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宵闇の魔女 ロゼッタ・ジェーン 

お披露目が終わると、私達は国王陛下と司教に挨拶をした。



「んじゃあ、帰るぞ。お前らもパーティー、すんのか?」


「我々は晩餐会を既に行いましたので、こちらは外交を致しますよ。とても素晴らしいお披露目でした。皆様、パーティーをお楽しみ下さい」


「ああ、お前らもな。うーん、マリアは無理か。外交ならルーも忙しいか。アナはピーチクパーチクと茶があるな。レオとジョージは暇なら玉ねぎ屋に来てもいいぞ。晩餐会は終わっているんだろう?私らで薬局屋周辺は防御膜をがちがちに張るからここよりも安全だ。来たいなら夕方うちの裏の食堂に来ていいぞ。私はもう帰って飲むからお前ら来ても覚えてないかもしれんがな」



私は頷き、魔法使いの皆を見ると皆も頷いていた。



「師匠もこう言ってますし、良ければどうぞ。コレを来られる時に見せて下さい。薬局屋のカードですけど招待状代わりにして下さい。住所も乗っています」


二人は黙って頷くとカードを受け取ってくれた。


「有難う。行けるかどうか分からないけれど、嬉しいよ」


王太子殿下がおっしゃり、第一王子様も頷かれる。


「街のパーティなんてどんなものだろうね?是非行きたいな」


師匠は手をヒラヒラ振ると、じゃーなー、と言って。パチンと指をはじくと転移をした。




私達が店に着くと遅れて皆も現れた。


「お、ランはどこだ。屋根だな、あいつ登って見てたな。おーい、帰ったぞ」


師匠が二階に呼びかけると、ランさんが手を振り回しながら降りてきた。



「おかえりー!!凄かったよ!!綺麗だったー!タイムの花も皆素敵!使い魔ちゃん達も恰好良かったよー!!ぜーーんぶ良かった!!王都中の歓声が聞こえて、凄かったよー!!今日の空を絵に出来たら良いねー!!皆、感動して喜ぶよー!!すっごく売れると思う!あ、皆さん久しぶりですー」


「ランさん、最後の方が残念です」



ランさんに皆が挨拶をし、ランさんは使い魔達を褒めていた。



「やあ、ランちゃん久しぶり。相変わらず元気そうだね」


「ベンさん、美味しいトマト煮込みをマツさんにお願いしてますよー。沢山食べて下さいねー」


「わあ、嬉しいね」


ベンさんは手を上げ喜び、ゼンさんはフードを取って頷いた。


「・・・・・・」


「クリスさんも、ゼンさんもお久しぶりです。お元気そうですねー」


クリスさんはローブの下をごそごそして、絵具や、ノート、筆等を出していく。


「やあ、ランさん。君も元気そうだね。私がロゼッタさんの名付け親になったよ。ゼンは兄役で、ベンは見届け人だ。ロゼッタさんの保護者が増えたね。これからも宜しく頼むよ、薬局の隅を借りてもいいかな?忘れないうちに今日のお披露目を絵に描いてしまおう」


「隅っこお使いくださいー。絵が出来たら見せてもらえますー?ロゼッター、名前、クリスさんに付けて貰ったのー?宵闇でしょう?よかったわねー、皆が騒いでたけどいい名前だと思う!」


「はい、ランさん。ちょっと恥ずかしいですけど、これで残念な二つ名は完全に無くなりましたね!」


「ヒヒヒ。さあ、玉ねぎ屋に行こう。パーティーの開始だ。飲むぞ!」


師匠は早速玉ねぎ屋に行こうとしている。


「師匠、早すぎですよ。マツさんに迷惑です、店で少しゆっくりしてはどうですか?」


「アア?いいんだよ。隣のジジイも暇なら誘うか。そこらから酒も食い物も集めて持って行って勝手に隅で飲んでればいいだろう?おい、ベン、お前も来るよな?」


「うん、もう行こうかな。あ、大通りのチョコケーキのお店に行こうかなあ。ロゼッタちゃん、名前と地図書いてくれる?」


「ある程度描けたら玉ねぎ屋の隅でも描かせて貰えるかな?今日のパーティも描きたいね。玉ねぎ屋の奥さんに聞いといてくれるかい?ロゼッタさん、パパは美味しい紅茶があると嬉しいな」


「・・・寝たい・・・」


「ロゼッター、マツさんに私も後で手伝い行くって伝えてくれるー?」


自由な人達が多いと皆が迷子になりそうだ。もう、師匠じゃないけど、皆の首に縄をつけたい。


みんな私に従うって言ってたけど、私に従う人なんて誰一人いない。私、お世話してばかりよね。新米魔女なんてこんなものよ。皆、私に色々頼むんだから。


やれやれと思いながら私は皆の方を向いた。



「皆さん分かりました。もう、マツさんにまとめてお願いするので、皆さん自由にどうぞ。ゼンさんは休憩室で寝て良いですよ。三時間したら起こしましょうか?新しいシーツは休憩室のクローゼットに入ってます。気になるなら自分で代えて下さいね。ベンさんここに、お店の名前と場所書いておきますね、今日開いてるかは知りませんよ?沢山食べては駄目ですよ。クリスさん、帰ってきたら紅茶入れます。ランさん、マツさんに伝えておきますね。では、師匠、行きますよ」


