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行って来ます! 

私は、朝早くに王都を出る事にした。



「師匠ー。二日酔いの薬、ここに置いておきますからね。工房のテーブルにポトフ置いておきましたから、食べて下さいね」


「うえェ。飲みすぎたな・・・。もう歳だな・・・。身体が酒臭エ」



師匠は、はーっと息を吐き自分の匂いを嗅いでは「歯、磨くか」と言って、ゆっくりと起き上がって目を開けた。



「じゃあな、ロゼッタ。行ってこい」


「はい、師匠!行って来ます!!」



私が元気よく挨拶をすると、「声がでけエ・・」頭を押さえながら師匠は杖を出し、床をトンと突いた。


魔法陣が床を照らし、師匠は杖を振った。



「我が娘に祝福を授ける。道を照らせ。恐れを忘れるな。己に打ち勝て」



大きな黒い炎が私を包み、一瞬で消えた。


師匠の魔法にはいつも圧倒される。


私が杖を出して祝福のお礼をしようとすると、師匠は手を振ってコロンと転がり煙草に火を点けた。



「さ、行ってこい。元気でな。無理はしても無茶はするなよ」


「はい、師匠!寝煙草は駄目ですよ!バルちゃん、ジルちゃん、ギルちゃん達もまたね!師匠とランさんを宜しくね!行って来ます!」



三匹が頷いてくれて、師匠から、しっしっと手で追い払われて私は店を出た。


ランさんとは昨日のうちに挨拶を済ませたので、今日の見送りはしなくていい事を言っていた。


いつでも帰ってこれるのだもの。


私はマジックバッグを持ち直し、店を出て王都の外れの王都門まで乗合馬車で向かった。


さあ、いよいよだわ。


早朝だったので人が少ないかと思ったら旅人はこの時間に出る事が多いらしく、意外にも馬車内は人がいて、私は礼をされたり、手を振られたりと忙しく過ごした。


無事に王都門まで来て警備の人に挨拶をし、ちょっと脇にそれてフォルちゃんで出発をしようとすると、ドンっと大きな音が聞こえた。


何事?と思って振り向くと、王都門の脇に軍団隊員、騎士団隊員の人が整列をしていた。



「宵闇の魔女様の、旅立ちを祝して、隊員一同、敬礼!!!」



一歩前に出て号令をかけたのは、ハヤシ大隊長だった。私は驚いて目を丸くしてしまった。


周りにいる人も、一緒に驚いたはずなのに水の波紋の様に皆がざーっと礼をしていった。


ドンっと、もう一度音がした。


足を皆で踏み鳴らした音だった。



「王国軍団、騎士団一同、宵闇の魔女様の王都への御帰還、心よりお待ちしております。どうぞ良い旅を!!」



ハヤシ大隊長が声をあげると、皆が剣を抜き、ざっと上に一度向け、ざっと頭を下げて私に向けて剣を差し出す形を取った。


すごい。


皆の隊服もいつもより煌びやかで、正装の姿だった。



「皆さん・・・」



見回すと、少し離れた所にスレイプと共に頭を下げたジロウ隊長がいた。


反対側に飛竜達と一緒に頭を下げたハワード隊長も見えた。


ハヤシ大隊長の横には第二騎士団のエマーソン隊長もいた。第二のウー副隊長も見える。


店を巡回してくれた顔見知りの隊員や、王宮内を移動するときに案内してくれた騎士もいた。



「敬礼、直れ!!」



ザっと音がして皆が顔を上げ剣を収めた。そして、礼をしていた旅人たちも頭を上げていった。



「ジェーン様。ホグマイヤー様より出立の日程のお知らせを頂きました。ご迷惑かと思いましたが、軍団、騎士団からの(はなむけ)を贈らせて頂きたいと思い参じた次第です。こちらは、ジョージ王太子殿下、ルーカス王子様とレオナルド王子様からです」


