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魔獣との戦闘 

戦闘シーンが少しあります。苦手な方はご注意下さい。

皆を呼び寄せて、ルーカス王子様に貰った地図と方位石を使った。



「魔力をなじませて・・・。この石が付いた鎖を地図の上に浮かべる感じにして・・・。少しずつ動かしていくのかな?王都から東の方へ動かして・・・。あ!光った!よかった!うん、このまま真っすぐ東でブール領ね。ほほう。今はこの辺りなのか」



私達は王都をでて間違いなく東に進み、ブール領と王都の真ん中辺りにいる事が分かった。



「よかった。迷子にならなかった!ブール領まですぐ着いちゃいそう」



私が喜んでいると、アルちゃんがピクンと反応した。



「どうしたの?」



アルちゃんは私の前に出て煙を吐いた。煙の形が五つ、小さな犬型になった。



「前方に敵ね?アルちゃんはこのまま探知して。ウェルちゃんは風魔法で援護よ。フォルちゃんは防御をお願い」



皆が頷き、私はアルちゃんから教えられた敵の数を把握する。


前方に五。犬型の小型の魔獣。小さな影が見えだした。向こうもこっちに気付いているのかな。



「さて、逃げられる前に火球でやっつけようかしら。五匹いっぺんにやっつけるなら大きめの火球を打ち込めば・・・。草原で大きな火球をぶつけたら火事になる?あ、素材が傷つかないようにした方がいいのか。犬型なら、牙と爪は欲しいから、火よりも水魔法で閉じ込めるか・・・。師匠はどうしてたかな」



私はブツブツいいながら杖を出し魔法陣を出すと、目の前に走ってきた小型の犬の魔獣に杖を向けた。来るのが分かっている敵を倒すのは易しい。


魔獣は私達を見つけると一瞬ビクッと身体を震わせたが、そのまま向かってきた。



「かかってくるのね。いくわよ。土壁、鎌風」



私は魔法陣を浮かせて杖を振った。土壁を魔獣の周りに作って逃げれない様に覆うと前から鎌風を放った。


ザシュっと音がした後にゴトゴトゴトっと魔獣が倒れる音が聞こえると辺りは静かになった。



「アルちゃん、確認をして回収をお願い。ウェルちゃん、辺りを少し見て貰える?魔獣が向かっていた方向をお願い」



ピピピと鳴いてアルちゃんは飛んで行き、私は初めての魔獣遭遇もなんなくやっつける事が出来た。



「命を奪ったんだもの。大切に使わせて貰わなきゃね。うーん、やっぱり鎌風だと傷も大きいし、血も沢山出ちゃうのか・・・。でも、火魔法よりはいいか。闇魔法で今度包んでみようかな」



私が動かなくなった魔獣に話し掛けると、アルちゃんがパクリと魔獣を飲み込んだ。


フォルちゃんを撫でながら私がウェルちゃんを待っていると、ウェルちゃんから魔力が送られてきた。



「アルちゃん、フォルちゃん。ウェルちゃんが誰か見つけた。急いで来て欲しいみたい」



アルちゃんは頷き、ウェルちゃんが飛んで行った方向を向いた。



「よし。じゃあ、ウェルちゃんの所に向かいましょう。フォルちゃんレッツゴー!!」



私がフォルちゃんに乗り、三分程走るとウェルちゃんが倒れている人に水魔法を掛けて回復させていた。



「あら、大変。一人?」



近くに馬がいて、木立の辺りをうろうろとしている。



「貴女の御主人?貴女は元気?ポーションは飲める?水は飲んだ方がよさそうね。この人はウェルちゃんが回復しているって事は生きてるのね?うん?この人に道案内をさせたらいいでしょって?だから回復させてたの?偉いわね」



私はアルちゃんに馬の面倒をお願いして、倒れている男の人を起こすと話し掛けた。アルちゃんは深めの桶を出すと水をウェルちゃんに出して貰って、「ほら、お飲み」と、馬の前に差し出して飲ませていた。アルちゃんの鞭は色々形を変えて本当に便利だ。



