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夜の森を上から見ましょう

少し長いです。

アランさん達の声と足音に気付きフォルちゃんが辺りに掛けていた防御膜を解くとすぐにアランさん達が戻って来た。



「ジェーン様、罠を仕掛けてきました。帰りに一角ウサギが一匹出たので仕留めて来ました」


「おかえりなさい。ご飯の準備は出来ていますよ」


「うわあ。すごいですね。これはアル殿でよろしいですかね?」



アルちゃんが頷き、アランさんの前に出てパクンと一角ウサギを飲み込んだ。



「相変わらずお見事。冬苺がありましたよ。アル殿、食べますか?」


ジャックさんがアルちゃんに冬苺をあげようとしていると、フォルちゃんがしっぽを振って「僕もー」と言ってジャックさんに体当たりをしていた。ウェルちゃんも「苺なら頂くわ」と言ってジャックさんの頭にとまった。


「沢山あるから!フォル殿、それ、俺の手!食べないで!!」


「ごめーん」と言っているフォルちゃん達の様子に笑っていると、テントと準備されている料理にアランさん達が驚いてくれた。



「すごい。向こうからじゃ見えなかったけど、ここに入ったとたん、暖かいし、いい匂いもする」


「すげ。おい、料理が出来てる。本当に外で料理が食えるのか」


「東の森にいるなんて信じられないな。このテントは最新の物ですね」



ジャックさんがフォルちゃんに勧められながら椅子に座り、皆も辺りを見回しながら用意した椅子に座っていった。



「ジェーン様、このテントを使わせて頂いていいんですか?」



アランさんがテントを見ながら私に聞いた。



「ええ。寝袋も中に準備しています。テントの中にある物は好きに使って下さい。アランさん達用のテントは二張りです。そちらの二張りを好きにどうぞ。フォルちゃん達と私で交代で防御膜も掛けます。ちょっと試したい薬もあって、魔物よけの薬もこの辺には撒きました。この辺りは安全です。後で水辺に行って水も少し回収しますが、今はゆっくり食事をしましょう」


「では。遠慮なく」



アランさんが嬉しそうに返事をし、マークさんが私の隣に座った。



「ジェーン様。お元気そうで良かった」


「元気ですよ。マークさんもいつも手紙を有難うございます。御守りもつけてくれていて嬉しいです」


「ジェーン様も」



マークさんは私の杖を指さして、守り石を嬉しそうに見ていた。



「皆さん、冒険者ランクアップ、おめでとうございます。皆さんにプレゼントを持ってきました」



私はそう言うとマジックバッグから四つの袋を出して、皆に渡していった。



「え?いいんですか?以前もポーションを頂きましたが?」



マークさんはそう言いながらも嬉しそうに受け取ってくれた。ソワソワしていて中身を確認しようか迷っているようだ。



「では、今回は再会を祝してのプレゼントです。開けて下さい」


「遠慮なく」



アランさん達が中身を見て喜んでいるなか、マークさんは袋をジッと見て「イニシャルも入れてくれたんですね」と言って自分のイニシャルの刺繍を手で触っていた。



「おお、有難い!やっぱりポーションは一番だよなあ」


「あれ?これはマジックバッグですか?」



私が皆に贈ったのは祝福を掛け少しだけ容量を大きくしたマジックバッグ。


良い物をプレゼントしたいけれど、良すぎる物を上げると他の冒険者達から妬まれるかもしれない。


師匠からも、「身の丈以上の物を相手に贈るのは悪趣味だ。まあ、お前の気持ちも分からんではないが。適当にしろ」と言われた。せっかくコロン領に行って会えるんだし、再会を祝ってちゃんと贈り物をしたい。で、考えたのがこのバッグだ。


ポーションバッグを作っていた物に少しだけ容量を多くして、見た目の二倍程の物を入れれるようにした。元のバッグが小さいものだから二倍といっても、中に携帯食料、傷薬、石鹸にポーション、のど飴に包帯等を一つずつ入れたら一杯になる。


このバッグにサミュエル君に急いで皆の名前のイニシャルと、杖に黒い角をワンポイントで入れて貰った。


この贈り物で、一番大変だったのは急な仕事を振られたサミュエル君だと思う。


「ごめんね、サミュエル君。無理ならちゃんと断ってね?これは私の個人の注文だから」と言ったら「簡単な刺繍ですし、イニシャルなら大丈夫です!ロゼッタ様の注文なら喜んでいつでも受けます!!」と元気に返事をしてくれる。


なんていい子だろう。


サミュエル君にはお土産を沢山送らないといけない。



「少しだけ容量を多くしています。そして祝福を掛けていますので、少しですが皆さんの力になると思います。怪我しない様にって言っても難しいでしょうから、命を大切にして下さい」



私の言葉に皆がバッグを持って礼をしてくれた。



「薬の注文は名無しの薬局にいつでもどうぞ。ランさんがいつでも注文を受け付けます。さ。料理を食べましょう!三匹が警護をしてくれるので、ゆっくりと食べて下さいね。ホットワインも作りました。あ、夜中に一度辺りを歩き回りたいので、程々になりますが」


