飾り石とモラクスさん
いつもより少し短めです。
私は工房に入り、アクセサリーに魔力を込める為にモラクスさんを呼び出した。最近は毎日モラクスさんを呼び出している。
本をアルちゃんから貰い、魔法陣を浮かせるとモラクスさんは現れた。
「どうも、モラクスさん、コレ、新しい本です。「血塗られた剣」と言うミステリーです。ご近所のお姉さんがすすめてくれました。謎が謎を呼んで凄いミステリーだそうですよ。結局なぞなぞって事なんですかね?題名は怖そうですけど、モラクスさんなら怖い話も平気かと。あと、ナッツたっぷり携帯食料もどうぞ」
モラクスさんは魔法陣から出てくると、ソファーに座り本と携帯食料を受け取った。
「コレに魔力を込めたいのですが、上手に込めるにはどうしたらいいでしょうか?」
「ふん、まあ、いいだろう。今度は酒も持って来てくれ。別の食べ物も良いな。本は最近の地図や歴史の本でもいいぞ。今日は新聞はないのか?」
「昨日の新聞ならありますよ、どうぞ」
「ふむ。その石に魔力を込めたいのか?失敗すると石が弾けるぞ。そうだな・・・泥団子を作るみたいだな、とジュリエッタは言って捏ねていたな。少しずつゆっくり魔力を馴染ませていけ」
「はい、やってみます」
モラクスさんに新聞を渡すと、魔法陣を出した。ゆっくりと魔力を練っていき、少しずつアクセサリーに込めていく。
失敗すると弾けると聞き、最初の一つは凄く緊張したが時間をかけ、ゆっくりと魔力を込めていくと上手くいった。魔力を込めたアクセサリーは石の色が少し濃くなり、石の中で魔力が揺らめいているのが見えた。
「どうでしょうか?」
モラクスさんにアクセサリーを渡し、きちんと出来ているか確認して貰った。アクセサリーをつまみ、じっと見るとモラクスさんは頷いた。
「いいだろう。綺麗に出来ている」
「ふう、良かった。お茶を淹れますけど、飲みますか?」
「ああ、濃いのが良いな」
モラクスさんは頷いて、新聞を広げると読み始めソファーの上でゴロンと横になった。
「モラクスさん、私、転移魔法はいつになったら出来るんですかね。他の事は出来るのに何で出来ないんでしょうか?コツは何でしょうか?」
「お前がドン臭いんだろう。それか、頭が悪いんだろうな」
モラクスさんは頬杖をつきながら携帯食料を食べ、寝転がり新聞を読みだした。私もソファーに座り、モラクスさんを見ながらお茶を飲んだ。
「お茶、ここに置きますね。なんだかモラクスさん、最初のイメージと大分変わりましたよね。残念悪魔って感じですよ」
「なんだと。お前が出来ないのだからしょうが無いだろう。ふん、頭を貸せ。サービスをしてやろう。誰が残念悪魔だ」
モラクスさんは、失礼な奴だ、とぶつぶつ言いながら新聞を折り畳むと、寝転がったまま携帯食料をパクリと食べた。私は向かいのソファーから立ち上がり、モラクスさんの側にしゃがみ込んだ。
「これでいいですか??痛いのは止めて下さいね」
「贅沢な奴だ。ほら、頭をこちらにもっと寄せろ」
頭をモラクスさんに向けるとモラクスさんは寝転がったまま、私の頭に片手を置いた。
「お前は無駄が多いんだ。余計な事ばかり考える。下手な考えは不要だ。世界はお前が思うよりも単純だ。この円があるだろ。お前はこれが丸と思っている。でもこれは三角で出来ている。分かるか?」
「分かりません。モラクスさんの教え方が悪いと思います。コツを教えて下さい」
私の頭から魔力が身体の中を循環していく。
「はあ。我のせいではない。コツと言われてもな、ジュリエッタは出来ていたしな。得意な事を伸ばしていたら出来るようになるんじゃないか?ジュリエッタは好きな事だけやっていたような気がするな」
「流石師匠。得意な事ですか、錬金ですかね?闇魔法と火魔法は得意だと思います。今まで通りで良いってことですかね?」
モラクスさんの魔力が指の先迄巡っていく。
「さあな。お前はアホだな」
「失礼ですね。モラクスさんが残念悪魔なんですよ」
「ふん。お前はアホ魔女だな。おい、菓子はもう無いのか?」
「失礼な残念悪魔ですね。モラクスさん、本も、お菓子もお金がかかるんですよ。タダではないのです。知ってます?」
私の身体を魔力が循環し終わるとモラクスさんは手を離した。
「誰が残念悪魔だ。アホロゼッタ。ほら、これで大分、魔力を使うのが楽になるはずだ。無駄ばかりしていたからな」
「有難うございます。アホは余計ですよ、バターたっぷり携帯食料をあげますけど、モラクスさんお菓子ばかり食べてますけどいいんですかね?野菜のスープを今度持ってきましょう。サービスのお礼にワインをどうぞ、飲み過ぎたら駄目ですよ」
私がマジックバッグからワインを出すとモラクスさんは喜んだ。
「おお、いいな。ロゼッタ、今度は我にぴったりなグラスを用意しておけ。美味い酒はグラスが大事だ」
「分かりました。お金がかかる悪魔ですね」
モラクスさんはワインを手で消すと、じゃあな、と言い、本の中に帰って行った。低くて渋い良い声だけど、だんだん残念な感じになっている。私は使い魔の皆を見た。
「ねー。皆は良い子なのにねー、あ、試しに魔力あげましょう。はい、どうぞ」
私が杖を振り、皆に魔力を流すと凄い量の魔力が皆に一気に流れ、私は驚き魔力を止めた。
「モラクスさん・・・・。説明のない所が師匠と同じ・・・。これ、調整が難しいんじゃない?せっかくそよ風魔法上手くなったのに、暴風に逆戻りよ」
魔力を貰った使い魔達は喜んでいたけど私は溜息を一つついた。