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教えてあげるわ……食べ物の恨み

メイベル視点です。

 おじいさまから家を追い出されてから3ヶ月が経った。

 私とブレイドとの共同生活が始まった。

 まぁ、過ごすと言っても日常の場がおじいさまの家から外に変わっただけ。


 私とブレイドは物心ついた時から一緒にいたわ。

 私たちの生まれた日はわからない。

 

 魔物によって滅ぼされた村の生き残りで、偶々居合わせたおじいさまに助けられ、今に至るとか。

 正直おじいさまがいなければ今ごろ私もブレイドもいなかったわ。

 だから、私もブレイドもおじいさまが大好きで尊敬している。

 もしもおじいさまを馬鹿にする人がいたら何をするかどうか。


 おじいさまは昔、魔王の脅威から世界を救った英雄の一人だそう。

 魔法と剣を極めた魔法剣士として、世界に名を轟かせたとか。ただ、色々面倒くさいからと国を救った功績でもらった山に隠居していた。


 私は物心つく前からおじいさまの技術を教わった。もちろんブレイドも。


 魔法に才能がないブレイドは剣と気の使い方を。

 私は魔法を。


 気というのは体の生命エネルギーを操作して爆発的に身体能力をあげる技術……私にはその才能がなく、使えるけれど実践で使えない。

 だけれど、それを覆すような魔法の才が私にはあった。本当ならおじいさまみたいな魔法剣士になりたかったけどね。


 少し、気の才能を持つブレイドに嫉妬してしまう私もいる。


 でも、おじいさまは教わったことを覚えるとすぐに褒めてくれる。だから、私はおじいさまに褒められたい一心で魔法を学び続けた。


 それはブレイドも同じ気持ちらしく、私が努力を続ければブレイドもする。


 私にとってブレイドは越えるべき身近な相手ね。

 私が修業していると対抗してくるようにブレイドも修行をしてくる。

 酷い日だと日が沈んだ後も続ける。おかげで何回おじいさまに叱られたことか。


 早く折れてくれればいいものを。

 

 それを言ったら毎回、喧嘩に発展しておじいさまにまた怒られる。

 そんな毎日を過ごしていた。


 だけれど、ある日を境に私はおじいさまの元を離れてしまった。

 ブレイドのせいで。


 私が大切にしていたお菓子食べるだなんて、本当最低よ。いつかやり返してやりたい。

 

 でも、それをしようとしたら呪印魔法によって強制的終わらせられる。

 どうにかできないものかと考えても方法が思いつかないわ……どうしようかしら。


「おはよう」

「……ああ」


 宿の部屋からでて、2階から1階へ降りると食堂の席にブレイドがいたから挨拶をしておく。

 時刻はすでに、10時すぎであった。今日は休日だ。

 一週間に一度固定で休みの日を作っている。

 夜更かしできた理由は次の日休みという理由も含まれている。


 そっけない挨拶をしてきたブレイドの座っている机には食べ終わったであろう食器が置いてあった。


 そういえば今日、私は朝食のデザートにアップルパイが出る。

 私が止まっている宿屋のアップルパイは最高だ。

 おじさんの特製レシピで一週間に一回出している。今では私の数少ない楽しみね。

 

「今日は遅かったじゃないか?夜更かしでもしていたのか?」

「え?……まぁ。昨日買った小説がおもしろくてね。ついつい夜遅くまで」


 そんなことを思いながら他愛のない会話をする。


「そうか。あまり夜更かしするなよ。お肌に悪いぞ……一応、女なんだから。そんなんだから成長しないんだ」

「は?」

「あ?」


 こういうところが私は嫌いだ。毎回毎回私にちょっかいをかけてくる。

 8歳くらいからだろうか?それ以前は仲良く二人で過ごすことが多かったのに。

 

 おじいさまの呪印魔法にはいくつか穴があった。

 例えば、本気で倒しに行こうとしないと発動しない。 

 口喧嘩やちょっかいをかける程度の魔法なら適応外らしい。

 依頼の途中にブレイドの近くにいた魔物相手にブレイドごと魔法を放ったら呪印魔法は発動しなかった。

 妨害程度ならだいじょうぶらしい。

 

 あと、ブレイドを挑発して怒らせて私に刃を向けるよう仕向けたら魔法は発動し、ブレイドのみが魔法適用になる。これは二人生活が始まって1月くらいに依頼を受けている時に私がブレイドをはめた時に検証済み。

 


 あの時の悔しそうにしているブレイドを思い出したら今でも笑いそうになってしまうわ。

 

 なんともまぁ、微妙な魔法だこと。でも、喧嘩をして多額の被害を抑えるという面では効力を発揮している。

 おじいさまのことだから狙ってやっていることでしょうね。


「……あなたこそ、少しは本を読んで勉強したらどうなの?おじいさまから言われていたのに……そんなんだから半端者って言われんのよ」

「あ?」

「は?」


 こんないつも通りの口喧嘩をやりつつもお金は着実に溜まっていく。

 

「……はぁ。トロいんだから早く飯でも食ったらどうだ?俺は早く依頼に行きたいんだ。……あ、あとデザートでアップルパイ出てたぞ!確か好きだったよな」

「……そう」


 こういう時反応に困る。

 昔なら戦闘になっていたのに、呪印魔法にビビって戦闘ができない。そのせいで微妙な雰囲気になってしまった。

 単なる世間話のつもりなのか、話を切り替えるためなのか、たまにこういうふうに話しかけてくる。

 どんな反応すれば良いのかわからず、その後少し気まずい雰囲気になる。

 

 いつも通り喧嘩腰に話しかけてくれた方が返しやすいのに。


 ま、別に放っておこう。

 今日はアップルパイか、朝初めはブレイドにムカついたけど、これでマシになった。


 これでブレイドがいなきゃ清々しい朝なのに。

 でも、離れたらどうなるかわからないし、おじいさまの指示だから仕方ない。


「いただきます」


 美味しかった。


 こんな依頼をこなしお金を貯め、ブレイドと口喧嘩をするという変わらない生活、そんな生活に大きな変化が起こった。


 それはおじいさまからある手紙が届いた。

 内容は、《魔剣武闘大会》に出るように指令がきたことだ。

 1人2組で出場となるトーナメント戦。

 

 私とブレイドで出場し優勝しなさいとのこと。

 嫌だと思ったけど、優勝賞金は好きにしていいとのこと。


 だから、私は嫌々出場することにした。


 協力なんてごめんだ。だから、ブレイドとルールを取り決めをした。


 お互い手助けしない。

 基本一人で戦う。


 そんなことを決めて大会に臨んだのに。

 それなのにあのバカ野郎は。


「あ……すまん!」


 戦闘の途中、私と対戦相手に向けて斬撃を飛ばしてきやがった。

 

 すぐに謝罪してきたが、あの野郎のことだ……絶対わざとだ。

 ああ、あなたがその気なら私も合わせたあげる。


 この前のお菓子の件、許してないのよ。


 分からせてあげる。


 食べ物の恨みは怖いのよ。

お読みいただきありがとうございます。



もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら差支えなければブックマークや高評価、いいねを頂ければ幸いです。


評価ポイントは作者のモチベーションになります。


よろしくお願いいたします。


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