師匠に怒られる多額の請求書出されて旅立った
最後まで読んでくださると幸いです。
「お主らいい加減にしろぉぉ!」
その怒鳴り声により、草木が揺れ、鳥たちが飛び立った。震えながらも俺、ブレイドは土下座をしながら頭を下げていた。
静寂であった森に山彦のように反復されるその怒鳴り声をしたのは俺の師匠で髭を生やした70歳とは思えない肉体美を持つ老人、名をマーレス。
「一体何度いえばわかるのじゃ!」
「待ってくださいおじいさま、そもそも私半端頭が悪いんーー」
「言い訳するでない!」
こいつ、何言ってやがるんだ!
俺の左に同じく正座をしている綺麗な金髪ロングの美少女、メイベル。世間一般からしたら綺麗な容姿をしているのだろう。
街中で歩いていたら男ならば必ず振り返ると思う。いや、実際に振り返る。俺はいやいや師匠の頼みで仕方なく買い物に行った時、顔を赤くしている男を見たことある(ちなみにその男は彼女連れでその後問い詰められていた。ざまぁ)
だが、俺からしたらこいつはそれを台無しにするくらいの慎ましい胸と低身長が特徴チビ。
あーあ。可哀想な俺。こいつのせいで師匠に怒られるなんて。
「あなた……今失礼なこと考えていたでしょ?」
「いや、別に。……悪くないのに、巻き込まれる俺可哀想だなって」
「……は?」
ピキッ……と額の血管が浮き上がるメイベル。おーお。怖い怖い。
「は?……あなたが悪いんでしょう?!そもそも私の大事にしまっていた高級お菓子食べるから!」
「知らなかったんだから仕方ないだろ!なら、名前でも書いてればよかっただろ!」
「書いてもあなたは食べるでしょ!」
「てか、たった一つ食べたくらいで起こりすぎだろ!いいじゃん一個くらい!残り三つもあったんだから」
本当にたった一つ食べたくらいで何故そこまで怒るのだが。理解ができない。
一つくらいくれたっていいじゃないか。
「私の毎日の楽しみだったのに!」
「あんな甘いものをか?食べ過ぎだろ?太るぞ?」
「は?……あなたには関係ないでしょ?デリカシーってものがないの?……ああ、わからないわよね。半端者のあなたには?」
「……は?」
メイベルは俺の体を見ながら鼻で笑いながら言ってくる。
言っておくが、俺の容姿は顔はそこそこ整っているだろう。身長もそこそこ高い。
髪の色は黒と白が半分となっている。髪に関しては結構気に入っている。それをこいつは……半端者だと?
「お前にはわからないんだろうな。この特別感がある髪の良さなんて。これだから、嫌なんだよ。寛容さが慎ましい奴は」
「あなた……死にたいの?」
「は?…やってみろよ。ただでさえ低いお前の身長さらに低くしてやるよ」
「は?」
「あん?」
俺がメイベルの特徴になぞり言い返すと、さらに怒りが増していく。
いいだろう。……今日こそわからせてやるよ。
ちょうど師匠に止められて消化不良だったんだ。勝負はずっと引き分け続きだった。
「お主ら……いい度胸をしておるなぁ。ちっとも反省してないようじゃ」
だが、勝負が始まる前に師匠によって止められる。額に血管が浮き出ている。相当お怒りのようだ。
そりゃそうだ。こんな手間のかかるメイベルがいたら。
「謝れよお前、師匠怒ってるじゃないか」
「あなたに怒っているのよ。おじい様すいません。分からずやの弟弟子には私から言っておくので、お怒りは鎮めてください」
「は?お前が悪いんだろ?そもそも、兄弟子は俺だぞ?わからないのか?」
「だから「もういい」……へ?」
俺とメイベルが会話をしていると師匠はそう一言で遮る。
「ブレイド……周りをよく見てみぃ」
「え?……周り?」
冷たい絞り出すかのように師匠は俺に話しかけてくる。
いや、周りって……綺麗な自然が広がっているくらいしか。
「草木が多く見えます」
「ほう……そうか。ではメイベル、自分たちの足元には何が落ちている?」
「え?……そうですねぇ。本が落ちていますね。後は……割れた食器とか」
「……そうか。草木が見えて……割れた食器や本が……そうかそうか」
師匠の言葉にメイベルは地面を見ながら、素直に答える。
だが、師匠は一人自分に言い聞かせるよう呟き始める。
「おかしいのう……家の中のはずなのに、周囲一面草木が見えるとは……綺麗に片付けてあったはずの本や食器が地面に散乱しているのもおかしいのう……もういい。可愛い愛弟子たちだからと今まで目を瞑っていた。いつになったら二人仲良くなるかと……だが、喧嘩は日が経つにつれて回数が増え……挙げ句の果てに家まで破壊するとは」
「し……師匠?」
「おじいさま?」
怖い……今の師匠は今までにないくらいお怒りだ。
俺たちを威圧するように魔力を放出する姿はかつて国を救った英雄の一人だと納得させられる。メイベルも同じことを思っていることだろう。俺と同じように震えている。
「「え?」」
すると師匠は右手を俺に左手をメイベルの頭の上に乗せる。
そして、話し始める。
「これだけはしたくないと思っておった。弟子たちに厳しすぎるのではと。……だが、もう限界じゃ。……荒療治でなければお主らの病気は治せぬようじゃ」
「病?……いや、師匠何言って」
「そうですよおじいさま、荒療治って」
「許せ!喝!」
痛い痛い!師匠何しやがった!
