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再び王都へ 

私は転移を使って、皆をコロン領へと送り届けた。


大人数の転移は初めてだったな、と後で思ったが、その時は何も考えなかった。


突然冒険者ギルドに現れた私達に皆が驚いたが、私は構わず受付に進むと「ギルド長は?」と聞いた。私の魔力に当てられて受付の人の顔色が悪く、溢れる魔力で髪が動くが、抑える事は出来なかった。


「すぐに呼んで」


受付の人からの返事がなく、続けて私が聞くとハッと後ろのアランさん達を見て急いでベルを鳴らし、受付の裏へと走っていった。アランさんパンデさんがそれぞれマークさんとジャックさんを背負っているが、ギルドにいる人間は私達に話し掛ける事もなく、誰も口を開かなかった。


シンと静まるギルド内に、急いでギルド長が走って来る音だけが響く。本来騒がしい冒険者ギルドの中で、誰も動かず私を見ている。


「宵闇の魔女様、どうぞこちらへ」


「アランさん達も来て頂戴」


ギルド長が急いで走って来ると、すぐにギルド長室へと案内され、私達が動くと、ギルド内にいた人達も動き出した。


私がギルド長室へと入りソファーに座ると、ギルド長は続けて入ってきたアランさん達が背負うマークさん達を見て胸の前で指を組んで、目を伏せ、祈りを捧げて目を開けた。



「ギルド長、魔物の変異種が出たわ。私はこれからコロンの街に防御膜を掛ける。強めにかけるけれど、何日もつか分からない。皆は外に出ないように言って。私はコロンの周りの魔物を調べて王都に向かう。コロン子爵への連絡は貴方がして頂戴」



私がそう言うと、ギルド長はさっとアランさん達がゆっくりとソファーにマークさん達を下ろしたのを見て、頷いた。


アランさん達は黙って私を見ていたが、私を見ていて見ていない。私の向こう側を見ているような感じだった。


「アランさん、すぐにコロンに防御膜を掛けます」


「ジェーン様・・・」


「アランさん達は休んで下さい。回復魔法を掛けていても、心までは私は回復してあげれない」



私はマークさんの髪を触って、杖に触れた。


私が上げた守り石は割れていた。


ギルド長は私の様子を立ったまま見ていた。



「ギルド長。これは王太子殿下の書状よ。私が今言った事は王太子殿下が言った事と一緒の事よ。何してるの?早く動いて」



私がギルド長の方を向くと、ギルド長はビクッとして顔を上げすぐに部屋から出て行った。アランさんはパンっと自分の顔を思い切り叩くと私の方を向いた。



「ジェーン様、有難う。マーク達を寝かせてやりたい。パンデ、マーク達を頼む。俺はギルド長と話をしないといけない。俺がリーダーだからな」


「分かった・・・。マーク達を寝かせた後は、職員とは俺が話す。あとでまた」


「ああ。頼む。ジェーン様、貴女のおかげで俺らは帰ってこれた。感謝を」


アランさんはそう言うと、ギルド職員を呼んで出て行った。


私は黙ってギルドを出ると空の階段を作ってコロン領の高台にやってきた。


綺麗な青空が広がっていた。私は杖を振って魔法陣を出した。



「嘘みたい。嘘ならいいのに」



あの時は、夕日がきれいだった。


魔力を散らして、大きな魔法陣を出していく。目についた冒険者ギルド、門、子爵邸、薬師事務所。杖を振って防御膜を掛けて行く。


最後に街全体を包むように大きな防御膜を掛ける。それはしっかりと言葉に魔力を乗せた。



「大きく、強く、頑丈な鎧となれ。悪意を退け、仲間を守れ。防御膜」



フォルちゃんも「防御膜」と、思い切り吠え、コロン領一杯の防御膜を張ると私は緊急魔蝶を取り出した。



「ハヤシ大隊長?もう、連絡が来ていますか。ジェーンです。コロン領の端の方に変な魔物が出ました。凶暴化している物だと思います。すぐに隊員を派遣出来ますか?コロン領には私が防御膜を張りました。冒険者二人が倒れたの。早急に・・・早急に隊員をお願いします。誰か来させて下さい!」



私は顔を覆うと緊急魔蝶を王都迄転移をさせた。


目の前のコロンの街はとても綺麗で、夕日に照らせれていた。私は緊急魔蝶を出していく。



「ジロウさん、聞こえる?コロン領に変な魔物が出たの。ハヤシ大隊長には知らせたわ。私はここから離れて魔物の様子を見に行きます。魔物に注意して下さい。マークさんとジャックさんが倒れました」


「ライアンさん、もうハヤシ大隊長から聞きました?コロン領に変な魔物が出ました。魔物に気をつけて。シルバーウルフ。凶暴化していました」


「ベンさん、クルマス隊長にも知らせて下さい。コロンに変な魔物が出ました。緊急魔蝶を預けていた友人が倒れました。ハヤシ大隊長には連絡しています」



ランさんにも知らせなきゃ。ああ。もう。


第三のゾルフ隊長の部隊の方が近いかしら。皆にハヤシ大隊長が知らせている?


