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ホングリー辺境伯領 ナバロ隊長視点 

私がホグマイヤー様と共にお館様の執務室に飛ぶと、驚いた様子もないお館様がすぐに椅子から立たれた。


お館様は逞しい身体を小さくおられてホグマイヤー様に礼をした。



「よー、ジジイ。元気か?」


「は。健康だけが取り柄ですからな。ホグマイヤー様は、相変わらず輝くばかりの美しさですな。私の心はいつでも貴女に捕らわれておりますよ」


「ハっ。相変わらずだな。頭、大丈夫か?」




ホグマイヤー様は目の前のソファーに座ると、お館様ははニコリと笑ってお茶の指示をだして座られた。


私は少し離れて後ろに立った。



「迷惑ばかりかけたな。土産をもって挨拶に来たんだよ。さっき土産はゴードンに渡した。元気そうだな」


「ホグマイヤー様は、私の隣に座って頂いて良いのですが。イアンと呼んでは頂けないので?」


「お前は相変わらずだな。ジジイのくせにババアを口説くなよ。イアン」


「はい、ホグマイヤー様より美しく強い者が現れたら諦めもしますがな。なかなかそのような者はいません」


「ああ、それで思い出した。うちの弟子な。魔女になったろ?」



ホグマイヤー様は出されたお茶を飲むと、美味いぞ、と従者に話し掛けられた。



「宵闇の魔女様ですな?」


「ああ、ロゼッタだ。私の次に良い女で強い女だ。ランは私の次に賢いがな。でな、もしここにロゼッタが来ることがあったら宜しくな。これはうちのロゼッタが作ったもんだ。気に入った物があればランに連絡してくれ。あいつは喜んで売るだろうよ」



ホグマイヤー様はそう言うと従者を手で呼び、ポーションをテーブルにドンドン出し、ハイポーション、石鹸と何か他にも渡していた。



「これは土産じゃないな。賄賂だな。ランは器用だがな。ロゼッタは私に似たのか真面目なんだよ。変な所で不器用でな。もし、辺境伯領内でやらかした時は知らんふりをしてやってくれ。あと、ロゼッタが捨てたクズな。もし、ロゼッタが自分で処理したい時も知らんふりしてやってくれ」


「このような物がなくとも、命じて頂ければいかようにも。私の耳や目は都合よく出来ておりますよ。ホグマイヤー様の命一つでいつでも瞑ります。それにしても、ホグマイヤー様の次にお美しいとは、宵闇の魔女様は流石ホグマイヤー様のお弟子様ですな。うちの孫に会わせても宜しいですか?」


「お前の孫?ああ、甥を養子に取ってたな。もう、孫がいるのか。年を取るはずだな。会わせるのはロゼッタがいいならいいがな。あいつは男の事で自信を無くしているからな。余計な事すんなよ。ロゼッタはラン程優しくないぞ。あいつの方が私に似てるな。孫が怖がるかもな」


「かしこまりました。私の心はホグマイヤー様の物ですからな。ホグマイヤー様の嫌がる事は致しません。魔女様を怖がるような腑抜けの孫なら辺境にいりませんがな」


「は。ぬかせ。ロゼッタはやらんぞ」



ホグマイヤー様が煙草を咥えられると、お館様はさっとホグマイヤー様の煙草に火を点けて、うんうん、と頷いていた。



「勿論。もしお眼鏡に叶ったらうちの孫にリボンをつけさせますよ。私はいつでもリボンを着けてホグマイヤー様の元へ参れますが」


「お前はブレんな。でもそこまで馬鹿だと、気持ちがいいな。ランは心配はいらんがな。ロゼッタはポンコツなところがあるんだよ。お前の孫はお前に似て馬鹿か?」



ホグマイヤー様はプハーっと煙を吐きながら、眉毛を下げた。



「私には似てないでしょうな。嫡男が文官向き。次男が軍団向きですな。よく出来た孫達です」


「じゃあ、駄目だな。ロゼッタはロゼッタより強い男か、お前ぐらい馬鹿かのどちらかが向いてるだろうよ。それに言っただろ?あいつは私に似ている。寄って来る獲物は手懐けても、結局は自分で仕留めるだろうよ」


「それは羨ましい」



お館様はそう言われニコニコしていた。



「イアン、楽しそうだな」


「ええ、私は幸せ者です。ホグマイヤー様に馬鹿と言われ、頼られ、貴女の愛する土地を守れるのですから。馬鹿で結構。賢い跡継ぎもいて辺境も今は平和です。ホグマイヤー様が守れと言われたこの場所を私は何としても守ります」


