表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

170/237

薬の完成

少し長いです。

「ジェーン嬢!!」


「ロゼッタ嬢!!」



フォルちゃんに案内されて飛び込んで来た二人は私の顔を見ると、大きく「「はーーーーー」」っと息を吐いた。



「二人が材料を持って来てくれたんですか?材料は手に入りました?」



ランさん便ってジルちゃんの事じゃなかったのね、と思いながら錬金釜に魔力を込め、首だけ隊長達に向けて話した。二人は頷いてから、もう一度「はー」と息を吐いた。



「材料は持ってきました。旅に出たとたんラン嬢から緊急魔蝶が届き、ハヤシ大隊長からもジェーン嬢の元へ急ぐようにと言われたので何かあったのかと・・・」


「ええ。何事もないようで安心しました。脱皮したばかりの飛竜の皮ですよね?王宮飛竜舎のアルバルトにもラン嬢から連絡がいっていましたよ。言われたよりも多めに持ってきました」



私は首だけペコリと動かして、杖を振りながらテーブルを指さした。



「心配かけてすみません。ちょっと今、魔力をなじませ中で手が離せないのです。そこに材料を置いて貰っていいですか?フォルちゃん、飛竜の皮を風魔法で細かくしてくれる?それが終わったら、ゴールドフィッシュを生きているうちに鱗をはいで。鎌風を細かくゆっくり使ってね。鱗は死んでしまうと色が変わってしまうの」


「外に置いているので、持ってきます」



ジロウ隊長が廊下に出て、桶を抱えて戻ってくるとフォルちゃんの前に置いた。私の指示に頷いて動くフォルちゃんを見ながら、ジロウ隊長とハワード隊長は手伝いを申し出てくれた。



「何か手伝えますか?」


「自分も。寄り道許可が大隊長から出てますから、時間はあります。ロゼッタ嬢の任務は最優先と言われてますからね」


「二人共有難う。この薬をとにかく急ぎで作りたいので助かります」



私は材料の星の砂を出すと、材料を薬研に入れた。



「では、ハワード隊長はこれをすりつぶしてくれます?ジロウさんはコレでこっちを混ぜて下さい。二人共魔力は出さないで下さいね。私、その間に残りの材料の計算しながらご飯食べちゃうんで。ランさんがいないとこういう所が大変だ・・・」


「「は」」



私は柄杓をジロウ隊長に、薬研をハワード隊長に渡すと、食事を急いで食べながら頭をひねりながら本を開いた。


「この計算で合っているはずだけど。魔力量をこれくらい入れるとして、身長はどれくらいなんだろう?フォルちゃんどう思う?ゼンさんフードで高く見えるけれど、二人と一緒位よね?」


私がゼンさんの身長と体重を考えフォルちゃんに聞くと、フォルちゃんは首を傾げて二人を見た。



「ジローとライライの間位?」フォルちゃんは二人を見ながら考えている。



「フォルちゃん、二人と仲良しね?そうね。多分、そのくらいよね。ジロウさんとハワード隊長の体重を聞いてもいいですか?参考にしたいので」


「体重ですか?自分は70キロは超えてましたね」


「私は73キロです」


「ゼンさん、二人より痩せてるわよね。もう!ローブでよく分からないわね。フォルちゃんどう思う?」


フォルちゃんは首を傾げて「ジローとライライより大分細いと思う」と言った。


「ふむ。二人共筋肉質なのか。うーん。参考になったような、ならないような」



私とフォルちゃんが話していると、ライライ・・・。と呟いていて、ジロウ隊長は笑っていた。



「隊員は体重が見た目よりもあります。ハヤシ大隊長は自分よりも重いでしょう。身長が似たような細身の文官は隊員より10キロは軽いですね」


「成程。では、60㎏から65㎏で計算しよう・・・。難しいな」



おおよその体重から薬の計算をし、フォルちゃんが細かくした材料の確認をした。私は急いで食事を詰め込み、計算を終えた。



「ああ、うん、フォルちゃん鱗をもう錬金釜に入れて。ジロウさんはそのまま混ぜて下さいね。ハワード隊長、もう少し細かくすりつぶして下さい。手で触ったらさらーっとなるくらいです」


「「は」」



私はお茶を一気にゴクゴクと飲むと、杖を握った。



「ぷは。さ、ではここからは私が。ジロウさん、代わります。フォルちゃん残りの材料を入れていくわよ。色が変わったら入れていってね」


「まかせて」とフォルちゃんは頷き、風魔法で浮かせて錬金釜の近くで材料を待機させた。


「じゃあ、一気に行くわよ。クリスさんの材料もすぐに届くといいんだけど」



私は魔法陣を出し、杖を振り、魔力をドンドン注ぎながらくるくると錬金釜を混ぜた。淀んだこげ茶色から魔力を一気に流し込むと明るい茶色に変わり、魔力を入れると黄色に変わった。さらに材料を入れて魔力を注ぐと魔力が溢れ出し辺りを蜂蜜色に染めながら、錬金釜の中は黄緑色になっていった。


