お披露目前夜の魔法使い達 1
明日も投稿します。
店の鍵を閉め、明日の為に早く寝ようとキッチンを出た所で、床に魔法陣が浮かび師匠は突然帰って来た。
私が振り向くと師匠が手を振っていて、恰幅が良いマシュマロのような魔法使いと、眼鏡と白いひげが似合う魔法使いと一緒だった。
「よー。帰ったぞ。ロゼッタ。お披露目、明日だろ?私らも行くからな。ぽよぽよしてる方が、ベンジャミンだ。白群の魔法使いだな。ひげ眼鏡がクリス、灰茶の魔法使いだ。もう一人は明日の朝、ここに着くと言っていた。多分、ちゃんと来るだろう。だんまりのゼンだな。暗緑の魔法使いだ」
二人は苦笑いして師匠を見る。私は突然で驚いたが、師匠の事で驚いていたら心臓がいくつ有っても足りない。
急いで師匠の方を向き、魔法使いの二人に礼をした。
「ぽよぽよとは相変わらずの挨拶だなあ。若い魔女さん、はじめまして。ベンジャミン・ドルトン、白群の魔法使いだよ。宜しくどうぞ」
白群の魔法使い、ベンジャミンさんは杖を出され魔力を飛ばすと礼をされた。
「こんな師匠で大変だな。クリス・エドガーだよ。灰茶の魔法使いだ。若い魔女さん、宜しく頼むよ」
同じように灰茶の魔法使いのクリスさんが杖を出され魔力を飛ばされた。
私も杖を出すと魔力を飛ばした。
「白群の魔法使い様、灰茶の魔法使い様、初めまして。魔女、ロゼッタ・ジェーンです。まだ魔女名は決めている最中です。お二人に会えて光栄です。今後とも宜しくお願いします」
「なんだロゼッタ。まだ決めてないのか。のろまだな。ヘンリーが言ってきた奴以外でもいいんだぞ?私はそこらの物で決めたな」
「師匠、国王陛下から出された案を一緒に見て貰ってもいいですか?」
師匠は私の腰のあたりをポンポンと叩くと、皆に手招きしながらてくてくとキッチンを通り抜けて行った。
「師匠、おかえりなさい。お腹は減っていませんか?」
私は師匠に急いで付いて行きながら話し掛けた。
「ロゼッタ、元気そうだな、魔力がまた上がったな。あれ、なんか変わったか?まあいいか。奥の工房に行こう。なんか食うか。そこならゆっくり出来る。クリスもベンも今日は薬局に泊まるだろう?」
二人も奥に付いてきながら苦笑いして頷かれた。
「初めからそのつもりで連れてきてるくせによく言うよ。さあ、楽しいパーティーをしようか。ロゼッタちゃんのお祝いだ。僕のことはベンって呼んでね」
ベンジャミンさんが師匠の後に着いて行きながら私にむかってウインクをした。なかなか、お茶目な人の様だ。
「ふう。ロゼッタさん、世話になるよ。私の事はクリスと呼んでくれ。美味しい紅茶はあるかな?」
皆が工房に入り、師匠はどかりとソファーに座ると、皆もそれぞれ好きに座った。
「ロゼッタ。何か出してくれ」
「はい、師匠」
私は保存箱とマジックバッグから、食べ物と飲み物を出した。玉ねぎ屋に手紙を書き、フォルちゃんにお願いして肉とスープとパン、お酒もあれば持って来て貰う事にした。食いしん坊の師匠には沢山用意しなければ。それにベンさんも沢山食べそうだ。
「肉とスープとパン、お酒も今頼みましたからすぐ届きますよ。まずはお茶をどうぞ。師匠も元気そうですね。二階の一室に今、私が住んでますがもう一部屋も綺麗にしていますから泊まれますよ。休憩室でも寝れます」
私がお茶を入れ、お菓子を進めるとベンさんはすぐに手を付けられた。
「ああ、僕、ソファーか休憩室にしようかなあ、お菓子も美味しいね。ホグマイヤー様はずっと元気だよ。煩いくらい。ホグマイヤー様は可愛い弟子がいて良いね。ランちゃんも可愛いけど、今日はもう帰ったんだね」
「ヒヒヒ。私の弟子だからな。ランは明日、会えるだろう。お前の弟子はまだチビだったな。ぽちゃぽちゃチビで可愛いじゃないか。ほっぺたが引っ張りがいがあったな。ヒヒヒ。寝る場所は好きにしたらいい、希望があればロゼッタに言ってくれ」
私が頷くとクリスさんは優雅にお茶を飲まれ、私の方をみて、美味しいよ、と言われた。
「良いお茶だね、香りがいい。私は二階にしよう。迷惑をかけるね」
「いえ、用意をしておきます。師匠もちゃんと寝る時は着替えて寝て下さいね」
師匠はポシェットをごそごそと漁ると、お酒とグラスを出し自分で注いだ。
「ああ、気がむいたらな。さ、飲むか。ロゼッタ、グラスを皆の分出せ。ゼンはちゃんと明日来るかなア、クリスもゼンとは会ってるだろう?なんか言ってたか?」
アルちゃんにお願いして皆の前にグラスを出すと、ベンさんがお酒を皆のグラスに注いでくれた。黙ってグラスを上に一度上げるとその後一口飲み、グラスを置いた。
「ゼンとはたまに会ってるがね。ホグマイヤー様は私の所に来る前にゼンを捕まえたんだろう?ゼンからホグマイヤー様に捕まったって連絡が来たよ。次は私かと思っていたら、来ないからホッとしていたらベンと一緒に現れるからね。参ったよ」
「一番最初に捕まえたのはベンだ。第六の船に乗って遊んでいたら、港の屋台で飯食ってるベンをたまたま見つけてな。丁度いいから、第六の熊に確保しろ!って言ったらベンに飛び掛かっていって面白かったなア。熊も中々だったが、ベンには勝てんなア。いい運動になったろ?お前は少し痩せろ」
ベンさんはお菓子を口に入れたまましゃべりだした。
「もう、酷かったよね。せっかく美味しい魚料理食べてたのに、隊員がいきなり飛び掛かって来るんだもん。弟子は怖がるし、料理は食べれないし、本気でやっつけようかと思って杖を出したら、ゲラゲラ笑ってるホグマイヤー様が見えるし参ったよ。隊員達、海に投げ込むだけで許してあげたんだから、僕、凄いと思うな。僕のお腹には優しさが詰まってるよね」
「ヒヒヒ。なんだそれ。ベン捕まえてゼンもやっと捕まえて、ゼンも一緒にクリスの所に連れていこうとしたら、あいつ、動物の世話がどうのこうの言いやがって、後で行くなんてぬかすだろう。しょうがないからベンだけで勘弁してやったんだ。ベンの弟子も連れてこようとしたんだがなア。薬を作ってる最中で忙しいとか、留守番がどうのこうの言って逃げられた。今度遊んでやろう。あのぽちゃチビはいくつだ」
ベンさんはお菓子を食べながら頭を掻いている。
「ほどほどにしてあげてよ。まだ十歳だよ。小さいけど中々優秀だよ。あと十五年もしたら魔法使いになれるかな。うちの弟子は真面目だから、ホグマイヤー様に相手にされたら泣いちゃうよ」
クリスさんがグラスを置き、私の方を向くとニコリと微笑んだ。
「ホグマイヤー様は可愛い弟子が二人もいて羨ましい。さて、国王はどんな魔女名を用意したんだい?見せて貰えるかな?」
私は頷き、国王陛下からの手紙を皆の前に出した。