法務局からの呼び出し
私は最近買い物をしてなかった事もあり、沢山の本や道具、食料をここぞとばかりに買い込んだ。
買い物ってストレス発散に良い。
たまには財布の紐、緩ませてもいいと思う。
忙しくて全然買い物出来てなかったから。
お仕事頑張ったしね。
自分に言い訳をしながら私は満足して家に帰り、買った商品を保存箱に入れていると窓がコツコツとノックされた。
うん?と思い、窓を見ると、魔鳩が首を傾げこっちを見ていた。
「ちょっとまって」
私がそう言って窓を開けると魔鳩は私の手の上に乗った。
「ロゼッタ・ジェーン」と、魔鳩の上に文字が浮かび、「はい、間違いありません」と、答えると、手紙が現れポトンと落とされた。
手の中の手紙は至急の王宮印が押された物だった。
「げ」
おもわず声に出たが、「受け取りました。有難う、ご苦労様」と、魔鳩に伝えると一度首を傾げ魔鳩は消えた。
封筒の中の手紙は王宮の法務大臣からで、この間の事件の内容の確認の為王宮に来て欲しいとの事だった。
手紙の内容を見て私は固まってしまった。
え、今更?と思ったが、呼ばれてはしょうがない。
至急の印も押してある。
振り返り、部屋の掛け時計を見ると夕方の五時三十分。
ギリギリ行けない時間ではないけど、事務所とか閉まってるんじゃない?
今から王宮にむかうと夜になってしまう。
うーん、と考えた私は、そうだ!と思いつき、「バルちゃーん」と声を掛けてみた。
ひょこんとバルちゃんが私の目の前に現れた。
「来てくれて有難う。急にごめんね、今から王宮に行かないといけなくなったの。法務大臣の呼び出しがあったのよ。王宮まで行くと夜道になるし、バルちゃん一緒に来てくれる?一度師匠にも説明したいのだけど、バルちゃんが言ってくれる?それとも手紙がいいかな?」と聞くと、パチリとウインクしてあっという間にバルちゃんは消えた。
バルちゃんのウインクも素敵。
五分程でバルちゃんは戻ってきて今度はギルちゃんも一緒だった。
「あれ、ギルちゃんも一緒に来てくれるの?師匠は何か言ってた?」
と聞くと、バルちゃんが手紙を咥えていて、
「ランの所に寄ってから、後で私も行く。門で私の名前を出して、宰相のマクシミリアン・タウンゼンドを呼べ。あと、前やったブローチを今日は着けて行け。門番にも見せろ」と書かれていた。
「えー。なんか行きたくなくなったなー。嫌な予感しかしない」
とは言っても、行くしかないのよね。と、私は出かける準備をした。
私は頼もしい二匹の使い魔を共に、二つのマジックバッグに必要そうな物をこれでもかと入れ、師匠から貰った黒い石に金色が星の様に散っているブローチを胸元に着けた。
普通に綺麗な石なんだけど、魔力をビシビシ感じて怖いのよ。
呪いの石なんじゃないでしょうね。
師匠ならなんでもアリだから怖い。
「じゃあ、お供を頼んだわよ。私弱っちいから、何かあったら助けてね。いざとなったら臭い練薬、噴水に入れましょう。ギルちゃん、バルちゃん、頼りにしてる」と言うと、二匹は頷いてくれた。
ギルちゃん、バルちゃんの二匹のお供を引き連れ、私は王宮へとむかった。
途中まで乗り合い馬車で行き、王宮前で降り、歩いて門前までむかう。
王宮は広いので、馬車で降りて門前までも遠い。久しぶりに王宮に来たが、やっぱり疲れるなあと思った。
最近はランさんが王宮の受注配達代わってくれてるけど、王宮に行くのに楽になる道具が無いかなとか、薬作れないかな?と思い、歩いた。
師匠みたいに転移魔法が出来るようになるのが近道だろうけど。
その近道は遥か遠い気もする。
門の所まで来て、門番の人にブルワー法務大臣から来た手紙を見せ、師匠から言われたブローチも見せた。
門番の人はびっくりしていた。
「マクシミリアン・タウンゼンド宰相を師匠から呼ぶように言われています。呼び出し人はロゼッタ・ジェーンでお願いします。ジュリエッタ・ホグマイヤーは私の師匠です」と言うと、師匠の名前が魔法なのか、門番はびくりとして、急いで伝令蝶を飛ばした。
伝令蝶は魔力が無くても誰でも飛ばせる。但し距離に制限があったり、送る相手に制限があったりと使い勝手が悪い。
ランさんに言われて私が試しに作った魔蝶はまだ店限定で使っているけど、伝令蝶よりも制限をなくしている。魔鳩よりも制限があり、スピードも遅い。伝令蝶より便利にしたけど、一般的に売るかはまだ迷い中だ。
師匠から、便利すぎる物は作っても売るなと言われている。
「試しで作るのはいいがな。欲しがられても、試作品で無理って大概言っとけ。上手くいかなかったって言えば、売らなくていい、なんなら、爆発するとか、したとか言えばいいんだよ」と師匠は言っていた。
制限があるのがいい、と王宮や国営の施設では伝令蝶を使う所が多いようだし、新しい物を作るって難しい、と飛んで行った伝令蝶を見ながら考えた。
十五分程待つと伝令蝶が帰ってきて、タウンゼンド宰相が迎えに来るので待つように、との事だった。
え。宰相直接来るの?おかしくない?
門番の人も伝令聞いて困ってる。
二人で顔を見合わせ、
「今、宰相って言いましたよね?」
「ええ。確かに」
「え。宰相ってこんな感じで来るんですか?」
「いや、自分がここに就いて七年ですが、初めてですね」
「やっぱり。聞き間違いじゃないですよね?」
「あの、ジェーン嬢は宰相殿のお知り合いではないんですか?」
「いいえ。知り合い等言えないと思います。何度か挨拶した程度ですよ。そういう意味では門番さんの方がお知り合いかと」
「いやいや、俺なんて敬礼するだけですよ」
なんてコソコソ話していると、騎士達を連れたタウンゼンド宰相が本当にやって来た。
本当に来るんだ。
門番の人が敬礼し、私も礼をした。
「ロゼッタ・ジェーン嬢。先日は王国軍団の者が無礼を働き大変申し訳なかった。その後はいかが御過ごしだろうか」
タウンゼンド宰相は私達に礼をやめさせ、自身が礼をしながら話された。
「はい。お久しぶりでございます。タウンゼンド宰相閣下。平穏に過ごさせて頂いております。その節は有難うございました」
「そうか、本日はいかがした?歩きながら話した方がよろしいか?」と言われ、
「はい」
と答え私達は王宮へと歩きだした。




