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ご近所さんと魔女への礼 

私達が店に戻ると、タウンゼンド宰相から魔鳩が届いていた。



ランさんが注文書の束を整理しながらこちらを見た。



「タダでしたよー。滞在費払うって事でしたので了解しました。ご飯も好きに食べていいですよ。今日のお昼は裏の食堂でご馳走頼みましょー。ロゼッタの魔女祝いなんで、一緒にお祝いしましょうねー」



宰相さんに請求。


ランさんは、裏の食堂のメニューをキムハン副隊長に渡している。


石鹸やタオル等や保存箱の事もランさんに相談するとランさんの目が輝いた。



「この際、バンバン使っていいですよー。まとめて請求するんで。必要経費って奴ですねー。せっかくなので使った事の無い香りの石鹸使って下さい。気にいったらハワード隊長に第五で買って貰いましょー。皆さん寮住まいですかー?」



話しながら、ランさんは注文書の横に商品を並べていく。


キムハン副隊長は王都に家があり、奥様とお子さんがいらっしゃると言う事だったが二人の隊員は独身で、寮住まいだった。


第五の独身の隊員は王都か各地方の寮に住んでいる者が多いとの事だった。


泊りの隊員は独身者が選ばれたようだ。


私は注文書と商品が間違いないかチェックしながらカウンターの後ろの棚に置いて行く。




私は「宰相さんに請求する」というランさんの言葉で思い出した。



「ランさん、昨日ですね、王太子殿下とタウンゼンド宰相にポーションを売ってきました。こちら請求書の控えと納品書の控えです。請求に伺う事はお二人に伝えてます。後、第一騎士団と第五の方に新しい携帯食の試作品を配る許可を貰いました。国王陛下の前で聞いたので第二騎士団の方も渡していいと思いますよ。一応手紙を添えて試作品送ったらいいんじゃないですかね?試作品は感想くれたらタダと言っています。王太子殿下からは別の携帯食の注文頂きました」



私が控えの紙を渡すとランさんは喜んだ。



「おー。ロゼッタ、誘拐されかけてもちゃんと売ってくる所が偉いね。転んでもタダでは起きない。良い事よ。携帯食料、三十ずつ位配ろうかな。ロゼッタ早めに準備お願いねー」


「はいランさん、バンバン作りましょう。昨日色々聞いて思ったんですけど、携帯食料を栄養価が高い保存食として売れば騎士や軍団以外でも買ってくれますよね。携帯食は軍団や騎士以外で買ってくれるのは冒険者か旅人が多いですけど、王都は冒険者少ないですし。甘くすれば子供のおやつとかでも買ってくれますよ」



「よし、次は美味しい保存食作りがんばりましょー!味付けはロゼッタに任せたよー。船に乗る第六にも渡そうかなー。第六の人って会った事ないんだよね。野菜とか果物入りが第六は喜びそうだよねー。第六の隊長に魔蝶飛ばしてみましょー。がっぽがっぽよー。王宮にすぐに請求に行きたいけど、一週間程先にしましょうかねー。宰相分は今回の分と、まとめましょ」



ランさんはご機嫌でルンルンしている。



話をしていると、ジルちゃんが一度消え、師匠からの手紙を咥えて戻って来た。



「悪い奴ぶっ飛ばしてくるから、お前らいい子に待ってろ。軍団の奴らは暇だったら掃除でもさせてろ。警護で突っ立てるだけじゃ、給料泥棒だな。動いてる方が仕事になるだろ。悪い奴らの物は貰っていいよな?童話でもあったよな?悪い奴の物は私の物ってな。金目の物ばかりだろうなア。お土産待ってろ。ああ、軍団の奴らはお使いでもいいぞ、軍団隊員が店回りウロウロしてるの見せつけたらいいんじゃないか?」



と、書いてあり、ランさんがキムハン副隊長に見せて、「じゃー、お使いと、掃除も頼んでいいですかー?ご飯は大盛で付けますよ、必要な物買われて来ていいですよー。宰相に請求しますから。メニューからお好きな物選びました?私とロゼッタは本日のスペシャルランチセットにしますよー」と、言っていた。


私は今日の注文の薬の材料と、保存食の材料をせっせと錬金釜の近くに運ぶ。


キムハン副隊長は、手紙を見るとにっこり笑われた。



「流石大魔女殿。了解した。ラン嬢、慣れない事で迷惑をお掛けするかもしれないが、宜しくご指導頼みます」



その言葉通り本当にランさんは、ホーソンさんにお掃除を、ボンジョウさんにお使いを頼んだ。



「ずっとしてなかったし、掃除は二階を中心にお願いしますねー。掃除道具は物置にありますので使って下さい。二階に泊まるなら掃除して好きにされていいですよー。あ、もし何か壊したりしたら言って下さい。瓶が割れて体に当たったら、痒くなったりあとで腫れたりする事もあるんでー。お使いのリストはこれです。裏の食堂にも注文お願いしますね。玉ねぎ屋って食堂です。ご自分の分とお使いの請求は分けて下さいね、宰相に請求する時が面倒なんで。このカード見せてお店で買って下さいねー」