「凄い、三人の王子様達から?なんでしょう?お礼の手紙を書くと伝えて下さい。ハヤシ大隊長、驚きましたが迷惑ではありません。皆さんも忙しいでしょうに、どうも有難うございます」



私はハヤシ大隊長から包みを三つ受け取り、静かに一礼し杖を出した。



「何かの折にはいつでも我ら騎士、軍団にお声がけ下さい。ジェーン様の命を最優先に向かわせます。いつでも私に魔蝶でも魔鳩でも飛ばして下さい。いつの日かブルワー邸でまた訓練が出来る事を楽しみに待っています」


「ふふふ。そんなことを言うと夜中にでも魔蝶飛ばすかもしれませんよ?では、私にも困った時は声を掛けて下さい。私も出来る限りお役に立てれるよう杖を振ります」


「有難いお言葉。胸に刻ませて頂きます」



ハヤシ大隊長が片手を上げると、皆が腕を曲げ左胸に握りこぶしを置いた。



「ジェーン様に沢山の幸福を。新しい出会いに祝福を王都よりお祈り申し上げます。再びジェーン様に出会えますように。王国軍団、騎士団一同、心よりお祈り申し上げます」



ハヤシ大隊長の言葉に近くにいた旅人達も、胸の前で手を合わせ旅人を見送る挨拶をする。


私は頷き、挨拶を返した。



「王都の皆さんにも沢山の幸せを。王国軍団、騎士団の皆さん、国の守護者にして我が友人達に祝福を。同じ空の下で祈ります。又再び会える時まで」



私は魔力を出し、三匹にも最大の魔力を出すように指示を出した。



「私は宵闇の魔女。白金の魔女が愛するこの国を守ります」



特大の魔法陣を出し、辺りを金色の粒子で溢れさせた。


さあ、派手に旅立ちましょう。


師匠も、いっつも私の力を見せつけてやれって。力で黙らせろって言うもの。


力は最大の防御だわ。


私はいつもウダウダ考えてしまうけど。


結局は自分が頑張るしかないのだもの。



「祝福を!!!」



私は右手に杖を掲げ、魔力を流すと辺り一面を闇にして、ダガーを一本出した。左手に持ったダガーから光魔法を空に向かって出していく。


闇の中に光魔法を星の様に降らせ、ウェルちゃんは水の風船をふわふわと浮かせ、フォルちゃんは風をキラキラと光らせた。


アルちゃんは私が杖を振り闇魔法を止めると、真っ黒な薔薇の花をヒラヒラと降らせた。


旅人たちの歓声を聞き、私は深く一度礼をしてアルちゃん達に話し掛けた。



「フォルちゃん、アルちゃん、ウェルちゃん。さ、行くわよ!」



フォルちゃんがウォンっと鳴いて今までで一番大きくなった。私は、風魔法で階段を作ってフォルちゃんに乗り、ハヤシ大隊長達にもう一度声を掛けた。



「王都の皆さん!旅人の皆さん!ハヤシ大隊長!騎士団の皆さん、軍団の皆さん、素敵な挨拶を有難う!エマーソン隊長、ロイス隊長にも宜しく伝えて下さい!ウー副隊長、第二軍団の皆さん、名無しの薬局を宜しくお願いしますね。ホーキンス隊長にも宜しくと、伝えて下さい!でも、すぐに帰ってきますよ!ハワード隊長!ジロウ隊長!いつも有難う!また、すぐに会いましょう!魔蝶を飛ばします。手紙も書きますね!では皆さん!行って来ます!!」



私の声にドンっともう一度足踏みの声が聞こえ、私は振り向かずに王都を出発した。

次の投稿は水曜日の夜です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 いよいよロゼッタちゃんの旅立ちですね! 一杯経験して、時には里帰りもして、ロゼッタちゃんらしく頑張って欲しいです。 旅に出たロゼッタちゃんの活躍が楽しみです♪ オトコ共…
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