「もしもーし。聞こえますか?目を開けれます?ポーションは飲めますか?」



よいしょ、と男の人の身体を起こし、口元にポーションを運ぶとウェルちゃんの回復のおかげなのか、うっすらと目を開け、ごくごくとポーションを飲んだ。



「水もありますよ。どうぞ」



水筒を渡すと小さく頷いて水もごくごくと飲んだ。



「美しい・・・。貴女は天の御使いか?私は天に召されたのか」


「私は天の御使いではないですよ。ここは王都とブール領の真ん中辺りです」



私がそう言い、ポーションをもう一本開けて、コップに入れて水に薄めて渡した。



「もう少しポーションを飲んで下さい」


「有難う。美しい貴女の名前を聞かせて頂いて良いだろうか。私はエルマー・レンクだ。ブール領のギルド職員をしている。助けて頂いて感謝する」


「初めまして、レンクさん。しっかり喋れますね。ここが何処か分かりますか?私はロゼッタ・ジェーンです。宜しければブール領迄ご一緒しても宜しいですか?」



「勿論。美しい人と一緒に帰れるなんて私はなんて幸運なんだ。ここはブール領へ帰る途中の場所だ。しかし、良く助かったものだ」



レンクさんはふうっと息を吐き、木にもたれかかって座ると右脚をゆっくりと伸ばした。



「レンクさんの怪我は脚だけですか?ズボンを少し破いて傷口を診てもいいですか?ここで応急手当をしていきましょう。フォルちゃん、防御膜を。アルちゃん、道具箱を出して。ウェルちゃんはそこの桶に水を沢山出してね」



「ああ、気にしないが・・・」と、レンクさんが頷いたので、私は道具箱の中から怪我の治療薬をポイポイ出した。「では、失礼」と言ってレンクさんのズボンをダガーで裂いて、ジャブジャブと傷口に水を掛けた。ズボンについた血は黒く乾きかけていたけれど、重くなっていたので出血は多かったようだ。



「ポーションが効いていますね。傷口も爛れ等はないですし、毒等もなさそうですね。一応、後で薬を作りますので飲んで下さい。傷は右脚だけですね?」


「ああ、右脚だけだ。魔獣に襲われて仕留めたと思った所をやられた。その後完全に仕留めて、ブールに戻る途中で血が流れ過ぎたんだな。意識が無くなってきて馬から落ちたのだろう。助かった」


「あら。打ち身もありますか?痛む箇所は?」


「右腕、背中が少し痛む。曲げると痛いが、骨には異常がないようだ」



私はレンクさんの右腕をゆっくり曲げて背中を触って、骨に異常がないか確かめた。



「めまいや頭痛はありますか?」


「美しい人に見つめられるとドキドキする。あとは何もない」


「ふふ。了解です。あとで、打ち身に効く練薬があるので後で塗りましょう。ドキドキするなら血が足りないからいいかも知れませんね。アルちゃん。さっきの魔獣を出して」



アルちゃんはレンクさんに向かって勢いよくペッと魔獣を一匹吐き出した。レンクさんに魔獣の首がゴツンと当たった。



「アルちゃん、丁寧に出して。これは私が仕留めた魔獣です。こちらの方向に向かっていたんですよ」


「ああ。コボルトだ。私が仕留めたのとは別だ。私は剣を使うからな。これをジェーン嬢が?」


「ええ。風魔法で仕留めました」


「きっと、最後に仲間を呼んだのだな。コボルトは大体が仲間を連れて行動するんだが、私が仕留めた物は一匹の大型だった。珍しいと思ったのだが、近くに仲間がいたんだな」



私は頷くとアルちゃんに魔獣を飲み込んで貰った。



「血が足りないならこれも食べて下さい。携帯食料です。食欲がないならこっちの飴を舐めて下さい」


「申し訳ない。後で代金は払う。で、ジェーン嬢は薬師か治療師かと思ったが、風魔法も使うのか。彼らは使い魔だとすると、もしかすると宵闇の魔女様だったりするだろうか?」


「ええ。宵闇の魔女です。王都から旅をしています。ブール領に向かう途中でレンクさんを見つけたんですよ」



私は無事に人を見つけ、迷子魔女にならずにすんだ。


よかったよかった、と内心思いながら私が挨拶をすると、レンクさんは両手を上げて頭を下げて簡易の礼をすると、頭を上げて頷いた。



「宵闇の魔女様とは知らず無礼を」


「いいえ。レンクさん、きついでしょうけど移動をしましょう。早いですけど軽食を取りながら休める所はありますかね?」


「少し行ったところに村人や冒険者が使う休憩所があります」


「じゃあ、とりあえず、急いでそこに行きましょう。怪我の状態ももう少し詳しく診たいですし」



レンクさんは頷いて、小さく口笛を吹くと、少し離れた所にいた馬がゆっくりと近づいてきた。




次の投稿は火曜日です。

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