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名無しの薬局の日常 

私が店に帰ると、ランさんからの書置きがあった。


「ロゼッタ  注文書、急ぎのものはないよ。ロゼッタから連絡貰った後、玉ねぎ屋の予約をしたからね。お披露目の日の夜でいいんでしょ?夕方から貸し切りよ。お酒も食べ物も最高の注文しましょ。ロゼッタも誘いたい人は教えて。  ラン」


私はランさんの書置きに笑った。語尾が伸びていないランさんの手紙は不思議な感じだな、と思い、大事に二階に持って行った。


二階の部屋に入りバッグを降ろすと師匠に魔蝶を飛ばした。


「師匠、王宮で色々お願いしたので、面倒な事はもうないと思います。魔女のお披露目の日時が正式に決まりました。土月二十五日の午前から正午に行います。他の魔法使い様達にも王室から魔鳩を飛ばされたそうですが、皆様の返事はまだ無いそうです。国王陛下には私一人で大丈夫な事を伝えました。お披露目の後に玉ねぎ屋で夕方からパーティーをしますよ。ランさんと、仲の良い人やお世話になっているご近所さんでのパーティーです。師匠も良かったら、玉ねぎ屋パーティーに来ませんか?お酒も沢山ありますよ。明日ジルちゃんが店に来たら甘い物を送りますね」



ランさんが玉ねぎ屋を借り切って、パーティーをしようと言った時は驚いたが、ロゼッタ、としてお祝いをして貰えることは嬉しい。私もパーティーに誰か誘って良いと言われているので、トコトコハウスのジェシカさんとポッポ屋のチェルシーさん、隣のイアンさんとジョゼッペさんをお誘いする事にした。


軍団の人達は、警護などがあって難しいかな。明日、ランさんに相談してみよう。


私は一階に降り、錬金釜の横に置いてある急ぎではないと言われた注文書の束を見て苦笑いをすると、キッチンで簡単なご飯を作った。


「明日はモラクスさんに転移魔法を教えて貰おう。乗合馬車の視線が辛いのよね」


私はアルちゃん達と話しながらご飯を食べ、錬金釜の横の注文書を片付け、新しいマジックバッグを作るとその日はぐっすりと眠った。


次の日の朝、ランさんが店に来てすぐに玉ねぎ屋でのパーティーの話をした。


「おはようございます、ランさん。パーティー楽しみです。ジョゼッペさん達だけでなく、パーティーに軍団の人達を誘っても良いと思います?お披露目の後なら皆忙しいですかね?」


「おはよー、ロゼッタ。うーん、いいんじゃない?とりあえず招待状、皆に出してみたらー?ダメなら断りが来るでしょー?ロゼッタの学園の時の友人も呼んだらー?」


「そうですね、軍団の人にも出してみます。学園時代の友人は遠方にいて参加は難しいですね。お祝いの手紙は貰いましたが」


ランさんは、商品を棚に入れながら、あらー、残念ねー、と言い、材料の在庫をチェックしていた。


「マツさんが知り合いの音楽団を呼んでくれるらしいよー。ダンスも出来るわよー。せっかくのお祝いパーティだから、皆、お洒落をして来てって書いてねー」


「了解です、あ!ランさん、パーティーの予算はいくらですか?私、お祝い金がもうすぐ振り込まれます。ちょっと、その前の話が強烈で、国王陛下に金額聞くの忘れましたけど」


「ちゃんと、お金の話は聞かなきゃダメよー?でも心配はいらないわよー!!」


ランさんはムフッと笑うとカウンターにゴテゴテとルビーがついた趣味の悪い壺を出した。


「なんですか。凄いですけど、趣味悪いですね。呪いの壺ですか?ランさん、うちで売り出すんですか?魔力は無いですね?」


私は、ポーションバッグの材料を手に持ちながら趣味の悪い壺を覗き込んだ。


「ふっふっふー!!驚くわよー、ロゼッタ。コレ、隣のイアンさんに見て貰ったら、五十万で買いたい人がいるんだってー!上手く話がまとまれば六十万になるかもしれないのー!だから、パーティー代は大丈夫よー、師匠の趣味の悪いお土産をお金に変えるわよー!」


「凄い!これに五十万出す人がいるんですね!!でも、ランさんのお土産なのにいいんですか?私のパーティーだから私が出しますよ?いや五十万は無理ですけど。そもそも食堂パーティーに五十万も要りませんよね?大勢呼びませんし。それに招待する時に参加費書きますよね?私、友達のパーティーに行った時は参加費も招待状に書いてありましたよ?」


