コロン領から王都へ
第三章はここまでです。
東の森の浄化も終わり、丸薬作りも一区切りついた。
私は明日、王都に戻る。
ジロウ隊長達第四軍団も一部を残して王都や他の場所に移動する。
「ジェーン嬢、お元気で、魔蝶コイン持ってるんで、連絡下さい」
「はい。警護有難うございました。ジロウ隊長、これ御守りです」
私は手の平を出したジロウ隊長に黒い石が二つ着いた御守りを渡した。
「光栄です。見送り有難うございます。本当、気をつけて下さいよ。何かあればすぐに連絡下さい。第四は国中走るんで」
ジロウ隊長が私に礼をすると第四の隊員の人達皆が私に礼をした。私は頷き、ジロウ隊長を見てにこっと笑った。
「ジロウ隊長、皆さん、私の警護は終わりです。心配は不要ですよ。私は魔女。魔女の強さをご存じでしょう?」
杖を上に向けつま先を鳴らし、今までで一番の特大の魔法陣を出した。アルちゃんが辺りを少し暗くして光をキラキラと散らしてくれる。フォルちゃんは特大の防御膜で私達を覆ってくれた。
私が魔力を溢れさすと私の髪とローブがふわっと魔力で動いた。杖を振り、魔力を辺りに散らしながら隊員の皆を見た。
「守護者の皆さんの勇気に感謝を。皆さんの健康に祝福を。皆さんとの出会いの糸を未来に紡げます様に」
旅立ちの祝福を言うと、私は空にむかって魔力を飛ばした。ウェルちゃんが水を降らしていく。杖を大きく振って水に魔力を当てると膜の外側に虹が出来、虹の反射が綺麗に見えた。
「ジロウ隊長、皆さん、お気をつけて」
私が最後に魔法陣を飛ばし杖をしまうと、ジロウ隊長は頭をガシガシ掻いていた。
「あー、もう、本当。貴女にも祝福を、同じ空の下で祈ります!再び会える時まで!ジェーン嬢、第四は貴女の警護に付けて光栄でした。第四王国軍団、出立!!」
第四の隊員の人も私の方に向き、握りこぶしで胸を一度叩くと軽く礼をし、ジロウ隊長の方に皆むき、ジロウ隊長はスレイプに乗り、部隊の人も皆スレイプに乗っていった。皆が乗ったのをジロウ隊長は確認し頷くと、手を上げ一足先に王都へとむかわれた。
別れは一時。すぐ会える。
私はホーソンさんと一緒に館に戻った。
その日の夜、コロン子爵が開いてくれたお別れパーティはマークさん達や、ギルド長さん、薬師協会の人もやって来た。
ランさんは沢山食べ、沢山飲んでいたけど、体のどこに入っていくのか不思議だった。
翌朝、別れの時は館にマークさん達や、子供達、街の多くの人が来てくれた。飛竜を近くで見て怖がっている人もいたけど、皆が別れを惜しんでくれた。
コロン子爵が館の前に出て別れの挨拶をしてくれた。
「ラン様、ジェーン様、東の森の浄化、魔物湧きに尽力頂き有難うございます。王都に無事に着けるようお祈り致します。ラン様、ジェーン様に沢山の幸福を、新しい出会いに祝福を、コロン領よりお祈り申し上げます。再び貴女達に出会えますように」
コロン子爵は胸の前で手を合わせ、旅人を見送る挨拶をする。見送りの皆も同じ挨拶をする。
マークさんは杖をゆっくり振り、キラキラと魔力を振った。杖には私が上げた御守りを付けてくれている。
ランさんが頷き、挨拶を返す。
「コロン領にも沢山の幸せを。同じ空の下で祈ります、又再び会える時まで」
ランさんも胸の前で手を合わせ、残された人に向けた挨拶をする。私も同じように胸の前で手を合わせた後、ランさんを見ると頷かれたので、一歩前に出た。
杖を振り、つま先を鳴らし、魔法陣を出す。ジロウ隊長に見せたように特大の魔法陣を出して私は空にむかって魔法陣を飛ばし、当たりに魔力をキラキラと飛ばした。ウェルちゃんに頼んで空から水を少し振らせて貰い、皆に降り注いだ。
「うわー!」っと子供達が喜び、手を上げ、水を捕まえようとしていた。
コロン領では色々あった。ランさんと離れたり、使い魔達と一緒にいれたり、デートをしたり、邪魔されたり。でも、魔女として成長出来た場所だ。
ファン草の栽培場所の浄化も無事に出来たが、定期的に冒険者の方が見回りをしてくれるらしい。これで魔物が元通りの数になれば冒険者もまた増えて、コロン子爵も良い人そうだしコロン領も落ち着くと思う。
私達が飛竜の側に行くと、子供達が魔力粒子を捕まえようとしているのが見えた。
ロンとジーナは仲直りをしたようで、今はお互いの応援をしていると聞いた。ロンの両親からも、ロンが店の手伝いを良くしてくれるようになったと感謝されたが、私は何もしていない。
結局、変わるかどうかはその人次第だもの。
そしてロンを見守っていたのはロンの両親。私は責任が無いから好きに言えるのよ。
それでもどんなに言っても変わらない人は変わらないし、ふとしたきっかけで、すごく変わる人もいる。
私には師匠がいて、ランさんや使い魔やモラクスさんもいる。きっと、側にいる人で人はどんどん変わる。
環境だったり、目線を変える事で人間は変われるポイントが何度もやってくる。
私の場合は家を出て王都に行く時、王都の学園の時、師匠に見つけて貰った時、魔女になった時。
師匠が言った
自分の力を過信をするな、慢心もするな。でも、信じろと。
自分を作るのは自分自身。
私がチェリアさんに乗ろうとすると、マークさんが大きな声で「ジェーン様、魔鳩出します。立派な魔術士になります。またお会いして頂けるように頑張ります!」と言った。
私がホーソンさんに手伝って貰ってチェリアさんに乗り、「ええ、私も頑張ります。お返事書きますね」と言い終わる前に、飛竜は飛び立った。
お腹がひゅっとしたけど、フォルちゃんも、アルちゃんも楽しそうだった。ウェルちゃんはコロン領の人に水を撒いてついて来た。
あっと言う間にコロン領が小さくなった。
すぐに来ることは難しいかもしれないな。早く転移魔法覚えよう。そしたら色々な場所にも行けるし、皆に会える。私は杖に付けたマークさんからの御守りを見ながら思った。
私はコロン領を後にし山積みの注文書が待つ王都の店に戻った。
第三章、完結です。第四章までしばらくお待ち下さい。