隊員の人達も快く引き受けてくれ、早速ボンジョウさんはウェルちゃんと一緒にお使いに行った。


ホーソンさんは掃除をする為二階に行き、アルちゃんも付いて行った。


私は錬金釜の横の机にノートを出し、調合の割合を考えつつ、ナッツを沢山出して王太子殿下の注文を作る事にした。


ランさんって強引だけど、常に自分も仕事してるし優しいから皆引き受けちゃうのよね。


店に入って来たお客さんはドアの横にいるフォルに驚き、軍団隊員の人がお掃除をしているのを見てまた驚いていた。


ランさんが「泥棒予告があったみたいで、来てくれたんですよー。いいでしょー」と言うと、「まー、良かったねー」と、納得していた。


お客さんは軍団隊員の事を気にしてないようでホッとしたが、裏の奥さんはキムハン副隊長にちょいちょいっと手を振り呼び寄せ、小声になってないささやき声で、「ロゼッタちゃん、泣かすんじゃないよ」と言っていた。


キムハン副隊長は頷き、礼をしていた。


申し訳ない。


私が魔女になった事もご近所さんにすんなり受け入れられた。


お祝いだよ、と言って、お客さんからお菓子や果物を沢山貰った。


ポッポ屋のお姉さんやトコトコハウスのお姉さんも覗きに来てくれ、魔鳩無料券や、綺麗なペン立てをくれた。


うちのご近所は皆、自由で優しい人が多い。


お昼前には隣のおじいさんもやって来た。


「ロゼッタちゃん、魔女になったって?こりゃこりゃ。長生きするもんだね」と言って胸に手を当て礼をした後、頭の上に両手を上げて深々と礼をして新年の挨拶をされた。


そして満足されたのか「よかった、よかった」と言うと帰って行った。



私がなぜ新年の挨拶を?とおじいさんが帰った後に不思議に思っていると、キムハン副隊長が教えてくれた。



「新年の挨拶の始まりは、魔女様への挨拶とされているのですよ。古い言い伝えですね。勇者が魔女様に出会い、魔女様の力を借りる時に礼をされた。その時の挨拶が今の新年の挨拶の礼の元になってます。正しくは膝を折って座り、頭を垂れ、両腕を伸ばして礼をされたそうですよ。最上の礼として軍団や騎士の教科書に書いてありますよ。今の新年の挨拶は座る事もなく、簡略化された物になっているそうです。成人の儀の礼も似てますよね。魔女様に会われた時にあの礼をすると、勇者になれると言う言い伝えもあるのですよ。年嵩の騎士や軍団員はジェーン嬢に礼をしたい者が多いと思いますよ」



「え、隊員の人、私に礼をしたいんですか?キムハン副隊長も?おじいさんに私は何もお返ししなかったんですが、返礼はしなくて良いのですか?」



私がキムハン副隊長に聞くと、苦笑いされた。



「私も宜しいのであれば、ぜひ。お昼休憩の時にさせて頂きたいです。面倒であれば断られて下さい。キリがない事もあると思いますので。勇者が礼をされた時、魔女様は黙って頷いたと言われています。なので、ジェーン嬢は何もされないのが正しいかと。成人の儀でも司祭は礼を返されても黙って頷く事になっておりますからね」



私も苦笑いで返した。

軍団、騎士団の隊員達に恭しく(うやうや)礼をされ、黙って頷く私。

王都の人達に見られたら、変な二つ名貰ったりしないかな。



話をしてからは、キムハン副隊長は私が薬を作っているのを見ていたり、魔鳩が持ってきた書類を整理して魔鳩で返信したりしていた。



ランさんが「副隊長さんも練薬作ってみます?魔力多そうだし、出来そうですねー」と言っていたが、練薬作成までは流石に出来ず、薬草の仕分けの手伝いをさせていた。



「薬草の種類とか、傷薬の作り方とか、覚えてて損はないですよー。急に薬が無くて、必要になる事もあるかもしれませんし。遠征とかあるんですよね?そこで見つけたら使えますよ。いつも薬師がいるとも限りませんしね。似てる毒草も教えますねー。一番簡単な傷薬でも、結構役に立ちますからねー。飛竜ちゃんにも使えるんじゃないですかー?」



「成程。有難い事です。店の役には立たず、邪魔かもしれませんが勉強させて頂きます」



キムハン副隊長はランさんの弟子みたいな立場になってしまった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 ランさん強い!(o^-^)尸 ロゼッタちゃんも、お城でしっかり携帯食やポーションを売ったり注文取ったりしてましたしw(笑) 第六は海軍でしたね?なら、野菜や果物が練り込…
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