優しく頭を触られていると思ったら急に魔力を込めてきた。
痛いのはメイベルも同じらしく、額を撫でながら、涙を流していた。
「何を……」
だが、師匠に説明を求めようとするも、メイベルの額には魔法陣のような……赤色の紋章が浮かび上がるのを見て驚き言葉が詰まる。
「おい、なんだよ額のやつ」
「あなたこそ……え?……なにこれ?」
戸惑ってしまい、俺もメイベルも同様する。だが、そんな俺たちを見て、師匠が発言してくる。
「呪印魔法じゃ」
「へ?……なんですか師匠、呪印魔法って」
初めて聞く単語に疑問符をあげる。
「術者が対象に触れて魔力を流すのが条件で、魔法をかけられた対象者は術者が定めたルールを破ると発動する。……でも、呪印魔法って概念あやふやすぎて使い勝手が悪く今では使い手はいないはずですが」
「さすがは勤勉なメイベルだの……して条件は……いや、これは一度本人たちに」
へぇ。そんな魔法あるんだ。つまり師匠が俺とメイベルにやったのはその呪印魔法ってやつか。
俺魔法使えないから詳しいわけではないけど、そんなものあるんだ。
だけど、聞く限り使い勝手悪そうだなぁ。
それにしても師匠何か思いついたような発言したけど、なんだろう?
「ブレイド、お前も少しは勉強したらどうだ、メイベルを少しは見習え」
「……ふ。そうよあなた……少しは私を見習ったらどうなの?」
……ムカ。
メイベルのやろう、鼻で笑いやがった。
たまたま知っていただけなのに。俺だってこいつが知っていなさそうな知識持っているのに。
「よく知っていたな。すごいな。その小さな体には見合わないほどの知識があるらしいな」
「………あなたも少しは勉強したらどう?半端な知識だけでは社会で生きていけないわよ。半端な!……知識だけでは」
「おい、なんで一部強調してんだ?」
「別に……気のせいでは?その半端な頭で考えてみれば?」
妙なところだけ強調してくる。
……むかつくな、その態度。
「は?……お前の身長さらに半分にしてやろうか?」
「は?……できるならやってみなさいよ。返り討ちにしてあげますよ」
「本当にお主らは……」
今日こそはぶった斬ってやろう。そう決意して気を溜め、剣に手をかけメイベルに向かう。
メイベルは魔力を込めて同じように戦闘体制に入る。
……だが、戦闘に入る前お互いの額に赤い紋章が光出す。
え?……何これ。
だが、別に何か体が痛くなるわけではなく、異変が起きるわけではなく。
気にしたってしょうがない。
今はこの分からず屋に教えてやらなければ。
「いくぞ!……今日こそはどっちが上か……な……あれ?」
「いいでしょ……あ……あれ?」
あれ?……なんか頭がジンジン痛み出しているような。……どんどん痛みがまして……。
「い…痛い痛い痛い!」
「あたたたたた!」
めっっちゃいたい!
頭を抱え悶える。メイベルも同じように頭を抱えて地面に倒れる。
え?……なんだよ一体?
だが、一つわかることはこの原因は少なくとも師匠にされたことが原因だろう。
「今のでわかったであろう?……喧嘩しようなら……。あと、念のため言っておくが、術者が魔力を流せば……」
「「はい!!」
その悪魔のような笑みをしている師匠は今までで一番怖かった。
全てを言わなくても察してしまう。
だが、師匠はまだまだ終わらなかった。
今までのは前座……メインは他にあった。
ドスン……師匠はアイテムボックスから大量の紙束をとりだした。
「あ……あの、師匠これは?……ものすごい額が書かれているのですが」
「これはのう、お主ら二人が喧嘩した被害により発生した請求書じゃ」
「……へ…へぇ」
こ……これをどうしろと?
メイベルも請求書をみてボケーっとしている。
俺も師匠の意図がいまいち理解できない。
「ここに書かれている額……きっちり耳揃えて持ってきなさい。二人で協力してな」
「お、おじい様?なぜ、二人なのですか?」
「そうですよ。金を稼ぐなら俺一人でも」
この破格の請求書のお金を揃えるだけでも大変なのに……メイベルと?……いや、何かの冗談か?
「もともとお主ら二人が原因だ。それに、お主らの悪い病を治す良い機会だ……なんだ?……何か言いたいことがあるのかな?」
「「い!いえ!滅相もない!」」
師匠は俺とメイベルに文句を言う隙を与えなかった。
その後、俺とメイベルは師匠の命令により、旅立った……二人仲良く。これは最後に言われた師匠の追加説明によってだ。
「あ、一つ言っておくが、わしの目を盗んで一人になろうとしても無駄じゃからな。わしがお主らにかけた呪印魔法の効果はもう一つあってのぉ……。もしも、一定距離離れたら発動するからの?」
「え……その、一体どのくらいですか?」
「試してみればわかるのぉ」
師匠の言葉に俺もメイベルも体が震える。
それはついさっき感じた頭による震えだ。
だから、俺とメイベルは黙って頷いた。
こうして俺とメイベルの共同生活が始まった。
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この物語は本日中に完結します。
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