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モラクスさんと新しい契約者

「じゃあまたね」


「はい、ロゼッタ様。今度はサイパーに遊びに来て下さい」


「うん、ゼンさん、また」


「・・・また」



酔いつぶれたクリスさんとベンさんをレイ君とお世話して、レイ君とゼンさんに別れを告げると、私は夜のうちにゼンさんの家を出発した。


ゼンさんの家から北に進んだ所に夜にしか採取できない「夜光草」がある事を思い出し、王都に帰る前に採取していく事にしたのだ。


ゼンさんの家からフォルちゃんに乗ってしばらく走ると、山が見えてきた。山に入ると切り立った崖が見えた。そしてその崖の部分に目当ての夜光草はあった。


日当たりのいい崖の中腹に生えている夜光草。夜に採取するのは困難な薬草だ。


「普通はね。でも私には夜だって崖だって平気よ」



フォルちゃんを降りて、杖を出して振ると、階段を出していった。


「さ、光っているから分かりやすくていいわよね。採取場所が崖の中腹。採取時間が夜中。ふっふっふ。私にはそんな事は関係ないけどね!!」



私はスタスタと階段を上っていき、崖の中腹迄いくと、柔らかく光る夜光草の採取を始めた。



「ラクチン、ラクチン、アルちゃん、少しだけ残して採取していってね」


「了解」


長い鞭をだして、夜光草を採ってはパクリとアルちゃんは食べていく。


「フォルちゃんは一応、防御膜ね」


「りょうかーい」


高価な薬草をたんまりと採取すると、私はホクホクしながら崖下まで降りていった。



「ふっふっふ。他にも何かあるかしらね。アルちゃん達ー、何か見つけたらちゃんと採取しといてね?」


二匹は頷き、アルちゃんが私の側に残り、フォルちゃんは魔物を見つけたら狩って来る、と言って出かけて行った。


私は手当たり次第珍しい実や、草を採取して、後でランさんに鑑定をして貰う事にした。


「どうせ王都に戻るから、ランさんにお願いしよう。良い物があったらいいな」


アルちゃんは普段使う薬草や毒草は覚えているので、より分けて採取している。



「アルちゃん、偉い。私が採取したのも仕分けして保管しておいてくれる?ランさんに鑑定をお願いする時に混ぜて出したら叱られそう」


「もうしてる」


「流石、アルちゃん」



私が偉い、凄い、流石と褒めながらアルちゃんの頭を撫でると眼を細めて嬉しそうにペロリと舌をだした。



「私ももっと勉強しなきゃだめね。魔女っていうとなんでも出来ると思われるもの。うーん。私が得意な事で・・・、あ、クリスさんが言ってた無詠唱がいいかな。ふむ。無詠唱で強力な魔法が使えたら、相手に防御の時間を与えなくていいわね、それに薬作りに役に立ちそう」


ふむ。と考えて、私は近くに落ちていた木の棒で地面にがりがりと、攻撃する絵を描いていく。


「こう。相手が私の声に気付かずに攻撃出来るってことだから・・・」


私が杖を振って火球を出し、魔物に攻撃をしている絵を描きたかったが、スライムがスライムを出してスライムにぶつける絵になってしまった。



「相手が魔物でも、人間でも、無詠唱での攻撃は絶対的に優位なんじゃないかしら。今迄は、力がとにかく弱くなるという理由で呪文を唱えるのが絶対だったけど、()()って誰が決めたのかしら」


