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ブール領の冒険者ギルドへ

休憩を終え火の始末をし、私達は出発した。


私はナッツたっぷり携帯食料を手に持つとフォルちゃんに乗った。



「レンクさん、体調は悪くないですか?これからは魔法を使って一気に進もうと思います」


「魔法で?」


「ええ。では、皆。ドンドン魔法を使うわよ!ガンガン行くわよ!」


私は携帯食料を口に入れ、もぐもぐと食べながら杖を振って皆に魔力を分けた。「全力で走っていい?」「そいつ、落とさないようにすればいい?」「回復魔法ね。私もナッツ欲しい」と皆が嬉しそうに答え、三匹はそれぞれ魔法を掛けていった。



結果。



文字通りブール領まで飛ぶように掛けた。


ウェルちゃんは回復魔法を掛けながら私達の前方を飛び、フォルちゃんは自分とレンクさんの馬に身体強化や風魔法を掛けて楽しそうに飛ぶように走り、アルちゃんは闇魔法でレンクさんをがっしり繋いで振り落とされない様にしてくれていた。


レンクさんも、レンクさんの馬も意外と楽しそうにしていたので良しとした。



「レンクです。通ります」



ブール領の門番さんに驚かれながらもレンクさんの挨拶だけで素通りし、私達はそのまま冒険者ギルドへとむかった。



「すみません、所長。レンクです。今、帰りました」



レンクさんが冒険者ギルドのドアを開けてすぐに大きな声を掛けると、振り向いた人達はレンクさんの声に「おかえりー」とにこやかに振り返った後に、私と使い魔達を見てギョッとしていた。


私はその目線に気付かないふりをしてフォルちゃんから降りた。



「レンク!どうしたの?怪我?そして?」



冒険者ギルドにいた人は一斉に私達に目を向けていた。その中に所長と呼ばれた女性がいて、カウンターの向こうから私達に近づいてきた。



「所長、コボルトに襲われました。仕留めましたが、怪我が酷くて倒れていた所を宵闇の魔女様に偶然助けて頂きました」


「宵闇の・・・魔女様?」



冒険者ギルドが一瞬、シンっとした。



「皆さん、初めまして。宵闇の魔女、ロゼッタ・ジェーンです。コロン領に用がありブール領にも立ち寄りました」


「宵闇の魔女様。ブール領、冒険者ギルドの所長をしております、キャサリン・コーンウェルです。レンクを救って頂き有難うございます。宜しければ、どういう状況であったか知りたいのですが、所長室にご案内して宜しいでしょうか?」


「ジェーン様、頂いたポーションのお代も支払いたいのでお願い致します」


「ええ、いいですよ。では、行きましょうか。でも、レンクさんに治療師をお願いします。私はポーションと使い魔の回復魔法しか使用していませんから。しっかり、治療師の指示を聞いて下さい。薬湯は飲んでますが、血が沢山出ていたのですぐに休まれた方が良いと思います」



所長は頷き、すぐに事務員に指示を出すと事務員は何処かへ行った。



「では、どうぞこちらへ。レンクも私の部屋で話を先にしてしまって。レンク、私が書類を書くわ。宵闇の魔女様、ソファーで横にならせても宜しいでしょうか?」


「ええ。どうぞ」



私は所長に案内されて所長室に入った。「どうぞ、こちらへ」と言われた一人掛けのソファーに私が座り、レンクさんは「申し訳ない」と言いながらも三人掛けのソファーに横になった。


その後にレンクさんがギルド長にこれまでの経緯を説明をして、私は黙って聞いていた。



「・・・と言う事で、そして、今朝、ゾン村からブールへ戻ろうとした所で魔獣に遭遇しました。コボルトです。ただ、普段いないような場所で出てきました。ジェーン様が仕留めたコボルトを回収してくれました」


「アルちゃん」



私がアルちゃんに指示を出すと、アルちゃんは大きなコボルトをペっと吐き出した。所長はドサリと出されたコボルトを見る為に立ち上がり、「これは・・・」といいながらコボルトを見ていた。



「所長。普通の大きさのコボルトではありません」


「コボルトと聞いた時は、団体で襲ってきたのかと思ったわ。この大きさは見た事がない。この一匹だったの?」


「ええ、私を襲ってきたのはこの一匹だけです。すぐに反撃が出来たのは運がよかった。足の傷が深く血が流れ過ぎて、途中で倒れている所をジェーン様に助けて頂いたのです。それに、魔女様はコボルトを五体仕留めています。仲間を呼んで、私を仕留める予定だったようです。本当に運が良かった」



私がアルちゃんを見ると、アルちゃんが頷いて、ペッとコボルトを吐き出した。



「これですね」


「参ったわね。場所はゾン村とブールの間ね?」



所長はコボルトを見てすぐに頷き、ベルを鳴らし事務員を呼ぶと急いで書いた書類を渡した。



「この状況を調べる冒険者を呼んで。ランクはC以上よ。相手はコボルトだけど、亜種だと伝えて。四人以上のパーティで現地調査を。周りの村にも緊急の報告を。村長たちに魔鳩を飛ばして。ブール領主様に緊急の魔鳩を飛ばす準備もお願い。王都の冒険者ギルドにも知らせましょう」



そこまで一気に事務員に話すと、私の方を向いた。



「宵闇の魔女様、誠に有難うございました。代金のお支払いですが少しお待ち頂いても宜しいですか?」


「ええ、ここに渡した物と金額を書いておくので、良ければ名無しの薬局のロゼッタ・ジェーンで振込をお願いします。あと、何処かホテルを紹介して欲しいのです」


「有難うございます。ホテルですか・・・。宜しければこの建物の最上階が特別室になっていますので、そこをお使い下さい。お代は結構です。お食事は食堂でお好きな物を食べて頂いて結構ですが、お部屋にお運びする事も出来ます。すぐに部屋は準備させます」


「あら。ではそうしようかな。では、薬師事務所に行った後、また来ます。それと、薬は如何ですか?ポーションと携帯食料、傷薬をこの価格で二十ずつ買いませんか?ハイポーションも五本迄なら売れますよ」


「喜んで」



所長は私のいい値で商品を買ってくれた。



「あと・・・少し聞きたいのですが、東の森の魔物の時、この辺りの魔物はどうでしたか?」


「東の森の件・・・。魔物の数は一時的に増えました。その後は減って、今は変わらずという感じですけれど?なにか?」


「一年前と最近を比べておかしな事は?」



所長はレンクさんを見て二人は首を傾げた。



「特に気付きませんが・・・」



所長がそう言った後に、レンクさんが少し考えて、「気のせいかもしれませんが」と前置きをして話した。



「所長。青い風のメンバーが、最近駆け出し冒険者達の怪我が多いって言ってましたね?」


「確かに。でも、大怪我ではないし、魔獣とは関係ないような不注意な事だと思うけれど。大きなコボルトの目撃情報も無かったわね」


「勿論、不注意の連中もいます。でも、今回の魔獣も仕留めたと思ったが息がまだあった。今迄とちょっと違う気がしました。コボルトなのに、単体で行動をしていたり。ひょっとしたら何処か別の所からやってきたのかもしれません」


「そうね。暫くはソロの冒険者にはしっかり注意をして貰って近場で活動をして貰いましょう」



私は二人の話を聞いて冒険者ギルドを出たが、なんだか嫌な予感が胸に残った。




次の投稿は木曜日までには・・・。

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