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師匠の優しさと教え

しばらく週二度程の投稿になります。

「陛下、宜しいですか?」


王妃様がお尋ねになり、陛下が私をご覧になった。私が頷くと陛下は王妃様を見て頷かれた。


「失礼します。ジェーン様、この度はおめでとうございます。ジェーン様とお話の機会を頂ければと思いましたが今後も難しいですか?」


上品にお話しになる王妃様に私はお茶を一口飲んだ。


「薬の注文ですか?別の話が必要ですか?」


王妃様は頷かれる。


「ええ。この国の貴族や民は、久しく魔女様にお会い出来ていませんもの。お話の機会を設けて頂ければ光栄ですわ」


「止めなさい。ジェーン様、お気になさらず」


「陛下・・・」


国王陛下は首を振られ、王妃も黙られた。


「成程。皆との話の機会は設けてますよ。薬局でお隣さんとも話していますし、コロン領ではギルドに行きました。その時の様子を陛下はご存じなのでは?」


陛下は黙って頷かれる。


「では、注文ではないのなら必要ないですね。必要ならまた私が伺いますし、陛下が魔鳩を飛ばして下さい。ああ、用事がある時は早めに連絡して頂けると助かります。いつも急な呼び出しだと困りますので」


「陛下・・・・」


王妃がもう一度、陛下の方を見られた。私は杖を出し、トンと足を鳴らす。部屋全体を覆う大きな魔法陣を出して私の魔力で髪を揺らし、魔力を飛ばした。


皆の顔が下から照らされる魔法陣のせいで、青白く見える。


「くどい。私と話すのは何の為なの?話をしたいのなら薬局にどうぞ?接客の邪魔をするなら店から追い出すけど。王族だろうと、王妃だろうと関係ないわ。名無しの薬局の中では平民だろうと王族だろうと、皆同じお客様よ」


私は杖を触り、魔力をあちらこちらに飛ばす。


「不敬と言うならお披露目なんてしなくていいわよ。私はしなくて良いのよ?貴女はその意味を分かっているのでしょう?師匠がね、お茶くらい勝手に飲んでろ、余計な事を言う奴は潰せ、ですって。私は一度言ったわよね?お茶は飲まないって」


私が話すと部屋の温度が下がった。王妃は真っ青になって陛下を見られる。


「ジェーン様、申し訳ありません。お披露目はどうぞ宜しくお願い致します。もし、不愉快と言われるならアナスタシアは席を外させますが」


私は魔法陣を出したまま、アルちゃんとフォルちゃんを呼ぶ。アルちゃんが私の影からゆっくりと出てくる。フォルちゃんはドアの前に立ち、身体を大きくした。


「いいえ、席は外さなくて宜しいですよ。だって話がしたいんでしょう?せっかくの機会ですよ。それは今でしょう?どうぞ?二度目は無いかもしれないんですから」


「申し訳ありません、ジェーン様、どうぞ魔力をお収め下さい」


陛下が私の方を向き、目線を王妃様に向けられる。私はアルちゃんに探知をさせた。ドアの外、部屋の外、大勢の人数が引っかかる。


「魔力を?何故?騎士以外の人間がドアの外にも沢山いるのに?隣の部屋にも誰か待ってる人がいるようですよ?フォルちゃん?」


フォルちゃんがウォンと鳴き、部屋を防御膜で覆う。


「さあ、これで少しはマシかしら?もう少し静かに話したかったのに、残念。この後ホールとバルコニーに行けるのかしら?もう、お披露目はしなくて良いのね?」


王太子殿下が頭を下げられる。


「ジェーン様、申し訳ありません。母上」


顔を青くした王妃様が頭を下げられた。


「ジェーン様、申し訳ありません」


私は首を振る。


「私は話をする事が嫌ではないの。必要なら話もするし、急に呼ばれても足を運ぶ。なんで私がここに来てるか分からないの?貴女は私を呼びつけてると思っているの?私が来た方が楽だから私は来てるのよ?薬局に貴方達が来られたら迷惑だもの。何故私が王妃様と話をしないと言ったか、第一王子様、第一王女様、お分かりになられますか?」


私は杖を撫でながら二人に目線を向けると、レオナルド王子が頷く。


「ジェーン様、母上が申し訳ありません。ホグマイヤー様より教えて頂きました。ズルい人間になるな。他人の力を頼るな。魔女様、魔法使い様は自由だと」


私は第一王女を見る。


「母上が申し訳ありません。ホグマイヤー様より私が教会に行く際に教えて頂きましたわ。クソ女になるなと。自由を求めるなら対価を払えと。貴女様の望むがままに」


第一王女も黙って頭を下げた。


私は杖を降ろし魔法陣を消した。杖はテーブルの上に出し、手を添えたまま王妃様を見る。


子供に頭を下げさせるなんてね。


「私は師匠の弟子です。師匠の教えを私は守ります。師匠は優しいですからね。貴女にも話をされてるはずです。王妃様、私は魔女。貴女が魔女との会話をお望みなら私はそれ相応を望みます。私は貴女を嫌いで話さない訳ではないのですよ。それは貴女もお判りでしょう?お披露目の意味も。それ以上は必要はありません」