私は人間が私に向かって水矢を出している図を描いて防御膜で守っている私を描き足した。


スライムが大きなスライムの中にいて、外からのスライムに棒が投げられている図になった。



「そう言えば、アルちゃん達も無詠唱?」



私がアルちゃんをみるとアルちゃんはせっせと薬草や木の実を採取してはパクリパクリと食べていた。



「魔物も攻撃魔法を使ってきたりする・・・。そうだ、無詠唱だ」



魔法をよく使うリッチや、火を吐くリザードをガリガリと描き足した。



「師匠は無詠唱が得意?師匠は魔物に近いと言う事?え・・・。まあ、師匠だからなあ・・・」


師匠の絵を描き足そうとした所で訳が分からなくなってしまって、ぐちゃぐちゃと絵を潰していった。


「とにかく、私も得意な事を増やした方がいいわね。雷落とすだけじゃあね。師匠みたいになんでも出来るようにならないと」



ぶつぶつ言って杖を振って、風魔法で高い木の枝に巻き付いているツタの葉をちぎっていった。


近くに隠れていた魔物は私が攻撃する前にアルちゃんが鞭で仕留めて飲み込んでいた。


採取を終えると、フォルちゃんが大きな鹿の様な魔物を咥えて戻ってきて、アルちゃんの前に差し出して食べて貰っていた。


「さ。そろそろいいかな」


「ロゼッタ・・・。モラクスが会いたがってる」



困った顔をしたアルちゃんがモラクスさんの本をペッと吐き出した。



「あらら。王都迄待てないのね。フォルちゃん防御膜をもう一段重ねて掛けて。私も重ね掛けしよう」



厳重に防御膜を掛け終わると、私はモラクスさんの本に魔力を流してモラクスさんを呼んだ。



「モラクスさーん。どうしました?珍しいですね?」



本に魔力が流れると、モラクスさんが「やれやれ」と言いながら出て来た。



「賑やかに遊んでいたようだな。でな、王都に戻る前にお前に紹介したい奴がいる。あと、ハンカチの件を教えてやろうかと思ってな」



ニヤリと笑って、アルちゃんが出した椅子に座ると、モラクスさんは手のひらからお酒とグラスを出して飲み始めた。


「ふむ。名無しの薬局の中が嫌だったのですか?なんだか嫌な予感しかしませんが。まあ、私も聞きたい事があるので、コロン領のお菓子と、本、アクセサリーでどうぞ?」


「よかろう」



マジックバッグから出したお礼の品を手のひらを向けて、消すと、モラクスさんは話し出した。



「まずはハンカチの呪いの件だが、もう呪いの大元は消滅している。呪物があっても意味はなかろう。心配は不要だ」


「ハンカチ探しはしなくてもいいのですか?」


「したいならしろ。まあ、力はなくとも、呪物には新しい呪いが入り込みやすい。回収した方がいいが、お前に危険性は無いな。新しい呪物になる可能性はあるが」


「ふーむ。じゃあ、一応、見つけられたらいいな、ぐらいでいいんですね?見つけたら教えて貰うようにお願いはしているのですが、その情報も教えておきましょう」


「好きにしろ」


モラクスさんはグラスに入ったお酒を一息に飲むと、また新しいお酒をグラスに注いだ。


「それにしてもモラクスさんが教えてくれるなんて。急ぎでもない情報なのに」


「これはついでだ。でな。ハンカチの呪いでな、我に(しもべ)が出来た。ソイツがお前の側で働きたいと言っている。ただ、お前と契約を結ぶ前に我の(しもべ)として薬局の中でソイツを出していいのか迷ってな。使い魔とも違うからな。お前との絆がな。複雑になってしまう。ジュリエッタとお前の防御膜に弾かれたら、我がソイツを出した瞬間に燃え出すかもしれん」


「え。なんだかヤバい感じの方ですか?」


くっくっくっと、目を細めて笑うモラクスさんは楽しそうだった。


「お前の下で働きたいと言っているんだ、お前の好きにしてくれ。出すぞ」


「あ。断るのは無しなんですね」


「おい、出てこい」


モラクスさんが手のひらを上に向けると、手のひらから金色のモヤが出てきて、その中から、小さなハリネズミが出て来た。





誤字報告、いつも有難うございます。次の投稿は木曜日です。

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