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薬師棟へ 

誤字報告有難うございます。

「そうだ、薬師棟で火トカゲ飼った事があるって薬師の人が言ってたな」



薬師のリングを見て思い出した。


以前、お使いで薬師棟に行った時に薬師の人達とペットの話をした事があった。その時、一人の薬師お兄さんがポン、と手を叩いて教えてくれた。


「ペットと言うには違うけど、以前、薬師長様が薬師棟で火トカゲを飼育したことがあるよ」


「え?火トカゲを」


「ああ。薬師棟の外れにある煉瓦小屋で飼ったんだ」


「よく飼えましたね。火トカゲって凄く大きいんでしょう?」


「それは小さい個体と言われたけど、俺の二倍はあったかな。身体よりも尻尾が長くて太いんだ。顔もこんなにあったな。尻尾を振るだけで音が恐ろしかったよ。結局、環境が変わったせいか寒かったのか、すぐに弱ってしまったんだけどね。小屋も一部焦げてしまったし、大変だったな。まあ、結局ペットを飼うには環境を整える事が大切だってことだな」


「ほほー」


「ジェーンちゃん、一人暮らしだっけ?名無しの薬局じゃ、ペットを飼うのは難しいだろうね、ランちゃんが許可しないだろうし」


「いや。防犯って言ったらランさん許可しそうです」


「へー」


・・・・・。


うん、確かに聞いた。



「よし。薬師棟に行こう。モラクスさん、アドバイス、有難うございます。ルークさんは薬局でお仕事お願いします」


「ロゼッタ、外でもこれからは我を呼べ。力を貸そう。我も外に出る準備をしておかねばな」


「ぷくく。モラクスも楽しそうだね。僕は良い子にお留守番だね?ロゼッタ、いってらっしゃーい」


「了解です。モラクスさん、外に出る時は魔力を抑えるような姿でお願いします。その姿だと、皆驚いてしまうので」


「むう」



モラクスさんは考えながら消え、ルークさんからは小さな手をチョコチョコ振られた。



「花まつりから師匠はどこに行ったのかな」



師匠となかなかゆっくりと話す機会はない。もう少し、名無しの薬局にいてくれてもいいのにな、と、寂しく思っていたら工房の隅に師匠からの書置きがあった。



『ロゼッタへ


工房の掃除はちゃんとしているようだな?これからもちゃんと掃除しとけよ。それにしても、楽しそうで何よりだ。いいか、お前はいつも笑ってろ。

私はまた少し王都を離れるぞ。私も色々、忙しいんだ。人気者は辛いな。店はお前の留守番と、ジルがいればいいだろう。拾った物の世話はちゃんと責任持てよ。

あ、菓子と煙草をまた送ってくれ。ランには金儲けは程々にと言っておけ。お前ら宛の土産を置いとくぞ。


偉大なお前の師匠より』


「師匠!!」



書置きの下に小さな包みが二つ置いてあった。師匠の綺麗な字でラン、ロゼッタ、と書いてあり、私はロゼッタと書いた分をバッグにしまうと、ランさんの分はランさんがいつも座るカウンターの椅子の上に置いた。


「師匠にも、お菓子を沢山送らなきゃ。師匠は変わったものが好きだからなあ。珍しい食べ物を見つけたら送ろう」



私は杖を振って靴を鳴らし魔法陣を出すと、薬師棟へと転移をした。


私が突然現れると驚かれたが、薬師の人達はすぐに礼をし、私も手を振って答えた。



「ジェーン様、如何なされました?」


「こんにちは、ドリーさん。いつも名無しの薬局がお世話になってます。これ、皆さんで食べて下さい」


「ジェーン様はお変わりないですね」


「薬師長様は?」


「薬師長室です」


「今更だけど、突然来てよかったのかな」


「ええ、どうぞ。伝令蝶を飛ばしておきます」


「有難う」と、私がお礼を言うと、ドリーさんは伝令蝶を飛ばし、私はゆっくりと薬師長室へと歩いていった。


私が薬師長室のドアの前に立つと中から、「ジェーン様、どうぞ」と、言われたので、「こんにちは」と挨拶をしながら中へと入った。


薬師長はドリーさんが言った通り、お茶を飲んでいたらしくテーブルの上にはお菓子とお茶があった。


「おやおや。ジェーン様、ごきげんよう」


「突然すみません。薬師長様。火トカゲの事で聞きたい事がありまして、飛んできました」


「おやおや。火トカゲとは。どうぞ座って。頂き物のお菓子もあるよ」



私がソファーに座ると、薬師長も目の前のソファーに座った。


「以前、薬師棟で火トカゲを飼った事があるんですよね?薬師長様は火トカゲに詳しいですか?」


「ああ。懐かしい。耐性や薬の実験を魔術士と合同でしてのう。火トカゲの生態の研究もし、益はあったが王都の気候はやはり合わなかったのう。王都で火トカゲを飼うのは難しいと思うが?」


