表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

166/237

旅の一日目

私は冒険者ギルドを出て、歩いて五分程の場所にある薬師事務所に行く事にした。


薬師事務所の後は、ブール領を見て回りたい。


美味しい物とか、珍しいお菓子とか、可愛い雑貨とか、珍しい材料なんかを見て回りたい。



「美味しい物を買いましょうね」


アルちゃんが「おやつ?」と聞き、フォルちゃんが「僕、揚げパン」と言うと、ウェルちゃんがフォルちゃんの上にとまって、「私、果物」と言って嬉しそうに鳴いた。



「美味しい物があるといいわね」


アルちゃんが「お仕事いいの?」と言った後に、フォルちゃんが「僕、リンゴ飴でもいいな」と嬉しそうにしっぽを振った。ウェルちゃんが「コロン領は?」と聞く。皆が一気にしゃべるので、大変だ。


「うん、大丈夫。フォルちゃんに乗って、早くブール領迄来れたしね。薬師長も「急がなくていいよ。魔鳩で時々連絡をくれたらいい」と言ってたし。薬師長にお土産を買ったら問題ないと思うわ」



アルちゃん達はコクリと頷くと、何が欲しいか、何を食べたいかをその後もにぎやかに喋り出した。


私も頭の中でお土産リストを作成していると、私の周りに人が大勢いる事に気付いた。


冒険者ギルドを出た時から、遠巻きに大勢いるな、とは思っていたけど、私が動くたびにぞろぞろついて来る感じだ。


「あらら。面倒ね」


「食べちゃう?」とイライラした様子のアルちゃんが鞭を出して、闇を辺りに出していった。



「アルちゃん、ダメよ。かかってきたら食べていいわ。多分、珍しくて見たいだけだと思うから」



アルちゃんが私の肩の上で頬を摺り寄せ、「うざい」と目を細めて周りを見て、フォルちゃんが大きな姿のまま「僕がパックン出来ないかな?」と、口を大きく開けた。「ふふふ、食べてみたら?」と、ウェルちゃんも身体をいつもの二回りは大きくして私の側を飛んだ。



「皆、そんなに威嚇しなくても大丈夫よ」



そう言ったのに、アルちゃんが大きな鞭を出して辺りをバシンっと叩きつけると、集まっていた人は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。


自慢げに私を見るアルちゃんは舌をチロリと出している。


「ま、いいでしょ。とにかく先に薬師事務所に行くわね。その後、お菓子を買いましょう」



私達は人がいなくなった道をのんびりと歩き、薬師事務所のドアを叩いた。



「こんにちは」



薬師事務所に声を掛けながら入ると、受付の人が目を丸くして私を見た。



「ようこそ・・・。ブール領薬師事務所へ・・・」


「どうも。ポーションの材料を買いたいのですが」


「あ。はい。えっと、身分証を見せて頂いていいですか?」



私は薬師カードを出そうとして、首から下げていた薬師長から貰ったリングを思いだし、受付事務員さんにリングを見せた。



「王宮薬師棟のリングですね。はい、どうも、お預かりします。魔女様じゃないのかな・・・」



事務員さんはぶつぶつ言ってリングに光魔法を当てた。すると、カウンターの後ろの壁に「宵闇の魔女 ロゼッタ・ジェーン 特別王宮薬師」と影が映し出された。



「やっぱり?マジかー。宵闇の魔女様?はい、確認を取れましたので、奥を自由にお使い下さい。ポーションの材料の購入希望ですか?うわー。うわー。スゴー。握手とかありですか?」



リングを返して貰いながら、差し出された手を握ると、「わー。自慢出来るー」と言って、カウンターの後ろからポーションの材料を出していった。


私は王宮特別薬師の言葉が気になったが、きっと、薬師長が付けてくれたのだろうな。



「王宮薬師の方は材料を二割引きします」


「王都で買うより安い物があったら出して下さい。請求書は名無しの薬局、魔女・ロゼッタ・ジェーンでお願いします」



私は二割引きと言う言葉に飛びつき、よく分からない材料や仕入れたがあまり売れなかった物等を買っていった。自分で使わない分は名無しの薬局の名前が入っていれば請求書をランさんに回しても怒られないと思う。きっと上手く処理してくれるだろうと、明日にでも作った商品と一緒に送る事にした。



「そうだ。買い取りもあるんですよね?」


「え!魔女様の?名無しの薬局の物なら何でも買いますよ。ポーションありますか?王都で有名な石鹸も売って欲しいです、香り付きの」


「では、ポーション20本、石鹸はこんな感じで」


「石鹸は、ローズを多めに売れますか?価格は名無しの薬局で売られている価格で買い取りでも宜しいですか?こちらで売る時は10%上乗せさせて売らせて頂きます。それでも買いたい人は多いと思います。私も買いたいですから」


「値段はそれでいいですよ。あと、初級、中級の治療の本は置いてないですか?」


「中級までの薬師、治療師、魔術士本はありますよ。宵闇の魔女様は魔術士、治療師カードをお持ちですか?持ってない?お売り出来るのは初級本だけですね。魔女様なら中級も売っても所長にも怒られないと思うんですけど」



事務員さんがこっそり売ろうとしてくれた。



「試験合格者が中級以上を購入できるんでしたよね。上級の本は王都から取り寄せるんですか?」


「ええ、その通りです。王宮薬師棟に上級以上の購入許可証を添付して魔鳩を飛ばします。あまりないですが。でも、「普通は」ですから中級本、売っちゃっていいと思うんですよね。もう、売りましょうか?」


「私のせいで怒られるのはちょっと・・・。そうだ。所長に私が手紙を書いておくので渡して置いて下さい。それで魔術士と治療師の本、初級と中級両方購入させて下さい。免除理由はコレで」



私は「王太子殿下の書類」を見せて、所長宛に「治療師と魔術士の本、売って貰いました。魔女だからいいよね?王太子殿下も許してくれる書類もありますよ」と言う内容の手紙を書いた。



「うわー。王太子殿下の字って綺麗ですねー。コレで、もうバッチリですよ。ここ。ここのカウンターに魔女様のサイン書いてくれません?所長も喜ぶし、絶対文句言われません。何なら、魔力で焼きつけて欲しいです」


私が返事をする前に、アルちゃんが闇魔法で杖のマークと魔女の帽子のマークをカウンターに焼き付けた。



「マジ?マジ?すごー。格好いい。これ、皆が触れないようにしておきますね」



王太子殿下の書類は今後もこうやって使わせて貰おう。


魔女の印を喜んでいる事務員さんから本を買い取り、ポーションを売り、薬師事務所を出た。


そこからは露店でジュースを買ったり、路地のお洒落な雑貨屋さんに入って可愛い雑貨を購入した。


お洒落なカフェでケーキを食べたかったが夕暮れ時になったので、冒険者ギルドに戻ると部屋へと案内され、アルちゃんにモラクスさんの本を出して貰った。



「モラクスさん、魔力あげますね。ブール領に着きましたよ」



杖を降って魔力を流しアルちゃんに本を戻すと食堂から食事が運ばれてきたので食べ、ベッドに横になっていると、疲れていたのかそのまま眠ってしまった。


こうして私の旅の第一日目は無事に終わった。

次の投稿日は月曜日です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 旅は初っ端から波乱万丈な様子のロゼッタちゃんw ロゼッタちゃんを知る人達は「大丈夫!・・・大丈夫か・・・な?」という心境でしょうか (^^;) まぁ、旅は始まったばかり…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