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俺が好きなのは ダレン視点

 謹慎から三日たった。




 暇だな。




 部屋でぼーっとしてると、リーゼン班長から呼び出しがあった。



「ウッドマン。処分が決まった。隊長室へ来い」


「はっ」



 早かったな。俺は、ぼーっとそんな風に考えた。


 一週間くらい謹慎して処分が言い渡されると思った。


 ま、減給かな。それか、もう一週間の謹慎かな。


 そんな事を考えて隊長室に行くと、ウー副隊長、ホーキンス隊長、ハヤシ大隊長それに王宮事務官もいた。




 え。




 なんで。




 俺はここにきて事が大きい事に気付いた。


 なんでだよ。ちょっとロゼッタに怪我させただけじゃないか。しかもそれは治療師が治してんだろ?


 なんで大隊長や事務官までいるんだ。


 俺はリーゼン班長から、「ウッドマン」と言われ、はっとして敬礼をした。


 俺が敬礼すると、ハヤシ大隊長が紙を広げ、読みだした。


「ダレン・ウッドマン、お前の処罰が決まった。第二王国軍団第五班、ダレン・ウッドマン、花月25日、王都において起こした暴行事件において以下のように処分を下す。


 一つ、降格処分とし、第二王国軍団見習いとする。


 一つ、ロゼッタ・ジェーン嬢に慰謝料として100,000ルーンの支払いを命じる。慰謝料は第二王国軍団が立替えロゼッタ嬢に支払い、お前の給料から月々5,000ルーンずつ第二王国軍団に返済とする。なお、この慰謝料は暴行における怪我の治療費となっている。


 一つ、ロゼッタ・ジェーン嬢に今後半径500メートル以内の接近を禁止とする。


 一つ、第二王国軍団からホングリー辺境伯詰め軍団に異動とする。


 以上だ」



 え。



「この処罰は国王陛下直々の処罰だ」



 は。



「また、第一事務次官の方が来られて書類をこの場で作り、出来上がり次第早急に陛下にお届けすることになっている。分かったのならサインをするように」



 え。



 俺は何もわからないままサインをした。しないと言う選択肢はなかった。


 周りからの威圧がすごかった。


 なんでだよ。ロゼッタに謝って、許してもらって、それで終わりでいいんじゃねえのかよ。


 ただの別れ話だろ。ちょっと遊んだだけじゃねえか。


 慰謝料ってなんだよ。なんで俺が金払わなきゃなんねえの?


 100,000なんてありえないだろ。俺の貯金吹っ飛ぶぞ。


 婚約前でなんでだよ。おかしいだろ。


 なんで陛下まで出てくんだよ。


 俺は回らない頭で考えてると、事務官が書類を見直し、


「問題ありません」と答えた。



「よし。以上だ。すぐに準備をし、辺境伯領へとむかえ」



「なんで・・・」とかすれるような声が出た。



 俺がそう言うと、ハヤシ大隊長が小さく息を吐き出した。



「お前はそれが分からないから処分されたのだ。王国軍団隊員になくてはならないものがお前には欠けている。ウー副隊長。王国軍団隊員の七つの心得を言ってみろ」


「は。王国軍団隊員は七つの心得を刻むべし。


 一つ、勇ましくあれ、


 一つ、弱者の守護者であれ、


 一つ、常に高潔であれ、


 一つ、誠実であれ、


 一つ、努力を怠る事なかれ、


 一つ、礼節正しくあれ、


 一つ、国へ忠誠を捧げよ。


 以上であります」



 ハヤシ大隊長がリーゼン班長に聞く。



「リーゼン班長、三つの柱を言ってみろ」


「は。我らの心を支える柱、国への忠誠、墓に刻む名誉、貴婦人への愛であります」



 ハヤシ大隊長がこちらを向く。



「分かったか。見習い時に最初に習う事だ。そして王国軍団隊員である以上、生涯刻み続ける言葉だ。なぜ処罰を受けるか分からないお前は、軍団隊員ではない。いいか。民の信頼を裏切ったのだ。その上で、ホングリー辺境伯殿が鍛え直してくれると温情をおかけ下さった。有難く思え。それにお前は自分だけ処分されたと思ってるが、上は陛下から下はリーゼン班長まで皆処分を受ける」



 そう言われた俺は敬礼もそこそこによろよろと部屋を出た。


 リーゼン班長は部屋までついて来て荷物を詰めるのを手伝ってくれた。


 見張りの意味もあるかもしれないが。


 そして、寮を出ると詰所でホングリー辺境騎士の一人に挨拶をし、俺はその騎士と一緒に王宮を出た。



 え、マジか。



 俺は理解できないまま、馬に乗り、バレットと名乗った騎士の後ろを馬でついて行った。


 王都の街でロゼッタの店の近くを通ったがロゼッタを見る事はなかった。



 本当にこのまま辺境に行くのか?



 もう、ロゼッタと会えないのか?



 俺は本当にロゼッタと別れたのか?



 謝ったら許してくれるんじゃないのか?



 俺が好きなのはロゼッタなのに。



 俺は混乱の中通りを進んだ。



 その時、買い物中なのか偶然リリーを見かけたが慌てて目をそらされた。


 なんだ。なんなんだよ。あいつのせいか。


 リリーが声かけてきたんじゃないか。


 みんなやってることだろう?


 なんで俺だけこんな目に遭うんだよ。


 なんで目をそらされるんだ?



「おい、王都を出ると飛ばすぞ。辺境までは馬でも2週間はかかるからな。今日は行けるところまで行って野宿だ」と言われた。


 俺は「はい」と答えたが自分の置かれてる状況がまだ理解できなかった。



 ただ、もう、王都には戻る事はないんだろうと思った。





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― 新着の感想 ―
[良い点] テンポもよく面白いとは思います。 [気になる点] 毎回末尾にこれ書かれると萎える。読む気失せた。 この作品を見つけて読んでくれてありがとうございます。m(__)m☆☆☆彡 よかった…
[一言] たるんでる団員への見せしめもあるんだろうね 周囲が真面目に諌めなかったようだし
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