皆が私に頭を下げる。


「貴女の望むままに」


私は頷き、話を再開させる為お茶の準備を始めた。メイドさん達は魔力に当てられて動けないようだもの。後ろを振り向き、ハワード隊長とジロウ隊長を見る。


「ハヤシ大隊長と、タウンゼンド宰相が来られました。お二人も席に着かれてお茶にしましょう。フォルちゃん」


「「は」」


フォルちゃんは防御膜を解いた。ハワード隊長がドアへ向かうと、丁度ドアがノックされ、二人の入室が知らされた。私が頷くとハワード隊長はドアを開き二人を通された。


ジロウ隊長は苦笑いされて、椅子を二つ私の横に持ってきた。


「さ、ジェーン様、お茶に致しましょうか。手伝いますよ」


ジロウ隊長が私に話掛け、皆に配る手伝いをしてくれる。タウンゼンド宰相と、ハヤシ大隊長は部屋の空気が悪いと思われたが、チラリと陛下を見られた後は何も言われなかった。


「お久しぶりです、ジェーン様。お元気ですか?先の捕縛の際は薬を多く使わせて頂きました」


「お久しぶりです。ハヤシ大隊長、師匠が薬を売られたんですね?ランさんが喜んでいましたよ。お元気そうでなによりです」


礼をされたハヤシ大隊長に頷き席に着き、私は挨拶を返した。


「ジェーン様、変わりはないですかな。ブルワーもまもなく来ますよ」


タウンゼンド宰相も礼をし、私は頷いた。席に着いているホーキンス隊長にも話し掛ける。


「ええ、おかげさまで。手紙も問題ないようです。助かります。ブルワー法務大臣にお会いしたかったので嬉しいですね。ホーキンス隊長もお久しぶりです。後でお時間頂けますか?」


ホーキンス隊長は頷かれ、私はお茶を入れお菓子を出すと皆に配った。


「さ、陛下。細かい話は一度に済ませましょう。時間がもったいないですからね。皆さんお忙しいのでしょう?私も帰って来てから休み無しですよ」


私が言うと陛下が頷きお茶を飲む。


「当日のスケジュール、参加する者の一覧はこれです。お読みになっておいて下さい。気になる事はいつでも魔鳩を飛ばして下さい。私でも、タウンゼンドでも、ジョージでも構いません。当日は朝九時迄に王宮入口に来て頂ければ問題ありません。ホールでのお披露目は十時半から行われます。一つのお披露目は三十分程ですか。王宮のバルコニーでのお披露目は正午になっております。それが終われば後の儀式はありません。すぐにお帰りいただいて宜しいですよ」


私は頷くと、ブルワー法務大臣がいらっしゃった。


「遅くなって申し訳ありません。ジェーン様、息災ですか?この度はおめでとうございます。ポーションも有難うございました」


深々と礼をされ、席に着かれた。


「ええ。元気ですよ。ブルワー法務大臣は怪我はされませんでしたか?後で少しお時間頂けます?ポーションバッグの話をしたいのですけれど」


「ああ、あのバッグは良いですな。ええ、是非。時間は取ってありますので構いませんよ」


私は頷き礼を返した。


「ああ、そうだ、ロイス団長とエマーソン団長がいらっしゃるならここでお渡ししていいですかね?注文のハイポーション一本ずつです。サインをお願いしますね」


二人は頷き、ハイポーションを受け取ると、サインをした。


「ジェーン様、ホールを見られますか?あとバルコニーも、皆で移動致しますか?それとも一部の者だけで?」


陛下が私に聞かれる。私はお茶を一口飲んだ。


「皆で移動しましょう。当日は晴れるといいですね」


顔が青いままの王妃もいるが、部屋の雰囲気は元に戻りつつある。


部屋を出る前に国王陛下がロイス騎士団長とエマーソン騎士団長に頷かれ、二人が部屋を先に出ると、探知に引っかかっていた部屋の外の人数は少なくなった。



「国王陛下、有難うございます」


私が陛下に向き、礼を言うと、陛下が頷かれた。


「いや、当然の事です。好奇心ばかり強い者が多いようですな。動くと鈴が鳴るのを知らんようです。その者達にも注意をしておきます、では行きましょう」


その後、以前のお披露目の時の話や、並ばれる順番。お披露目の流れの説明を受け、私達はホールへ移動した。





誤字報告有難うございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 多分、ですが。 王妃様はごく一般的な、普通の貴族女性であり『王妃様』なんでしょうね。 王家では魔女との付き合いがあるけど、魔女が王家に服従している訳ではない、ある意味ビ…
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