように正確な指示だった。…凄い、凄すぎるよ。

……私、せっかく前世のゲームの記憶を持ってして生まれてるのに、こんなんじゃなんの役にも立てないんじゃ…


「いい、よくきいて!ひによわいのはみず、こおりでかためなさい!」

ッッッ…ダメダメ、今はそんなこと言ってる余裕は無いのよ!

「はいっ!っっ…こおり…、」

氷系で何か有ったかしら…その、イメージ…なりたい自分…。猛吹雪とか?うんん、前世でそんなの体験したことないからしょぼくなりそう。もっと…こう、革命的な氷…冷やす…固める……

「……ぁ…どらいあいす!……よし、」

ドライアイスの出来方としては…まずは二酸化炭素があって、それを特装置で加圧圧縮して冷却することで液体を作る… 次に、この二酸化炭素の液体に急速にプレスをかけ、気化熱を奪うことで粉末状の固体に…!!

「…にさんかたんそ、あつまって!ドラゴンのまわりをかためちゃえ…!!」

固めることは出来なくても、ドライアイスの冷たさは異常だから…、火属性のドラゴンになら効く!…筈…。現に、少女の言う通り…火属性にはドライアイスの効果は抜群だったらしい。戦意喪失したのか、倒れたまま動かなくなってしまった。

「なんとかとめられた…あいしょうってだいじなんですね…」

正直にそう伝えるも、少女はまだ真剣な表情でドラゴンがいた場所を見つめた。

「そうね、…でもまだおわってないわ、」

それから、少女はそう答える。…へ?まだ終わってないって?いやでも、ドラゴンは倒したんだし、これ以上出来ることなんて………

「えっと…」

私が戸惑いながらそう声を漏らすと、少女は少し言葉を詰まらせ…それから覚悟を持った表情で続けた。

「ドラゴンさんはそんなにわるいこじゃないわ、…このくろいもやでこころがあくにそまっているの、」

……なんでこんなにも詳しいのか、その真相はわからない。…でも、ドラゴンが悪い子じゃないって言うのが本当だと言うのなら…


「…ってことは、このくろいもやをとりのぞけば…!」

私がそう言うと、ふわっとした笑顔になり頷いてくれる。少し悲しそうだったのは気の所為だろうか。

それから、少女はさらに言葉を続けた。

「こういうのはやみまほうのぶるいね、…ちなみにセラフィーナさんのうつわは?ひもこおりもつかってたみたいだけど…」

……器…“魔力の器”のことだろうか。それなら確か、ゲームの説明でのセラフィーナは、“聖魔法の器”の持ち主だったっけ。なんも考えずに使いまくってたけど、言われてみれば火と氷を両方難なく扱えるのは、聖魔法か光魔法かのどちらかだけだものね。

「…かくしょうはまだないです、らいげつはかるよていだから…、」

でも何にせよ、彼女には本当のことを話す必要がありそうな気がする。だって…少なくとも、私が記憶を取り戻してから出会ってきた人の中でこの世界のことを1番よく知ってるのは彼女だから。だから、この子を助ける為にも、最善の方法を選びたい。

「でも、げーむのせつめいではせいまほうでした!」

「…、つまり、?」

「せいまほうです!!」

間髪入れずにそう答えると、少女は若干引き気味に「そ、そう…ありがとう?」と答えてくれる。…しまった、ちょっとやり過ぎたかもしれない。

いやでも、多分…絶対、必要…だし………


「じゃあ、いめーじして」

私が心の中でうじうじしていると、何を思ったのか少女は堂々とした声でそう言ってくる。何か思いついたのだろうか。

「…くろいもやをとりのぞくには、やみまほうのどれをつかう?」

そう聞かれ、なんとか【オトチカ】の魔法の設定を頭の隅から引き出してくる。

「えっと…ぶつりはむり、あたまのかいてんもだめ、ちゆは…わからない、」

闇魔法のうち、物理系の“打斬”は見るからに効かなそうだし、“算機”なんて以ての外。…“療治”は…ちょっとありそう…?

でも、黒いモヤっていうくらいだから、治すっていうより救うってイメージかのかな?だとしたら治癒だけじゃ意味なさそうだし…

「……なら…!!」

「なら?」

少女は、貴女ならわかるでしょ?みたいな笑みで見てくる。その期待に応えられると良いんだけど…、……

「ゆうじゅ…?」

そう思いながら、残りの一つ…“幽呪”と答えた。

…すると、少女はぱっと華やかな笑顔になりながら話を進めてくれる。

「うん、せいかい。しくみをりかいすれば、あのくろいもやもとりのぞけるはずよ!」

………仕組みを、理解すれば…!!

ということはつまり、化学反応や物理現象が何故そえなるかを応用する、ってことと同じだよね?

