コロン領到着
ブール領を出てコロン領に入ったのはお昼前頃。
多分、凄い早いと思う。
本気を出したフォルちゃんは凄かった。風魔法と身体強化を上手く使って身をかがめてシュタタタタ!!と早く走ったり、ポーンっと高くジャンプしたり、楽しそうに駆け続けた。
風の影響もなく私はアルちゃんに縛られてフォルちゃんから落ちずに済んだのだけれど、楽しめたのは最初だけ。暫くするとフォルちゃんに酔った。
風の影響がないのがかえって悪かった。
酔ったと気付いた時には、ご機嫌なフォルちゃんを止めるのは不可能な状態で、頭がぐわんぐわん揺れていた。
「もう駄目だ、ごめんフォルちゃん。後で綺麗に洗うからね」と言った時にコロン領の門が見え、「ロゼッター、着いたー」とご機嫌な声で門の前で降ろされた。
「う・・・ちょっとウェルちゃん、水魔法と風魔法掛けて。うぷ。ギリギリセーフだわ」
「あら。大変」と言いながら、ウェルちゃんにピピピと言われながら回復魔法を掛けて貰い、乗り物酔いの薬をアルちゃんに出して貰って飲んだ。
「ふう・・・。コロン領で早く仕事を終わらせましょう。ゼンさん、薬効いたかしら」
コロン領の入り口の門を潜ろうとすると門番さんが慌てて「お待ち下さい!魔女様!?」と言って止められ、門の上からも警備の人が走って降りて来た。
「どうもお久しぶりです。宵闇の魔女になりました。皆さんおかわりないですか?」
「うわあ!!ちょ、ちょ、ちょっと待ってください。魔鳩!!魔鳩飛ばすんで!!」
警備隊の人は忙しく礼をして、急いで魔鳩を飛ばすともう一度深く私に礼をした。
「どちらへ?ご案内は必要ですか?」
「いいえ。大丈夫ですよ。このまま冒険者ギルドへ向かいます」
私はヒラヒラと手を振って挨拶を終えると、以前訪れた冒険者ギルドへとむかった。
「どうも、こんにちは」
挨拶をして冒険者ギルドに入ると、奥から所長が手紙を握りしめてやって来た。
「魔女様、お久しぶりでございます。魔女のお披露目を終えたとの事、おめでとうございます」
「有難うございます。宵闇の魔女となりました。これからも宜しくお願いしますね。で、早速ですけど、王都の薬師長から依頼が来てませんか?」
「はい、東の森の定期調査の依頼が来ております。派遣職員と一緒に冒険者との調査となっておりましたが、もしかするとその職員とは宵闇の魔女様の事で?」
「そうでしょうね。調査は出来れば明日の朝からお願いしたいのですけど、どうでしょうか?」
「かしこまりました。以前、調査を一緒にした、アラン達「黒い角」で宜しいでしょうか?マーク、ジャック、パンデと、メンバーも変わっておりません」
「宜しくお願いします。朝八時に冒険者ギルド前で待っています。あと、コロン子爵は今日はお屋敷にいますかね?挨拶に伺いたいのですが」
「どうでしょうか。確認を取るので少々お待ち下さい。その間、前の薬師事務所に行かれますか?」
「そうします。じゃあ、また来ますね」
私は礼をしている人達に頷くと、冒険者ギルドを出て目の前の薬師事務所に入った。
「お久しぶりです、皆さん」
「魔女様?外が騒がしいと思ったら、魔女様が来られてたんですね!」
受付の人がぴょんと飛んで奥に走っていくと、同じように事務長を引っ張って走って戻って来た。
「本当に魔女様だ。お久しぶりです。いかがされました?」
「東の森の現地調査ですよ。薬師長様からの依頼で私が来ました。皆、元気ですか?」
「は、おかげさまで。ああ、魔女のお披露目おめでとうございます」
「有難うございます。宵闇の魔女となりました。あの、獣人の人用の薬の本や、他国の病気についての薬の本はないですか?メリア国が近いので、メリアの物でもいいですが、出来ればアルランディの物があれば嬉しいですね。身分証が必要ならコレ、薬師長からリングを頂きました」