「いえ、薬の材料にしたいのですよ。火トカゲって何処にいるかご存じですか?私の本には詳しく書いてなかったのです。狩りに行きたいのですが」


「ほっほっほ。そうかそうか。狩りじゃったか。流石はジェーン様。火トカゲはソロン島に生息しておる。私から、ジェーン様が狩りに行かれるとハヤシ大隊長に話を持って行っておこう。そこに行くには・・・ふむ。第五の飛竜か、第六の船が必要じゃの。ジェーン様なら飛んで行かれるかな?」


「有難うございます。ソロン島ですか?」



私は地図を開いて薬師長に聞いた。



「ここじゃよ。普段は誰も寄り付かん。有毒ガスも出ておって住民もおらん。時々、軍団や、騎士が調査や魔物を間引きに訪れるだけじゃの。冒険者が行く事もあるが、上級冒険者が定期的に特別依頼で行くくらいじゃろう」


「ガス。あ。大丈夫です。マスクもありますし。島なんですね。うーん。ちょっと行って、パパっと狩ろうかと思ったんですけど、難しいですね」


「薬の材料に必要と?」


「ええ。ランさんに新しい薬を催促されてますから。店で売り出す前ですから、何の薬かは秘密です。材料にいいかと思いついて」


「何の薬かが知りたいのう」


「駄目です。内緒です」



私は口の前で指を一本立てると、薬師長は「残念じゃの」と笑われた。


「島ですか・・・」


「うむ、島じゃの」


腕を組んで、地図を指さして、ソロン島の距離を測った。



「サイパーが近いんですね」


「うむ。船で行くなら、サイパーからじゃの」


「よし、じゃあ、やっぱりサイパーに行って、クルマス隊長にお願いしてちょっと船に乗せてって貰います」


「ああ。それが良い。第六が一緒なら安心じゃ。海の魔物も船に襲ってくるから、気を付けなさい」


「はい。あ、薬師長様、突然訪ねたお詫びで。これ、夜光草です」



ゼンさんの家の近くで採取した夜光草の束を出すと、薬師長は目をキラリと光らせ喜んだ。



「おお!これはこれは!良いのかな?こんな品質の良い物を!」


「ランさんにはもう渡しましたから。先日採取して、アルちゃんに保管して貰っていたから新鮮なままです。使って下さい」


「有難う。では、このお菓子を持っていきなさい。王宮会議で出た物を頂いてきたんじゃよ」


「王宮会議のお菓子、高級そうですね」


「うむ。王妃様のお気に入りのお菓子らしいが、儂にはちょっと甘さが強かったのう」


「あ。師匠に送ろうかな。珍しいお菓子なら喜んでくれるかな」


「ふむ。ホグマイヤー様に送るのであれば、ハヤシ大隊長に聞いてみようかの」



薬師長はそう言うと、伝令蝶を飛ばそうとしたが、ウェルちゃんが「私の方が早いわ」と言って、飛んで行ってしまった。


薬師長と王妃様のお気に入りの甘いお菓子を食べ、「うわ、本当に甘い」「うむ。甘いのう」と言いながらお茶のお代わりを貰っていると、ハヤシ大隊長がお菓子の箱を持って駆け込んで来た。



「如何なされましたか、ジェーン様。ウェル殿より、ホグマイヤー様用のお菓子を持ってくるようにとの事でしたが?」



私に礼をし、薬師長にも挨拶をしてハヤシ大隊長はお菓子の箱をテーブルの上に置いていった。



「これまた、沢山じゃのう」


「まあ、師匠はお酒のつまみにもしますから。いくらでも食べますけどね。ハヤシ大隊長はお菓子好きだったのですか?沢山ですね」


「ははは。私も食べますが。騎士、軍団隊員は昼夜問わず誰かしら、詰所にいますから、常に菓子や保存食を置いています」


三個、四個、と箱を置きながら、ハヤシ大隊長も私の言葉に頷いた。


「色々な種類をお持ちしましたよ。王妃様のお気に入りのお菓子をと、の事でしたが、ホグマイヤー様は以前お食べになられた時に「甘すぎるなア」と言われていましたのでそれとは別に、「酒に合うな」と言われていた菓子と塩味のある菓子を持ってきました」


「おお。流石、ハヤシ大隊長。師匠の好みをバッチリ知ってますね。あと、ちょっと今から火トカゲ狩ってきます」


「そのようですね。ウェル殿から道すがら話を聞きました。第六のクルマスには私からも連絡を入れますが、ジェーン様の方が早いかもしれません。どうぞお気をつけて」



ハヤシ大隊長に笑われながらお菓子の箱を受け取り、私は杖を振った。



「師匠には、ハヤシ大隊長からの差し入れって言っておきますね」


「さてさて、気をつけて行くんだよ」


「今度は、私ともゆっくりとお茶をして頂きたい。ホグマイヤー様にも宜しくお伝え下さい」


「はい。では、また。転移」



私は靴を鳴らすと、ゼンさんの所に転移をした。


次回投稿は木曜日です。


いいね、ブックマーク、☆、有難うございます。感謝感謝です。



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