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宵闇の恋 

「ラン様!ロゼッタ様!コレ!見て下さい!!」



名無しの薬局のドアをカラン!っと、勢いよく開けてやってきたサミュエル君は帽子から可愛い耳が見えていた。


最近は私の友人と言う事で街で耳が見えても何も言われないらしい。魔女の友人と分かれば気にしないなんて現金な物だと思う。



「こんにちはサミュエル君、慌ててどうしました?」


「こんにちは、ラン様、ロゼッタ様!!コレ!コレですよ!」



ピコピコ耳を揺らしながらサミュエル君がバンっと勢いよく開いて見せてくれた紙には美しい魔女の絵が描かれていた。



「・・・宵闇の恋?・・・、え、なんですかコレ?」



宵闇って私の事かしら?


サミュエル君は興奮して話し出す。



「今度、王立劇場での新作の観劇ですよ!大通りで配ってました!今話題の女優と人気俳優が出る完全新作って事で、皆興奮して話してました!美しい魔女様が悪者から子供達を守ったり、素敵な恋をする話らしいですよ!」



やっぱり私の事なのね。と思いながら、ランさんを見るとランさんは紙を見て頷いていた。



「うん、中々の出来ねー。女優も今一番の人気の人なのよー。美しく歌うシーンもあるんですってー。使い魔ちゃん達は可愛い子役達が踊ったり、戦ったりして素敵らしいわよー。皆も人気になるかもねー」


「え・・・。ランさんは知ってるんですね?え?じゃあこの綺麗な魔女は私?似てるかな?」



サミュエル君はぶんぶんと頷く。



「似てないけれど似ています!!綺麗な所とか、こう、気高くふわっとにじみ出る美しさが!!」


「サミュエル君、有難う」


「そうねー、良い感じに似てるわー。私の役は、私が好きな女優にして貰ったの。ちょっと歳は大分上になるけど、理解ある落ち着いた美しい姉弟子って設定よー。サミュエル君の役もあるわよー。可愛い猫獣人で、魔女様の良き理解者で強い友人って役よ。きっと獣人の偏見も少しはなくなるんじゃないかしらー。第二軍団も奮闘したって劇の中では悪者と戦うシーンがあるのよー。後は派手な魔法のシーンねー。クリスさん達の役もあるしー、師匠の役もあるのよー。ロゼッタの恋の相手は秘密ねー」


「ランさん、バッチリ 関わっているんじゃないですか・・・ええ・・・。私は誰と恋をするんですか?いや、私じゃないんですけど、あ、でも、私の役だから私なのかな?」


「ふふふ、気になる方は劇場へゴーよー!!」



サミュエル君は目をキラキラさせて手を握りしめている。


ああ、私もランさんに言われるままにチケットを買ってしまいそう。ランさん信者の男の人達はこうやって色々買ってしまうのかしら。



「ラン様!!最高です!!僕行きたいです!!僕の役って誰がするんだろう!」


「そうよねー。結構前に王妃様から手紙が来てて、ロゼッタの劇の事はお願いされてたのー。師匠からの指示らしいわよ?でー、最近はブルワー夫人も呼ばれてお手伝いをしてるのよー。私と師匠は一応、アイデア料は頂いたわー」


「流石、ランさん。そして師匠」



私が魔女になったり、引き籠っている間にも色々動いてたのね。


私は感心しながらチラシを眺めた。使い魔を連れた美しい魔女が杖を振り、もう片方の手を差し出している。魔女の視線の先には男の人の手だけが描かれていた。


サミュエル君は、頬に手を当てて喜んでいる。



「サミュエル君にもチケットがちゃんとペア二組分で三日分は押さえているわよ。あと、俳優さん達に会いたいときはブルワー夫人に言えば会いにいけるわよー。練習中も見学できるんじゃないかしらー」


「え!!うわあ、両親や兄さん達にも観せてあげたいな!急いで魔鳩を飛ばします!チェンさんにも一日分はあげよう!!」


「ええ、ちゃんとチケットは無料だから、大丈夫よー。皆、招待したら喜ぶわよー。チェンさんの分は私からちゃんとプレゼントするわよー」



サミュエル君は手を叩いて喜んでいるが、絶対、チケット代だけでランさんはサミュエル君を抑えようとしている。しかも、そのチケット代は劇団持ち、もしくは王妃様持ち。ランさんは痛くも痒くもないはず。


いや、これだけ関わっているのならアイデア料はがっぽりだ。



「ランさん、私のチケットは?」


「ロゼッタはプレミアムボックスを三日分よー。王妃様がロイヤルボックスを使ってもいいって言ってたのだけれどねー。ロゼッタは嫌がると思って、プレミアムにしたのー。クリスさんやベンさん、師匠はロイヤルボックスでどんちゃんしてやるって喜んでいたわー」


「おお・・・。ロイヤルボックスで・・・。あれ、ゼンさんは?」



ランさんはふふ、っと笑って肩をすくめた。



「ゼンさんは、師匠達のお世話は嫌だって言って、ハヤシ大隊長に早々と自分の分の席を譲ったらしいわよー。ルーカス王子様も一緒に行かれるんですってー。きっとロイス団長も護衛につくわねー。ゼンさん、賢いわよねー」


「成程・・・」


「ロゼッタは誰か誘って行きなさいね?私は自分のチケットがあるから、チェルシーと行くわー。マツさんやジョゼッペさんにも心配掛けたって言って、もうプレゼントする約束はしてあるのー」


「おお、相変わらず、ランさんの行動力が凄い・・・。タダの時のランさんは輝いていますね」


「ロゼッター?タダじゃないわよー?ロゼッタの劇が開催される期間は、劇場の一角に名無しの薬局の臨時店がオープンするのよー。ポッポ屋の従業員さんが店番を手伝ってくれる話も出来てるのー。石鹸と、ポーション、携帯食料と飴なんかも限定パッケージで売り出すわー!!」



ランさんの眼が金貨になっている気がする・・・。



「あ、サミュエル君。サミュエル君が貰えるチケットはゴールドチケットだから、劇場の奥にあるVIPバーが飲み放題よー」


「うわああ・・・。兄さん達に飲みすぎないように言わないと、恥ずかしい事になりそうですよ・・・」


「ふふふ、まあ、まだ先の話よー。しっかり楽しみにしていてねー。急いで練習してー。春に公演初日を迎えるかしらねー。まだまだ先ねー」


「おお・・・。でも、王都は盛り上がりそうですね・・・」


「そうよー。悪いイメージを払拭したいだろうし、皆の不安も取り除きたいでしょうしねー。公演が決まったら、王都の大通りに面した所に大きなポスターが飾られるんですってー」


「それにしても、このチラシいつの間に作ったんですかね・・・あれ?この絵の感じってクリスさん?」


「ふふふ。お披露目の時には話は上がってたのよー」


「・・・・」



春が楽しみねー。と言う、ランさんに私は困ったように笑ったのだけれど、皆が喜んでくれるのなら、良いのかな、と私も楽しみになった。




次の投稿は土曜日です。

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