「おお、王宮薬師のリングですな。まあ、それがなくとも魔女様ですしコロンを救って頂いてますので、私の権限で出来る事なら何でも致しますよ。ええっと、獣人用ですか・・・。確かありますが、翻訳されてなかったような。メリアの薬草全集等は奥にあったはず。アルランディの本は王都かホングリー辺境ではないとないでしょう。役に立ちそうな本を持ってきましょう」
私は待っている間にお茶とお菓子を食べ、顔なじみになった薬師さん達に獣人用の薬の事を聞いたり、魔力が多い人の薬の時に気をつけている経験談を聞いた。その後、事務長お勧めの本を購入し、翻訳の本は商人ギルドがいいと教えて貰って商人ギルドへ行き、メリア国とアルランディの言葉の辞書を買い冒険者ギルドへと戻った。
「コロン子爵は屋敷にいらっしゃいました。宜しければ晩餐会に招待したいとの事です。本日の宿が決まっていなければ部屋の準備もしておくとの事です」
「あらら。ちょっと挨拶をしたかっただけなんだけど。じゃあ、街をぶらぶらしてから屋敷に行く事を伝えて下さい。宿は決めてないのでお世話になりたい事と、余計な人は呼ばないでって伝えて貰えます?」
「かしこまりました」
私は再び冒険者ギルドを出てのんびりとコロン子爵の屋敷まで歩いていると、後ろから声が掛かった。
「おーーーい!!魔女様ーーーー!!」
バタバタと走って来たのはロンだった。
「悪ガキのロンじゃない」
「なんだよ、その覚え方。魔女様が来たって聞いて、急いで走ってきたんだぜ。宵闇の魔女様になったんだろ?いつもうちの商品買ってくれて有難うな!!」
「お礼を言えて偉いけど、もう少し言葉使いを覚えなさい。購入いただき有難うございます、でしょ?」
「ありがとうございます。へへへ。久しぶりだな!宵闇の魔女様!!宵闇って恰好良いな!!お披露目、滅茶苦茶凄かったって王都の人が言ってたぜ!!」
ロンは手をブンブン振り回して嬉しそうにしゃべっている。生意気そうな顔も変わってない。
「有難う、ロン。お母様達にもこれからも宜しくと伝えてくれる?あ、ロンの家の店って、野営用の道具って売ってるかしら?それと他国の本も置いている?」
私は、野営用の料理道具を購入したい事を思い出した。
「ああ、コロンで一番大きな店だからな!何でも取り扱ってるぜ!魔女様、うちで買い物するなら案内するぜ!」
「だからあなたは言葉使いを覚えなさい。じゃあ、店に案内して頂戴。買いたい物は野営用の道具と、キッチン用品、それと他国の病気に関する本ね。他にも珍しい物があれば試しに買ってみようかな」
「かしこまりました、魔女様!じゃあ、こちらへどうぞ!!」
ロンは調子よく答えると、店に案内してくれた。そこで私はロンの両親からもお礼をまた言われ、おまけをして貰いながらも野営道具やキッチン道具、綺麗なボタンや古い本等を見つけて購入していった。
「有難う、ロン、良い買い物が出来たわ」
「こちらこそ。すげえな、こんなにポイポイ買って。魔女様って金持ちなんだな。今からは何処に行くんだ?もうちょっと話そうぜ!」
「今からコロン子爵の屋敷に行くんだけど、ロンも暇なら歩きながら話す?屋敷まででいいなら着いて来ていいわよ」
「屋敷に?コロン子爵、悪い事したのか?鞭で打ちに来たのか?」
サーっと顔を青くしていくロンに、アルちゃんがニヤッと笑って、鞭を出して叩くふりをした。
「違うわよ。挨拶と仕事の話と、夕食の招待を受けたのよ。さ、道で喋っていると皆の邪魔になるわ。行くわよ。アルちゃんもからかっちゃダメよ」
私は青い顔したロンの頭をコツンと叩くと、さっさと歩きだした。
「痛え!待ってよ、魔女様!」
いつのまにかロン以外にも子供達がぞろぞろと着いて来て、最近のコロンの様子や店の手伝いの事、友達との事を皆が好き勝手に楽しそうに話していた。
ロン達の話を聞いているとあっという間にコロン子爵の屋敷について、ロン達は門の手前まで来ると、「またなー、宵闇の魔女様!」と言って、走って帰っていった。
今年中にもう一話、投稿できれば・・・。と言う事で、次の投稿は日曜日、大晦日です。