「有難う、行ってくるよ。お土産も買ってくるね」


「・・・優しく・・・起こして・・・」


「ロゼッタさん、パパに紅茶を宜しくね。濃い目がいいな」


「おい、隣のジジイ呼んで行くぞ」



ベンさんは手を振り消え、ゼンさんは休憩室に歩いて行き、クリスさんはイーゼルを店の隅に出し絵を描く準備を始めていた。ランさんは色々準備が忙しい様で、はーいと言う返事だけ貰った。


玉ねぎ屋に着き、師匠達や、絵の説明をするとマツさんは師匠が突撃しても驚く事も無く、好きにするといいよ、と言って貰った。師匠はマツさんの返事を聞く前に持参した酒とつまみを出し、パーティーの準備をしている隅でジョゼッペさんと一緒に勢いよく飲みだしていた。



「すみません、勝手にさせといてください。何かあったらウェルを置いておくんで使って下さい。私は一度薬局に戻ります。師匠、ジョゼッペさん、良い子にして下さいね、あ、マツさん、ランさんがお手伝いに来るって言ってました。ランさんに急ぎの用事の時もウェルでお願いします。それと、ジョージ王太子殿下とレオナルド王子様も来るかもしれません、じゃあまた後で」



ぽかんと、口を開けたマツさんは師匠にスープを出しながら頷いてくれた。


私は店に戻ると、紅茶を入れ、クリスさんの横に置いた。


店の隅でランさんは注文していたお酒を確認しては、マジックバッグに詰めていた。


「良いお酒ばかりにするとー師匠が、がばがば飲んじゃうからー。師匠には最初の方だけ良いお酒にしましょー」


お酒のラベルを見ながら師匠に飲ませるお酒を分けているランさんの側に私は立った。


「ランさん、今日は有難うございます。まだ始まってないですけど、パーティーが始まってしまったらゆっくり話せないかもしれません。これ、ランさんにプレゼントです」


私は茶色い包みを二つ出した。私の方を向き直ったランさんは目をぱちくりして、手を出した。


「えー、なにー?嬉しー」


ランさんは包みを受け取ると、開けていい?と聞き、中身を出した。一つの包みはマジックバッグ。マジックバッグにはツタにタイム、星の刺繍がされている。もう一つの包みは御守り。御守りの石はランさんの色。落ち着いた茶色と明るい茶色。


「マジックバッグと御守り?有難うー。嬉しー!」


「よかった。ジョゼッペさんとマツさんに相談したんです。今回のパーティーのお金をランさんが出すでしょう?私、こっそり出そうかと思ってマツさんにお金を持って行ったらマツさんに怒られてしまって。姉弟子に恥かかすんじゃないよ、感謝の返し方を間違えてるって怒られました」


ランさんは優しくマジックバッグを撫でると、ゆっくりと私を見た。


「金銭的に迷惑を掛けない事が大事かと思ったんですけど、マツさんから、お金を掛けさせても心配を掛けないようにするのが先だ、って言われました。心配は今後も掛けるかもしれませんが、私がお金以外でランさんに返せるものって考えたら、魔力しかないな、と。だからその琥珀には今出来る特大の守護を付けています。マジックバッグもランさん専用の最高の物を作りました。師匠には敵いませんが、きっと売ったら大変な値段になりますよ」


ランさんはにっこり笑って私の頭を撫でた。


「ロゼッタはー、私の妹弟子だからね?ロゼッタが魔女になっても、私は守るわよ?お金も私が勝手にする分はいいのよ?パーティーは私が開きたかったのよー?心配も掛けていいわよー。あ、クズ男の心配はもうやめて欲しいけどねー」


「心配もお金も掛けたくないですよ。それに私、魔女で強いです。大隊長と訓練出来る位らしいですし。恋愛の心配も大丈夫ですよ」


「うん、でもね。ロゼッタは私の妹弟子だから」


「・・・はい。宜しくお願いします。ランさん、いつも有難うございます」


ランさんはぎゅっとけしからん胸にうずめてくれた。


「ロゼッタはー頑張り屋さんだから、大丈夫よー、今日は一緒に楽しみましょー!食べて、飲んで、騒ぐわよー!!」


「はい!!!思いっきり騒ぎましょう!!」



私はニコリと笑いながら、ランさんに大きな声で返事をした。


第四章、完結です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 第四章完結お疲れ様です、 庶民的パーティーは、貴族の夜会とは全然違うし、王子殿下達にしてみたら珍しい経験になるかも?w 飲んで食べて騒いで、興が乗ったら歌って踊ってが入るかな (*^▽^)…
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