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海の街 サイパー 

そして、色々寄り道しながら三日程。


私は無事にサイパー領にたどり着いた。



「さて、思ったよりも時間が掛かったな。ウロウロしすぎちゃった。クルマス隊長は何処かな。やっぱり海なのかな」



大通りを歩き隊服を探すが、中々みつからない。


私がキョロキョロしているせいで、大勢の人と目が合う。


今迄行った多くの街では「魔女様」と、珍しそうに遠巻きにされたり、ジロジロ見られる事が多かったのだが、この街では、目が合えばにこやかに手を振られたり丁寧にお辞儀をされるが、必要以上に皆近づいては来なかった。



「魔女に慣れているのかな。師匠がよく遊びに来るから?」



私が海の方へ歩いていると、「お、新しい魔女様?宵闇の魔女様で?大魔女様のお弟子さんの?サイパーへようこそ。一つどうだい?」と店先で揚げ物をしているおじさんが私に丁寧に礼をした後に声が掛かった。


「美味しそうね」


私は手を振って礼を止めさせると、揚げ物の良い匂いによだれが出そうになった。


「宵闇の魔女様、美味しそう、じゃなくて美味いよ。ほら、食べていって下さいよ」


私の目線の先には揚げたての魚のフライが並んでいた。まだ、ジュージューと音を立てて、おじさんはニカっと歯を見せて笑うと「揚げたては最高だよ!」とドンドンきつね色に揚がったフライを並べていった。



「じゃあ、フライを四つ。あと、何か飲み物を下さい」


「まいど!」



勧められるままに魚のフライを買い、海が見える店先の椅子とテーブルを指さされ、そこに座ると、すぐに熱々のフライがテーブルに置かれた。


「魔女様、熱いから気をつけて」


私達の前に並んだ四つのフライをアルちゃん達もそれぞれ食べだした。


私はふーふーっと冷まして口に入れたが、サクッと言う音と共に、口の中にジュワっと旨味が広がり、目を丸くして、口をハフハフ開け閉めして食べた。



「あふ!!う!あ、これは!美味しい!!うん!美味しい!!」


白身のフライにレモンが半分添えてあったので、レモンをギュッとかじったフライに絞って、口に入れると、これもまた美味しかった。


「美味しい!!」


「魔女様!そんなに急いで食べたら、喉につまっちまうよ!」



はっはっは、と笑いながら緑の果物が浮かぶ飲み物を私の席に置いた。



「これ、本当に美味しいですね」



美味しいしか言ってないな、と思ったが、美味しい物を食べたら美味しいしか言いようがない。


私は置かれたジュースをゴクゴク飲んだが、こちらもさっぱりとしたジュースでフライに凄く合った。



「有難う。白群の魔法使い様もよく食べにいらっしゃるよ。デザートにはアイスやマフィンを注文するんだが、今日は来られなかったなあ。今日はスープを食べに行ったのかな?」


「ベンさんが?納得です。こんなに美味しいのならベンさん沢山食べそうですね」


「ああ、ここらの食べ物屋は白群の魔法使い様に皆、食べて欲しいのさ。魔法使い様を見つけると皆、声を掛けてなんでも持たせるから、魔法使い様は痩せれないな。この街は白群の魔法使い様のおかげで守られているからね」


「第六軍団もいますよね?」


「ああ。勿論。第六軍団のおかげで海賊も魔物も街には入ってくることは稀だからね。でも、第六軍団の家族もここには多いからね。やっぱり魔法使い様がいると、第六軍団を支えて下さってくれるし、レイモンド様が治療や解毒をしてくれるからねえ」



私は頷きながらフライを口に入れる。


サクサクの衣が最高に美味しくて、魚もプリっとジュワっと最高に美味しい。



「皆、軍団の船が出ると、家族は海に向かって祈りを捧げるんだ。魔女様には馴染みはないかな。旅人の祈りとは違ってね。船乗りだけの祈りだよ。漁師達や隊員達に魔法使い様の加護があると、それだけで安心だよ。だから魔法使い様にも感謝と平和の祈りを捧げているよ」


「ふむ。成程ね。でも、ベンさんもふらふらするでしょう?よく王都にも来ているみたいですし」


「そりゃ、魔法使い様は自由だから。それでいいのさ。自分の遊びの序でにサイパーに加護を頂ければ。魔法使い様にはいつまでもサイパーにいて欲しいよ。でもサイパーには決まりがあるんだ。魔法使い様、魔女様の自由を妨げてはならない。もし、出て行く事があっても、引き留めてはならない」


「いて欲しいのに?引き留めないんですか?」


「ああ。波は寄せては返す。人の気持ちを無理強いしてはならない。まあ、俺としては、いつでもフライを食べに来て欲しいけれどね」



私はフライを口に入れて頷いた。



「魔女様は魔法使い様に会いに来たのかい?今の時間なら海岸沿いの店のどこかにいるだろうなあ。ああ、でも、船が出てるからもしかしたら軍団の船に乗ってるかね」


「ベンさんも船に?」


「釣りをする時にね。漁師の船に乗ればいいのに、『商売の邪魔はしたくないよ。僕はのんびりと釣りたいしね』と言って、軍団の船に乗るんだよ。大魔女様が来られた時は特別だね。町全体で大魔女様が魔法使い様を追いかけまわしたりして遊んでらっしゃるから。皆、魔法使い様をかくまったり、笑って応援するんだ。まあ、今まで逃げ切れたことはないなあ」


「ああ。師匠から逃げるのはベンさんでも無理ですね」



うんうんと、頷きながらも、この街の人達は師匠にもベンさんにも優しくていい街だなと思った。



「うーん。あの沖に見える船にベンさんはいるのかな?」


「クルマス隊長達にも用事かい?軍団事務所はこのまままっすぐ海に行くと右手にあるから、そこで訊ねてみてもいいかもな」


「有難う。では、ベンさんとクルマス隊長を探しますか」


「魔女様、マフィンを持って行ってくれるかい?もし、魔法使い様にお会いしたら一緒に食べれるように多めに包むから」


「はい。いいですよ」


「有難う。宵闇の魔女様にも良い波を!」



笑顔で準備しに去って行った店主をみて、海岸の方に目を移したが、ベンさんを見つける事は出来なかった。



「ふむ。そっか、この街はベンさんの街だから、皆が私に対しても優しいんだな。師匠のおかげじゃなくてベンさんか。ベンさん凄いな」


ベンさんがこの街の人達に尊敬されているのが伝わり、私は改めて先輩魔法使いの凄さを感じた。




誤字報告有難うございます。

名前間違えてましたね……。変更しています。(o*。_。)o

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