「ふうう」っと私が息を吐くと、いつのまにか夕食の準備がされて、材料や本等で散らかしていた室内は綺麗にされていた。



「ロゼッタ。アル、ウェル、帰ってくる」


フォルちゃんが部屋の隅を見た瞬間に魔法陣と共にクリスさんが現れた。



「やれやれ、遅くなった。待たせたね。一羽でいいのか聞くのを忘れて、二羽狩ってきた。生け捕りにしているよ」


「クリスさんよかった。薬は多めに作れますね。アルちゃん、一気に捌くわよ」


「任せろ」とアルちゃんは闇魔法を出すと、スノーバードを包みこんだ。


「肝を取り出して計りに乗せて。えーっと、ちょっと多いわね。うん、その量を錬金釜に入れて」



私が錬金釜に魔力を注ぐとクリスさんは「ふー」っと言って椅子に座った。



「久しぶりに狩りをしたよ。傷をつけずに生け捕りは難しいね。君達がいてくれてよかった」



クリスさんはアルちゃんとウェルちゃんに微笑むと、ジロウ隊長達の方を見た。



「おや、君達にも迷惑を掛けたのかな?」


「いえ、迷惑などは。手を貸して欲しいと頼まれただけです」



クリスさんは頷いて錬金釜を見た。



「ロゼッタさんが錬金釜を持ち歩いていて良かったよ。底の所に魔術式を組んだ板を貼りつけているんだね?ああ。お披露目の時に行っていた火と風の魔法の物か。ああ。凄いね」



私は頷いて、魔力を出すと、一気に薬を完成させた。



「よし。出来ましたよ。クリスさん。すぐに持って行って下さい。一か月分作っています。薬の飲み方の説明書はコレです。あと、この小匙も使って下さいね。薬は涼しい所で保管するように言って下さい。症状が和らいだら次は違う薬になりますから。早くて次の日、遅くても飲んで三日で効果が出るはずです。何も変化がない時は教えて下さい。私、コロン領の仕事が終わったら、ゼンさんの所に行きますから」


「分かったよ。心配させてすまないね。ゼンは自分の事は何も言わないからね。今回はゼンのトモダチが教えに来てくれたんだ。ロゼッタさんの薬があればきっとよくなるよ」


「はい。ゼンさんにすぐに行くって伝えて下さい。ウェルちゃん達はゼンさんの魔力を覚えてるわよね?」


私がウェルちゃん達を見ると皆が「「「勿論」」」と頷いた。


「すぐに飛んで行くって、伝えて下さい。絶対よくなってって。私、ゼンさんに言いたい事も聞きたい事も一杯あるんですから、家から出ない様に縛り付けて置いて下さい」


「ははは、ロゼッタさんの言う通りにしよう。ロゼッタさん、有難う。ジロウ君もハワード君も有難う。お礼はまた今度させて欲しい。では失礼」



クリスさんは薬を持つと杖を振って、消えた。


私がドサリと椅子に座ると、お茶が前に出された。



「お疲れさまでした」



ジロウ隊長がお茶を淹れてくれ、ハワード隊長が魔鳩を飛ばしていた。



「すみません、急に」


「いえ、とにかく無事でよかったです」


「ええ。お二人が材料を持って来てくれて助かりました」



ハワード隊長はじっと私を見た後にふっと笑った。



「また、何かあったら私を頼って下さい。それと謝罪を受け取って欲しいです。先の事件では役に立たず、私のせいで嫌な思いをさせました。申し訳ありませんでした」



ジロウ隊長はハワード隊長を見て頷いた。



「ロゼッタ嬢。自分の事でロゼッタ嬢に辛い思いをさせてしまいました。申し訳ありませんでした。今回、頼って頂いて嬉しかった。またいつでも頼って下さい」


「そんな。二人共顔を上げて下さい。手紙で謝罪はしっかり受け取っています。私がウダウダしていただけですよ。私こそ、引き籠ってしまってましたから。心配もかけてすみません。今後も頼らせて下さい」



ハワード隊長とジロウ隊長は顔を下げていた頭を上げた。



「ああ。よかった。本当に」


「自分も。薬も無事に作れてよかったですよ」



私は椅子に深く座ると、ホッとして、瞼が重くなってきた。


流石にゼンさんの薬を作るには集中力と魔力が大量に必要だった。


温かいお茶を飲んだら、もう、二人の声が遠くに聞こえ出してきた。



「ええ。私はジェーン嬢の手足になれるのならそれだけでいいですよ。例えそれが誰かの為であったとしても。ジロウ隊長は必要ありません」


「あー。ハワード隊長の手足だけじゃ足りないと思いますよ?スレイプの方が飛竜よりも便利な時がありますし。手と足だけじゃなく、私はロゼッタ嬢の眼となり耳にもなりますし」


「な!!山や湖を超えるのは飛竜の方が早いでしょう!それに遠くも見渡せます!私だってお役に立てるのならばどんな材料だって手に入れますよ!ジロウ隊長の出番は必要ないかと」


「まー、決めるのはロゼッタ嬢ですから。自分はいつでも頼って頂ければそれで嬉しいですが」


「む。確かに。・・・ジロウ隊長。どんなに可能性が低くても私は諦めませんよ。ジロウ隊長が頼られる()()をお望みで、戦線離脱をするなら歓迎しますが」


「あー。自分も別に()()のつもりはないですけどね。ただ、嫌がる事も悲しむ顔も見たくありませんし。まあ、相手がハワード隊長なら絶対譲りませんがね!!」



私はそう言い合う二人にアルちゃんがお菓子を出して持たせ、「黄色いの、黒いのご苦労。じゃあな」と言って二人を部屋からぽいっと出し、ドアを閉めていたと言う事を、次の日にウェルちゃんから聞いた。

次の投稿は月曜日です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