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魔女、魔法使いの出番だよ  

呪いを返した後に、一度自分の部屋に戻り師匠に連絡をしているとフォルちゃんがピクンと反応した。



「クリスさん達が来たのね?工房に行きましょう」



私が師匠の工房に戻ると、クリスさんとゼンさんが焦げたハンカチを見つめていた。



「・・・ロゼッタ・・・」



私に気付くと二人は私の側に歩いて来て、ゼンさんはきゅっと抱きしめてくれた。



「・・・大丈夫?・・・」


「ええ、ベンさんが呪い返しをしてくれました。クリスさんもゼンさんも来て頂いて有難うございます」



私の横にクリスさんが立ち、ゼンさんがそっと私から身体を離すと、クリスさんが私の頭をゆっくりと撫でた。



「こんばんは、ロゼッタさん。この間はお茶とお菓子を有難う。大丈夫かい?」


「はい」



二人がソファーに座り、私がお茶を淹れると二人はテーブルに置いてあるハンカチに再び目を向けた。


クリスさんがハンカチに杖を向けて魔力を流した。ハンカチに黒い魔法陣が浮かんだ。



「クリスさん、二枚あるよ。こっちにも浮かばせてくれる?簡単な呪いだけど、凄く悪意に溢れているよね。こういう所で性格が出るんだ」



ベンさんの声にゼンさんがコクリと頷き呟いた。ゼンさんが魔法陣をじっと見て杖を振り、魔力をハンカチに降らせた。ハンカチが黒く揺らめき、魔法陣の中に赤い炎が見えた。



「・・・嫉妬・・・」


「ああ、成程。呪いの原点はそこか」



クリスさんがもう一つのハンカチにも魔法陣を浮かばせたが、その陣は最初のハンカチと同じ物だった。



私はハンカチを見ながら説明をした。



「恋のハンカチというのが売られているそうなんです。このハンカチと同じような物でした。チェルシーさんが持っていて、見せて貰ったんですけどそれは普通のハンカチで魔力も何も感じませんでした」



コクリとゼンさんが頷く。



「でも、今日、店の前にこのハンカチが落ちていて、チェルシーさんが拾って。ジョゼッペさんも拾ったんです。チェルシーさんは、これと恋のハンカチは同じ刺繍がされているって言っていました。チェルシーさんは店で売られているのを買ったのに。このハンカチは、私に攻撃をするだけじゃなくて、私の周りにも攻撃をしようとしたんです」



私は落ち着いて話そうと思うが、魔力が溢れ出しそうになるのを抑えるだけで精一杯だった。



「うん、ロゼッタちゃん、落ち着いて。クリスさん、どうしようか。もうすぐどこの誰が呪いを掛けたかは分かるよ。ロゼッタちゃんの使い魔に呪い返しの後を追って貰った。後ね、僕、気になる事があるんだ。嫌な事を言うけどね、呪いはこれだけなのかな?まだある気がするんだよね。店で売ってたっていうのも気になるよね」


「そうか。ベンがそう言うのならそうだろう。ふむ。相手が貴族だったらホグマイヤー様に話を通した上で、王宮に行こう。ロゼッタさんはパパに一緒についておいで。ジョージ様と国王陛下にご挨拶に行こう。相手にもよるが、王妃様にもお会いした方がいいのかな。あの方は面倒だな、ホグマイヤー様に王妃様はお願いをしよう」



私が頷くと、ウェルちゃんとアルちゃんが帰って来た。


あ、凄く二匹が怒っている。



「ベンさん、二匹が帰って来ました。何処の誰か分かったようです。王都の地図と紙でいいかしら。よし、アルちゃん、ウェルちゃん、相手は誰?相手がいた場所は何処かしら。皆に分かるように教えて頂戴」



ウェルちゃんが嘴で突いた王都の地図は王宮から程近い貴族街だった。



「王宮から近い場所ね・・・。この地図じゃ細かい名前までは載ってないわね。でも貴族街ですね」



アルちゃんは闇魔法で紙に紋章を焼き付けた。


ベンさんは、ああ、と言ってアルちゃんを撫でた。



「紋章だよ。良かったのか、悪かったのかなあ。相手が貴族なら王家に話を入れて潰せるね。平民の方がややこしくなるかなあ」


「とても優秀な子達だね。相手は女性だったかな?」



クリスさんの言葉に二匹はコクンと頷いた。



「歳は私とベン、ゼン、ロゼッタさんだったら誰が一番近い?」



ウェルちゃんが私の肩にとまった。



「その女性は一人だったかな?」



アルちゃんが頷き、紙に杖の模様を焼き付けた。



「成程ね、この紋章の貴族の女性で、ロゼッタさんと似た年齢が術者だ。そして術者は一人で、杖を持っていたんだね。貴族街のこの辺りは子爵家か、裕福な男爵家もあるか。伯爵家はないか。この紋章はガーランド侯爵の分家筋かな。ロゼッタさんに心当たりはあるかな?」