えっと…この黒いモヤが呪いだと仮定した場合、その逆数となるものをぶつければ収まりそう?でも少女の言うことを条件と考えると、必要なのは呪いの力…、……ということは…!


「…めにはめを、はにははを、…やみにはやみを!くろいもやをとりのぞけ…!」

闇の力を思いっきり込めれば、打ち消せるってことかな。毒には毒を、とも言うし…解毒剤も毒だけど、毒を打ち消してくれる毒だもの。

少しだけ眉を上げる少女を尻目にドラゴンの方を向いていると、私が放った黒い煙とドラゴンの黒いモヤが衝突し、白い煙が渦巻いている所だった。

これは…どうなんだろう?「や、やった…?」思わず声を漏らしてしまうが、これで正解なのかはわからない。少女も何か考え込んでいる様子だったし…流石に結果まではわからないわよね。


「いってみましょ、」「うん…!」

結局、少女のその言葉に応答するように声を上げ…、そのまま煙の中に居るであろうドラゴンを探しに行くことになったのだった。




それから、探してはいるのだけれど、中々見つからない。…アレだけ大きかったんだから、すぐに見つかると思ってたのに…。木っ端微塵に…!?とか考えてしまうが、あくまでもドライアイス。そんな簡単に木っ端微塵にする程攻撃、ってイメージ無いし、せめて火傷…ってのが妥当でしょう。

そんなことを思いながら探していると、段々白い煙が薄くなってくる。……そして、


「キュイ…キュ…」「………」

そして、なんか…見つけてしまった。


「あの…もしかして、このこだったり…?」

私ではわからないけれど、とりあえず顔を動物に近づけながら声を漏らす。大人の顔サイズより少し大きいくらいのトカゲに、なんか…傷ついている翼がついた真っ黒の動物。……うーん…でもさ、ちっちゃくない?

「たぶん、…でもそうとうよわってるわね、」

…………この子なんだ。いや、ちょっと待って?相当弱ってる…?確かに怪我してそうだし…

「そんな…わたしがへたなまほうをうったから…?」

増々落ち込んでしまう。うぅ…こんなんで大丈夫なのか私…。そりゃ攻略対象者達を助ける為にも頑張るけどさぁ…

「うんん、もともとくろいもやをまとうのはたいりょくがひつようなのよ、あなたのせいじゃないわ」

私の所為じゃない、ってはっきり答えてくれる少女。…それだけで凄く心が救われる。

どうしてだろう、彼女の言葉一つ一つが、身に沁みてくるの。…まるで、最終決戦のスチルを見ているようだわ。そう、最終決戦のスチルと言えば…オトチカの名場面。なんとかして辿り着いた主人公は、古の乙女と会話をすることにな…


「あとはわたしにまかせて、」


ー「後はこのセラフィーナ・エンシャンツにお任せください!クリスティーナ様…!」



うーん…なんか…何故かはわからないけれど、複雑な心境…。

「まっててね、すぐにらくにしてあげるから」

「ギュイ…」

いや、この子が古の乙女ことクリスティーナ様だなんてあり得…なくは無いけど、だとしたらゲームで出てきてないのはおかしいし。それに…

「まほうはいめーじ。…りょうちのちからよ、そらのごとくひろがりなさい!」

こんな力の差を見せつけられちゃったら…ねぇ?

みるみるうちにドラゴンの翼が治っていく様子に驚きを隠せない。さっきの戦いも貴女がやってくれれば良かったのに…と言いたいが、呼吸が荒くなってくから…体力が無かったからかもしれない。私も…5歳にしてはある方だと思うけど、火事場の馬鹿力が働いてたことを含めても全然思うように動けなかったし…


「ふぅ…」「うわぁ…すっご……」

それはそうと、少女が魔法を掛け終わり、一息をついた所で、私もそう声を漏らしてしまう。

うん、流石にこれは不可抗力でしょ。


それから、少女はドラゴンに向かって話しかけた。

え、ドラゴンに向かって話しかけた?…ドラゴンって動物と同じ扱いなんだよね?喋れるわけ??ゲームでも、基本は喋れないけど特別な力でしゃららら〜んみたいな感じのご都合展開、って時だけしかドラゴンの気持ちはわからなかったのに。

ゲームのことは伏せてそこを聞くと、少女からは呆れたような目が返ってきた。

「ドラゴンさんはきゅいきゅい、ってなくけど、こころにはなしかけてくれるの、でもこころをよみとってもらえるわけじゃないから、わたしたちはこえにださないといけないけどね」

「へ〜」

なんでこんなに知識が豊富なんだろう。流石にここまで来てしまえば、諦めも察しもつく。大方、この子も転生者なのだろう、ということくらいは。

そして、そんな彼女に気を取られている私だったが、次の瞬間脳内がパンクしそうな羽目になることは知らなかった。





『ここ…どこ……?』「「………」」





ドラゴンの、この…聞いたことある声によって。


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