やっぱり俺はメイベルが嫌いだ。
ブレイド視点です。
激怒した。
「お前ら弱すぎぃ。どうせ才能任せで大した修行してないんだろ?宝の持ち腐れだな!お前ら大したことないし、どうせ親も大した奴じゃないんだろぉ?」
「ちげぇねぇ。親の教育が悪いからお前らのような才能の芽が潰れるんだよなぁ」
「「………は?」」
おいクソチビ、デカブツお前ら今なんて言った?誰が努力してないだと?師匠が大したことないだと?
その怒りはメイベルも感じているようで、すぐ隣にいる魔力を放出していた。
クソチビの戦略によって俺もメイベルも思うように戦えず、追い詰められていた。
呼吸も乱れ、肩で息をしている。
「ふ…何かする気か?ならやってみろよ、ばぁか」
「はぁぁぁ!」
俺とメイベルに対し、クソチビは少しビビる様子を見せるも直後、デカブツが俺たちに接近して大剣からの一撃を放ってくる。
本当によくできた連携だ。今のデカブツは俺とメイベルの隙をついての一撃だろう。
クソチビが相手を翻弄し、その隙をデカブツがつく見事な連携。尊敬に値する。
それでも、お前たちは俺を……いや、俺たちを舐めすぎだ。
ーーキン!
デカブツ放った一撃は弾かれる。
メイベルの高密度の魔力障壁により。
「……流石だな」
「あなたの一撃に比べれば大したことないわ」
お互い称賛する。
まさか俺まで守ってくれるとは。
「俺も魔力障壁に入れてくれるなんてな……てっきり自分だけかと」
「それもよかったけれど、どうも私一人じゃ勝てないのよね。……おじいさまを馬鹿にした連中をタダで済ます気には慣れないの」
「俺も同意見だ」
「ふふ……初めて意見あったわね」
確かにそうだ。師匠を馬鹿にする奴はどんなやろうでも決して許せない。後ついでにメイベルの努力についても。
「……一次休戦でいいんだよな」
「ええ。不服だけど……最初で最後よ」
自分たちの大切な人を悪く思われるより好きじゃない。
それに何より……負けるのは嫌だ。
「「後悔させてやるよ(わ)」」
生まれて初めてのメイベルとの共闘。
こいつらを倒すには相応の連携が求められる。だが、俺とメイベルは生まれてからずっと戦い続け、お互いの手の内がわかる。
どのタイミングで攻撃してくるかも大体予測がつく。
俺とメイベルはお互いに攻め始めた。
俺は相手二人に攻め込み、メイベルは地面に魔力を送り込む。
「今更足掻いたって無駄ぜぇ」
だが、攻めたタイミングで相手も動き始める。クソチビはデカブツの後ろに隠れ、デカブツは俺の一撃に備える。
「は?…なに…を」
瞬間、今まであった二人の余裕に焦りが見え始める。
『地面よ 割れろ』
メイベルの詠唱により、会場の地面に大きな凹凸ができた。俺は凹凸のできるタイミングで空へ飛び、凹凸を足場に使い相手に接近する。
「はぁ!」
直後、俺は気を使い、地面に無数の斬撃を飛ばし、土煙を起こす。
『風よ 巻き上がれ』
「が!……目が!」
「クソ!何も見えない!」
メイベルは風魔法を使い、クソチビ達の足元から俺が発生させた土埃を更に巻き上げ視界を塞いでいく。
二人は急なことに混乱し始める。そこに先ほど連携はない。
俺たちがやっているのは連携ではない。俺たちは相手を戦闘不能にするための最も有効的な手段を行なっているだけ。
俺もメイベルならこうするだろうなとわかっているから次の行動ができる。
次の一手で勝敗は決するだろう。
俺はクソチビが煙幕から出ようとした瞬間を狙う。気を溜め、仕留めるための準備を。
メイベルはデカブツを倒すため、魔法の準備を始める。
「くそ!」
ーーここだ。俺は土煙から出てきたクソチビに接近する。
人間は急に視界が塞がれるとパニックになる。だから、まだクソチビは落ち着きを取り戻していない。
「終わりだ」
「ぐべら!」
俺はクソチビに斬撃を喰らわせダウンさせる。
『雷の鉄槌』
メイベルはデカブツに向けて巨大な雷魔法の塊を放った。
どんなに防御力が高かろうがそれを上回る一撃を喰らわせれば倒せる。何より、感電させれば気を失わせることができる。
ただ、魔法発動の準備に時間がかかるのが難点だが。
「よく俺に合わせられたな」
「あなたの考えることくらいわかるわよ。……何年の付き合いだと思っているの?」
俺は気絶したことを確認した後、メイベルの元へ向かう。
メイベルは俺に微笑みながら答えてくれた……かわい……くない!ただの幻覚だな。
……それにしてもここまで上手くことが運ぶとは。
メイベルと一緒に戦うのも悪くないかもな。
「決着がつきました」
大会の司会進行役のマイク音声が聞こえる。これなら優勝するのは余裕ーー。
「ブレイド、メイベルペア。規定以上の規模の魔法使用により……失格です」
「「………は?」」
これは大会後に知ったことなのだが、魔法の使用は規定があったようだ。
え?そんなルールあったのかよ。
こうして俺たちの魔剣武闘大会は終わりを告げたのだった。
思わぬ結果で敗退した俺とメイベルは会場から出て街を歩いていた。街は大会開催中でお祭り騒ぎだが、俺らの雰囲気は最悪だ。
「お前、ルールくらい見とけよ」
「は?あなたがそもそも私に斬撃飛ばさなきゃこんなことには!」
「だから、謝っただろう!」
「わざと以外に何があるっていうの!」
「……久しぶりじゃのう。元気そうです何よりじゃ」
「「ひ?!」」
え?!なんで師匠いるの!
いや、見た目変わって好青年になってるけど、この威圧を間違えるはずがない!
少し口喧嘩をしようとした瞬間、お怒りの師匠に話しかけられた。
「気になり、観戦しておったのじゃよ。……全て見ておったワイ。試合中の喧嘩も」
「い…いや、師匠、あれは喧嘩じゃなくて」
「そうです。偶々魔法が飛んでしまっただけで」
師匠の威圧にビビるも言い訳を始める俺とメイベル。だが。
「あれが喧嘩ではないと?……ここは一つ、お主らの認識を改めなければならないのう」
「「……はい」」
この日、俺とメイベルは師匠により半年ぶりの雷を落とされたのだった。
追伸。
会場を壊したことにより請求書が俺たちに送られ、集めなきゃいけないお金が増えてしまった。
師匠に俺たちを信用できないと断言されてしまい、お金集めはマイナスからの再スタート。
今度は師匠直々の監視が加わった。
今日の一件がきっかけで師匠を加えた俺とメイベルの3人は各地を回る旅に出た。
期限は請求書の金が集まるまで。俺とメイベルの関係が良好になるまでだ。
「先は長く、険しい道になるのお」
師匠は出発の時、最後にため息をしながら呟いていたが、俺とメイベルは聞かなかったことにした。
お読みいただきありがとうございます。
完結となります。
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