「喜んでお付き合いします」



マークさんはニコリと微笑んで、私が渡したカップを受け取ると皆に注いでくれた。



「さあ、黒い角の冒険者ランクアップと、久しぶりの再会に乾杯!」


「「「「乾杯!!」」」」



アランさん達は私が作った料理を、「美味い!」「本当!美味い!」「うん、美味いです!」「マジでマジでマジ美味い!」と、語彙力が崩壊しながら食べてくれた。


食事は面白可笑しくパーティーの失敗話を話すジャックさんの話を聞いたり、パンデさんが実はランさんに振られていた事等を聞いてびっくりしたりした。



「ラン様だけ、コロンに定期的に何度か来ていたでしょう?一度振られた後も、二度程告白したんですけどやっぱり振られました」


「わあ」


「ラン様、お付き合いしてる人いますか?もう一回告白しようかなあ」


「おお。うーん、お付き合いしてる人は私の知る限りいませんけど。ランさんファンクラブみたいな人達がいて、いつも何か貰ったり、挨拶のように告白されていますよ」


「ああ・・・。そうだよなあ・・・。でも、それならやっぱりしようかな」


「パンデはチャレンジャーです」



食事を終え夜が更けて、私達は二組に分かれて付近を見回る事にした。


アランさんから、「私と使い魔達がいれば魔獣は逃げるかも知れないが、別れて行動すれば遭遇する」と言われ、私とアルちゃん、フォルちゃん、マークさんの魔術チームにアランさん、パンデさん、ジャックさんにウェルちゃんチームに分かれて森を見回る事にした。


アランさん達の上をウェルちゃんは少し離れて飛んでついて行くのを見送ると私とマークさんは一緒に歩き出した。



「凄い、夜の森って雰囲気が変わりますね。魔力がしっかり流れているのも分かりますし、生き物の視線が痛い・・・」



私が小さな声でマークさんに話し掛けると、マークさんは杖を握り直しながら頷いた。



「ええ。魔獣は夜間の活動が活発です。おそらく、魔力が夜の方が満ちる為だと言われますが、何故そうなのかは分かってませんよね。それにしても、魔力もしっかりと視えるのですね。私には感覚でしか分かりません」


「魔女になってから、魔力の流れが分かりやすくなってきました。それに、転移も出来るようになったのですよ?今度からコロン領にもすぐに来ることが出来ます」


「転移魔法を?流石ですね。風魔法はどうですか?そよ風は上手くなりましたか?」


「任せて下さい!フォルちゃんが風魔法得意なんですよ。一緒によく練習しています。アルちゃんが鎌風の練習に付き合ってくれますし、ウェルちゃんのおかげで・・・、そうだ、変な風魔法を編みだしたんです。名前は適当に着けたんですけどね。森の探索を上からしましょう。びっくりするかな。空の階段」



杖を振り透明な階段を作り、分かりやすい様にもう一度杖を振って階段に魔力を追加すると、蜂蜜色に優しく光る階段が出来た。



「初めて作った時は透明だったので、分かり辛かったんですよね。色を着けたら綺麗でしょう?さ、ちょっと空中散歩しましょう。ふっふっふ。大丈夫、怖くないですよ」



私が手を出すとマークさんは恐々と私の手を握ってゆっくりと階段に足を掛けた。



「もう少し上まで登って、森を見下ろしてみましょう。大丈夫です。フォルちゃんが防御魔法も掛けてますから、落ちても怪我しませんよ。それにしても色々な魔物がいるようですけど出て来ませんね。私を視てるのは分かるのに」


「凄い・・・。風魔法を魔力で固めているのか?いや、魔力自体を練って風魔法を?風魔法と何かを合わせているのか?どういう原理なんだろう?」



マークさんは階段を興味深そうに見ながら登り、一番上の段を広く作ると私達はそこに座った。



「よく考えたら、夜の森を上から見たって何も分かりませんね。ただ、空が広くなって凄く星は綺麗ですが」



私は意味のない空中散歩になってしまったかと、マークさんに申し訳なく思った。



「ジェーン様はどんどん凄くなりますね。これはどうして浮いているんですかね?ああ、そこが風魔法なのか・・・。置いて行かれない様に私は必死ですがあまりにも高見にいられるので、もう、眩しくて仕方がないです」



マークさんは空を見て、杖を振ってゆっくりとそよ風を起こした。



「ジェーン様。ジェーン様に頂いた守り石、これは私の宝物です」


「私も着けてます。風魔法も上手くなったでしょう?最近はレオナルド王子様のレポートを読んだり、魔法使い様にも鍛錬に付き合って頂いたりするんですよ。鎌風に火魔法を混ぜて炎の竜巻の様なものも作れるようになりました。ブール領で、魔術士と治療師の中級本も購入しましたので、魔術の座学を頑張ります。薬学の勉強も、し直します。どんどん、分からないことが増えるんですよ。それに師匠の説明じゃ分からないことが多すぎるんです」


「・・・本当に凄いな・・・」



マークさんは杖を振って、空の方に魔力を飛ばした。マークさんの魔力が夜空にキラキラと光って弾けた。



「ジェーン様は星の様です。見えるのに、届かない。光っているのに優しくて、でも、遠い。暗闇を優しく照らす人です」


「そんな事。今日は久しぶりにロンに会いました。コロン子爵に会いに行くって言ったら、「鞭をうちに行くのか」って聞かれましたよ。ふふふ、冒険者ギルドでの事、懐かしいですね」


「・・・。はい。本当に。ジェーン様、貴女は本当に素晴らしい人です。美しくて、気高くて、とても優しい」



マークさんは私の方を見ると、杖を振った。



「褒めすぎです」



辺り一面に綺麗な魔力粒子がキラキラと散っている。私の周りがマークさんの粒子で綺麗に光った。



「ジェーン様。私は初めてお会いした時からずっと、ジェーン様の事をお慕いしています。魔女様であることも尊敬しています。ジェーン様には何一つかないませんが、私はジェーン様のことが好きです」



マークさんは私をまっすぐ見つめていた。




今年も宜しくお願い致します。次回の投稿は金曜日です。

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