マークさんに私が余計な事を言ったから。


あれから変な魔物を見る事はなかった。亜種かと思ったけど、違うかもしれない。でも、用心して欲しかった。こんな事になるとは思わなかった。



「ウェルちゃん!!」



私が呼ぶとウェルちゃんは特大サイズになった。


私がウェルちゃんに乗ると、フォルちゃんはアルちゃんを乗せて、コロン領の外へと走って行った。



「魔物を見つけて。変な魔物よ。旅人や、近隣の村にも知らせないと」



ウェルちゃんで飛び回りながら、辺りを見て回ったがいつも通りの風景だった。のどかな風景が広がっている。


おかしな魔物もどこにもいない。


何で、マークさん達が見つけてしまったの?私が見付けたらよかったのに。


にじむ視界に私が辺りを飛び回っていつの間にか日が傾き、コロン領へと一度戻っていると、魔蝶が飛んで来た。



「ジェーン様。各所から連絡を受け取りました。第三・第五をコロンに派遣します。ハワード、ジロウからも連絡が来ました。二人とも間もなく着くでしょう」



その言葉が終わる前に魔力を感じ、顔を上げると、視線の先にはスレイプに乗ってかけて来るジロウ隊長とその後ろから飛んでくるハワード隊長がいた。



二人を見て、私は涙を見せないようにするのに必死だった。


「「ロゼッタ嬢!!」」


私が顔を上げると、それぞれ、スレイプと飛竜から飛び降り、私の元へと駆けてきてくれた。



「二人共。コロン領を助けて」



二人を見上げると、二人は脚を止めて、「「は」」と礼をした。


「変な魔物が。襲ってきたの。友人達が倒れたわ。私一人で魔物を倒せても、私の力じゃ皆を守れない」



私の力はなんて小さいんだ。私は守る側だと思ってたのに。


私がウェルちゃんを降りて二人に近づくと、二人は頷いてくれた。



「ええ。必ず。貴方の剣となり、盾となります」


「ロゼッタ嬢の願いはなんだって聞きますよ」



私は二人に杖を振り魔力を飛ばし、ネーロさんとウィリデさんにも杖を振った。



「そして、お願い。二人共死なないで。ネーロさんとウィリデさんも。絶対よ」



私の言葉に二人は一瞬言葉を返さなかった。



「ジェーン嬢の望みとあらば」


「大丈夫。自分、しぶといんで」



二人は私に言葉を返すと、二人で何か話し、別々の場所に向かった。


ひらひらと魔蝶が私に飛んで来た。



「ジェーン様。全部隊に連絡は完了しております。お心安らかに」



ハヤシ大隊長からの魔蝶を聞くと、私はストンとその場に座った。



「マークさん・・・」



杖に付けたマークさんの御守りはキラキラと光っていた。



「本当に?」



もういないの?


どれくらい時間が経ったのか分からないが、私が顔を覆っていると、フォルちゃんが横に来て、ゾルフ隊長を連れてきた。



「ジェーン様。クリス様が王都にお戻りになられております。王宮や名無しの薬局はクリス様とジェーン様のご友人で御守りになられると伝言を預かりました。第三部隊でコロン領を守ります。ブール領や近隣の村にも通達は完了しています。オースティン軍団の盾と剣であらゆる災厄から守ります。どうぞ休まれて下さい」


「ゾルフ隊長・・・」


「はい。お久しぶりです。ホグマイヤー様はお元気ですか?」


「師匠は、少し前から出かけています。メリア国の方に・・・。その後、諸外国をまわって帰って来るようです」


「そうですか。魔法使い様達も動かれていらっしゃるようです」


「ええ。ベンさんとは先程まで一緒でした。ゼンさんも元気になっています・・・。クリスさんは王都なんですね・・・」


「はい」



話していると少し落ち着いてきた。



「では、ジェーン嬢はコロン領に我らと一緒に戻られますか?」


「いいえ、私は王都へ向かいます」


「かしこまりました。では、ご武運を」


「はい。ゾルフ隊長も。あ、ポーションとハイポーションを持って行って下さい。これは私からの差し入れです」


「では、遠慮なく」



アルちゃんが大きな箱を吐き出すと、ゾルフ隊長は受け取りお辞儀をすると黒い影を何体も連れて溶けるように走ってブールへと向かった。



「ポーションは皆に配っておきましょう。ウェルちゃん、お願い」



私がウェルちゃんにポーションを渡すとウェルちゃんは「まかせなさい」と言って飛んで行った。


私が魔蝶を出して、ランさん達に飛ばしていった後に私はフォルちゃんにポスンと乗った。



「フォルちゃん、王都までお願い。アルちゃん、探知をしてね。おかしなことが無いか調べながら行きましょう」



私達が王都へ向かうと途中でウェルちゃんが合流し、異変も何もなく王都へと帰った。





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