私は首を横に振り、クリスさんはやれやれと、頭に手を置いた。



「どうする?クリスさん。魔女に手を出したんだ、どんな理由でもいらないよ。この場所に行って先に拘束する?」



コクンとゼンさんも頷く。



「愚かだな。ただの噂話だけであれば、少し痛い思いするだけですんだかもしれないのに。我らの魔女様に呪いを掛けようとするなんて烏滸がましいにも程がある。ロゼッタさんはすぐに、ホグマイヤー様とランさんに報告を。これからは攻撃に転じるよ。ランさん達の出番は終わりだ。ランさんからこの事を知っている者達に連絡を取るように言いなさい。もう、魔女、魔法使いの出番だよ。ただ、報告を先にしよう。拘束はその後だ。なあに、我らから逃げられるはずもない。呪いは返しているんだ。今頃、恐れて震えているだろう」


「はい、クリスさん」


「さー、僕は王都を回って呪いの回収をして来よう。このハンカチの魔力を辿って行けば見つけられないかな?ウェルちゃん、僕を手伝ってくれる?あと、ゼンのネズミ達も貸して欲しいな」



ピピピとウェルちゃんがベンさんの腕にとまり、ゼンさんが杖を振って頷くとベンさんは杖を持ちお腹を叩いて消えた。



「ゼンは先程の地図の場所の見張りを動物達に指示を出して欲しい。他にも貴族や王宮の周りを中心に見張るように言ってくれるかい?この紋章の家をカラスに探させて、ハンカチを売っている店が分かればベンに連絡をするように指示を頼むよ」



コクンとゼンさんが頷き、杖を振って魔力を飛ばしだした。



「ロゼッタさんは報告が終わったら私とお出かけだ。ここで待っているから、ランさんに言っておいで。ホグマイヤー様には魔蝶を飛ばしなさい」



私は頷き、工房を飛び出して店にいるランさんを手招きした。


ランさんは閉店の準備をしていて、すぐに奥に来てくれた。



「大丈夫?ロゼッタ」


「ランさん。私に呪いが掛けられている事で間違いありませんでした。そして、呪いの相手も見つけました。今から攻撃を開始します。ランさん達は手を出さないで、自分達の守りを固めて下さい。ホーキンス隊長にも皆にも連絡をお願いします。相手は貴族です。すぐに王宮に向かいます。皆は絶対に手を出さないでって言って下さい」



ランさんがぎゅっと私に抱き着いて、一つ頷くとすぐに離れた。



「分かったわー。店にある必要な物はなんでも持って行って。後から使った物を教えてくれればいいから。気をつけて行って来てね」


「はいランさん。行って来ます」



私が頷くと、ランさんはすぐに店に戻った。私は奥の休憩室に入ると魔蝶を出し師匠に飛ばした。



「師匠、先程の続きです。呪いを掛けてきた相手が分かりました。貴族女性です。あと、ベンさんの予想では私に掛けた呪物が王都中に散らばっているようです。呪物はハンカチです。他にもあるかもしれませんが。ランさんには自分と店を守るように言っています。私はクリスさん達と、呪いを掛けた相手に反撃をします。もうすぐ王宮に行って国王陛下と王太子殿下に話をしてきます」



私が魔蝶を飛ばして、ポーションや水晶をマジックバッグに詰めて工房に戻ると、丁度師匠からの返事の魔蝶が届いた。



「よー、忙しいなア。いいか。魔女に手を出したんだ。舐められるなよ。お前の価値は国より重い。分かったか?お前の師匠は誰だ?ヘンリーやジョージにも伝えろ。それと、クリス達に伝えろ。私がケツは拭いてやる。気にせずやれとな。アナは私が仕事をやろう」



皆で師匠の魔蝶を聞くと、クリスさんは頷きゼンさんを見た。



「ゼン、動物に指示を出し終えたらマリアさんに会いに行って来てくれ。教会を通じて呪いのハンカチを回収しよう。ベンだけでは取りこぼしがあるはずだ。教会に祝福と防御膜を掛けて欲しい。ハンカチを集める場所が必要だ。終わったらカラスか猫で連絡を。私も何かあればすぐに連絡をしよう」



ゼンさんはコクリと頷くと、私を見て、一度ぎゅっと抱きしめてすぐに身体を離した。



「・・・戦っておいで・・・」


「はいゼンさん。宜しくお願いします」



私はそう言うと、クリスさんが杖を出した。



「さあ、ロゼッタさん、きっと転移が出来ると思うよ。王太子の執務室に行こう。時間がない」


「はい」



私は頷くと杖を振り、魔法陣を出し踵を鳴らした。



「転移」



次の投稿は明日の夜です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 更新お疲れ様です。 『恋のハンカチ』として売られていたハンカチは『呪われたハンカチ』だから回収する、と、おふれが出れば、割りと楽に回収出来そうなw
[良い点] いつも楽しみにしています。最後に、次の投稿がいつか書いてくれてあるので、また続きが読めるのだと楽しみが続いて嬉しいです。
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