「本当、お前は馬鹿だなア。でもな、次はもっと早く呼べよ。片目と片腕失うだけではすまんぞ。最近はクリス達もちゃんと来てるだろ?」


「ええ。あれから大体一年おきに魔法使い様が来られますよ。ドルトン様も、キイス様も。ホグマイヤー様にはいつでも私の隣の席を空けておりますが。確かにこれ以上腕を失うとホグマイヤー様と酒を酌み交わせませんね」


「そうだぞ。次は王都で酒でも飲むか。まあ、ここにはたまに私も来てやるさ。お前は本当、変わらんなア」


「一途と言って頂きたいですな。私はホグマイヤー様より好きになる方がいないだけですよ。美味い酒をいつでも用意しておきます」



ホグマイヤー様は煙草を消されると、お茶をグイっと飲んだ。



「もう、行かれるので?」


「ああ。イアン。うちの可愛い娘が来た時は宜しく頼むな。余計な事をしたらもう会ってやらんぞ」


「は。ホグマイヤー様、イアンはいつまでも貴女だけをお慕いしております」



ホグマイヤー様は手を振るとニヤッと笑われて杖を出されると消えた。



「ゴードン、今回も振られた」



私に話し掛けるとお館様は、ホグマイヤー様が置いて行かれた物を一つ一つ確認していた。



「お館様。ホグマイヤー様は訓練場で火球を打ち込んだそうです」


「先程の音だな。それは美しかっただろう」


「ダレン・ウッドマンの資料はお渡ししました。ここに飛ぶ前に、ネフノスキーから訓練場の様子を聞いたところ、ホグマイヤー様は皆の様子に満足していたと。ダレン・ウッドマンの髪が少し焦げていたと、報告を受けております」


「そうだ!ゴードン!お前、ホグマイヤー様と一緒に飛んで来たな。羨ましい奴め。その、ウッドマンは害にはならんか?」


「は。腐りきる前に持ち直しました」


「そうか。班長にしかと目を光らせるように言っておけ。ホグマイヤー様の御心を乱す事がないようにな」



お館様は小さな守り石を見つけ、嬉しそうにしていた。



「ゴードン!新しい守り石を置いて行かれたぞ!赤と黒だ!これはホグマイヤー様と私と言う事ではないかな!?」


「ホングリー辺境伯領の色が赤と黒ですので、それであるかと」


「そうだろうか?この間は赤のみだったからな。新しい眼帯もあるぞ!早速付け替えよう」



お館様は器用に片腕で眼帯を外すと、新しい眼帯を着けられた。黒にホングリーの紋章が入った美しい物だった。



「お似合いです」


「そうか!やはり黒はいいな!ホグマイヤー様は相変わらず美しかった。宵闇の魔女様にもお会いしたいが。マイネンの事が無ければ私も王都に行けたものを」


「致し方ございません。砦を守る事が我らの勤めであるならば。ホグマイヤー様からも我ら軍団を褒めて頂いております」



お館様は執務室に飾ってある、ホグマイヤー様の絵を見ながら頷いた。



「うむ。そうだな。落ち着けば私が王都に会いに行こう。しばらくは砦を息子に任せてもかまわんだろう」


「王都に行かれホグマイヤー様と会われれば、ゆっくりと話しも出来ましょう。名無しの薬局か玉ねぎ屋でお食事をされては宜しいのでは?」


「ああ。そうだな。宵闇の魔女様にもお会いできればいいが。ジェーン様か。うちの孫はいくつになったかな?」


「ジェラルド様は十六に。ジャスティン様は十四でございます」


「うむ。ジェーン様はおいくつであられたか」


「確か、うら若き美しい魔女様とお聞きしております。薬師から魔女様になられたばかりであると。薬師長様がエスコートを勤められたそうです。二十歳前であられるかと」


「そうか」


「お館様。ホグマイヤー様に叱られる事が無きように」


「うむ。ホグマイヤー様が嫌がる事はせん。ホグマイヤー様の幸せが私の願いだからな。ただ、新しき魔女様に敬意を示さねばならん。魔法使い様達にはご挨拶は済ませたがな。孫達は先の魔物湧きを知らん世代だ。しかと、魔女様達に敬意を示さねば」



お館様は嬉しそうに守り石をみてそう呟かれていた。







幕間はここ迄です。

第七章投稿迄しばらくお待ちください。


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