ランさんは、けしからん胸の下で腕を組むと、ロゼッター、ダメよー、と言った。


「魔女はケチ臭くしちゃダメよー。魔女は華麗に豪華に格好良くよー!魔女の招待状に参加費なんて書いちゃダメー。まあ、勝手にお金を持ってくる分は遠慮なく貰うけどー。こういう事は私に任せて。一生に一度のパーティーよ。玉ねぎ屋で家庭的で楽しい豪華なパーティーをしましょー!ロゼッタは王宮のお披露目と、招待状書き、がんばってねー」


ランさんは私にそう言うと大事そうに花瓶を持って、早速売って来る、と言いお隣に行った。


私はランさんに言われた通り、招待状をせっせと書き皆に飛ばした。ランさんが店に戻ると、ポーションバッグを本格的に販売に向けて作成する事を伝えた。


「ポーションバッグ、良いと思うよー。あと、第六の隊長さんから、携帯食料楽しみにしてるってー。コロン領のお菓子、師匠に送ったの?隊長さん、師匠からお菓子貰って、アンズが入った物を作って欲しいって。私的にはオレンジとかほうれん草とか入れた物を食べて欲しいなー。ロゼッタ、緑の野菜と柑橘系。それにアンズを混ぜた物を美味しく作ってみてー」


「了解です。三種類位作って送りますか。色々入れるなら、値段設定は少し割高でお願いします。第六の隊長さんにもポーションバッグの刺繍を聞いてみます。おすすめは波と、錨のマークなんですけど。ポーションバッグの販売も、タウンゼンド宰相に手伝いを頼んでいるので大丈夫かと。騎士団、軍団で売れると思いますよ。ランさんも、王宮に行く時は営業をお願いします。王宮の配達は一週間に一度で良くなりましたからね」


「王宮に行くのが減るのは楽になるわねー。営業得意よ、任せてー。販売契約は私がまとめてくるねー。騎士団の営業は私がするー?ロゼッタ、一回り小さいバッグ作って、花の刺繍を明るい布で刺してみて。侍女さん達にも勧めてみようかなー」



私はノートにメモを取って行く。


「了解です。花ですね。ランさん、がっぽがっぽ行きましょう。ランさんが契約をお願いします。私は商品作ってる方が楽しいですし」


ランさんを見ると、手をヒラヒラさせて、了解ーと言いながら、材料の注文書を作っていた。



「それにしても、師匠、色んな所に出没しているみたいですよ。第三の隊長からの注文書に、ホグマイヤー様が現れた!って書かれてます。どんな現れ方したんでしょうね。魔物に遭遇したような感じですかね?」


ランさんは注文書と材料をカウンターの上に置きながら頷く。


「第三の人達、魔物の方が安心出来たんじゃない?だって、絶対師匠倒せないし。遭遇したら終わりよねー。それこそ、音楽団がバックにいるような登場したのかな?ジャジャジャジャーン!みたいな?ババババーン!かな?師匠、港まわって国中ウロウロしてるのかなー。そういえば、師匠からロゼッタは何か貰った?」


「注文書の字は、ガガガガーン!という感じでしたよ。音楽団のバックなら太鼓が鳴ってそうですね。私は肩が凝りそうな趣味の悪いサファイアのネックレスでしたが、もうばらして別の物に作りかえていますよ。イアンさんにお願いしました。魔女のお披露目で必要なので師匠も納得してくれると思います。師匠の趣味って独特ですね」


ランさんが置いた注文書と材料を錬金釜の横に運びながら私は答える。


「おー、いいじゃなーい。師匠のお土産役に立つねー!また何か送ってくれないかな?ロゼッタは?欲しい物あるー?師匠に頼んだら送ってくれるかもよー。宝石にするー?」


「うーん。私の契約してる方がですね、本が好きなんですよ。だから本ですかね・・・。最近私も出費が多いので珍しいアイテムは嬉しいですね。宝石も使えるんですよねえ・・・貰えるなら魔力がなじみやすい物がいいかな」


ランさんは頷いて帳簿を出して請求書の計算をしていた。


「オッケー。今度師匠にお願いしてみよー。ロゼッタのお土産希望も言っといてあげるー。本、レアアイテム、宝石希望っと。師匠もパーティーに来ればいいよねー。お酒を沢山仕入れましょー」


「はい。師匠には魔蝶を飛ばして知らせてますし、甘い物とお酒を沢山用意すれば、きっと匂いにつられて帰ってきますよ。あ、ランさん、ポーションバッグの刺繍はコロン領の薬師さんから紹介された方がいるんですよ。手紙を出して、返事があれば行ってみます」


ランさんは帳簿に数字を書き込みながら頷く。


「うん、いいよー。ではロゼッタ、頑張って携帯食料作ってねー。今日も一日がんばりましょー」


私は、おー!と返事をし、ランさんもこの店も守りたいなと思った。








いつも誤字報告有難うございます。


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