ウー副隊長とミント飴
お昼ご飯を食べ、仕事を再開した所で第二軍団のウー副隊長が来られた。
ランさんに挨拶をし、奥にいた私に礼をした後警護の事をキムハン副隊長と話をしていた。
ウー副隊長は薬草の分別をしているキムハン副隊長を見て一瞬驚いていたが、その後は何事もなかったように薬草の横で二人で話をしている。
私はウー副隊長を街で見かけた事があるが、女性にも子供にも声を掛けられていて人気のある方だった。穏やかで、キムハン副隊長と似ている気がする。顔は似ていないし、体格も違う、年も大分若いだろうが雰囲気は同じだ。
こうしてウー副隊長と会うのは、ダレンの件で隊長と班長と一緒に謝罪に来てくれたぶりだ。
あの時は皆、たん瘤を作り、頬におそろいの痣があった。
皆で来られた時は私もまだ落ち着いて会話は出来ず、謝罪をされ頷く事しか出来なかった。
今は綺麗に痣も瘤も消えている。
キムハン副隊長と話が終わった様子を見て、私はマジックバッグからミント飴の袋を沢山持ち、ウー副隊長の前に立った。
「ウー副隊長、お久しぶりです。この度はご迷惑をお掛けしますが宜しくお願いします。コレ、すごくすっきりする飴なんで好き嫌い分かれるかもしれませんが、良かったらどうぞ。眠気覚ましにいいですよ」
ウー副隊長は私が話しかけると一瞬驚いた顔をしたが、静かに礼をして受け取ってくれた。
「お久しぶりですジェーン嬢、魔女になられたのですね。おめでとうございます。飴も有難うございます、皆で食べさせて頂きます。ホグマイヤー様が戻り警護が解けるまで私達もこの店の付近、ラン嬢の自宅付近、ジェーン嬢の自宅付近の警護を強化を致します。不安な事があればいつでも連絡を下さい」
ウー副隊長はミント飴を持って私の方を見てゆっくりと言ってくれた。
「有難うございます。第二軍団の方には感謝してます。私の事でご迷惑をお掛けしました。これからも宜しくお願いします」
ウー副隊長はゆっくりと首を振った。
「ジェーン嬢、貴方に掛けられた迷惑は無い。ここで、又話を蒸し返すのも申し訳ない。私達は今後、あなたの期待に背く事ないように王都を守ります」
そして、私の肩に乗る使い魔と紺色のローブを見られ、とても似合っておられます。と胸に手を当て、礼をされた。
有難うございます、と私も礼をした。そうね、皆、頑張って行かないとね。
私も、ウー副隊長も。このマントや髪飾りを準備してくれた師匠やランさんの期待に背く事のないように。
胃も鍛えないといけない。
「ミント飴、おいしかったら今度は買って下さい。違う味も作ります。お好きな果物はありますか?」
私が聞くと、ウー副隊長は眉毛を少し上げられて笑われた。
「梨と葡萄が好きですが、飴には難しいですかね?ミント飴は第四の隊員から評判を聞いてますよ。隊長も皆喜びます」
「作れるかもしれません。出来たら食べて下さい。ところで、ウー副隊長も魔女の礼、したいですか?」
私がニヤリと笑って言うとウー副隊長は笑われ、させて頂けるのなら光栄です。と言い、深々と礼をされ、私は黙って頷いたのだけれど、その後は二人で笑ってしまった。
ウー副隊長はまた来ます、とキムハン副隊長に言うとミント飴を抱え店を出て行った。
ランさんが材料の在庫を確認しながらフォルちゃんに話し掛けていた。
「フォルちゃんの御主人はー、皆を従えるのよー。一番強いって事ねー」
フォルちゃんは頷き、アルちゃんとまた魔女の礼ごっこをしていた。間違った情報は与えないで欲しい。
あっという間に夕方になり、ランさんが、今日はもう店じまいですねー、っというと、皆がふうっと息を吐き出した。
店じまい後ランさんはボンジョウさんに家まで警護して貰う事になった。店にはホーソンさんが泊まる。私が三匹の使い魔に店でお留守番して欲しいけど誰かいてくれるかな?と聞いた時、アルちゃんは私の肩の上で、嫌だ、と、ぺっと舌を出した。
「アルちゃんは嫌なのね。ホーソンさんが店に一人で夜警護してくれるのよ。多分何もないと思うけど私の大事な店と警護してくれるホーソンさんを守って欲しいの。誰か警護してくれる?」
私がそう聞くと、フォルちゃんが一歩前に出た。
「フォルちゃん良いの?有難う。頼もしい子ね」
私がフォルちゃんの頭を撫でるとしっぽがフサフサ揺れた。
「ホーソンさん、フォルが店でお留守番をしてくれます。何かあったらフォルにも手伝って貰って下さい。フォル経由で私に連絡も可能です。宜しくお願いします」
私が言うと、ホーソンさんはフォルちゃんに向き直った。
「フォル殿宜しく頼みます。一緒に店を守りましょう」
フォルちゃんは小さく頷くと私が新しく用意したクッションの所に座った。
「では、私達は帰りますね。フォルちゃん、悪い奴らはやっつけていいけど、お話が出来る状態にしてね。悪い奴らから色々聞きたいの。皆もやっつける時は程々にしてね。でも、本当に危険な時は皆逃げましょ。戦略的撤退って言うのよ。ホーソンさん、何かあればコレ良かったら使って下さい、臭いスプレーです。歩く屍薬の奴ですね。相手の追跡等にも使えると思います。では、また明日」
怖々とスプレーを持っているホーソンさんに手を振り、私は店を出て鍵を閉めた。
私の帰り道はキムハン副隊長の警護が付いた。
「すみませんわざわざ。ウェルちゃん、空から怪しい人いないか見張れる?宜しくね」
ウェルちゃんはピピっと可愛く鳴くと空に飛びあがった。
「アルちゃんは私を守ってね」と言って肩にいるアルちゃんを撫でると、アルちゃんはペロっと手を舐めた。