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呪いの行き先

私がモラクスさんとの話を終え、ベンさんを待っていると魔法陣が浮かびベンさんはやって来た。



「やあ、ロゼッタちゃん。いい匂いだね」


「おかえりなさい、ベンさん。忙しい所、すみません。話はスープを食べながらがいいでしょうか?それとも後が?師匠の工房に入りますか?」


「うん、とりあえず先に見せて貰おうか。で、ホグマイヤー様の工房でスープを食べた後にゆっくりと話そう」



私達は工房のソファーに座り、ベンさんにハンカチを見せた。


ベンさんは杖を向けて魔法陣を出すと、魔力をハンカチに流しすぐに止めた。



「うん、分かった。じゃあ、それは僕が預かるよ。後は、スープを食べてから話そうか。心配しなくて大丈夫だよ。僕がいるからね」


「はい、ベンさん」



私は頷き、スープをよそうとパンを添えてベンさんの前に出した。


カボチャのスープにパンを浸して食べたベンさんは、スープ皿がピカピカになるまでしっかり食べてくれた。ベンさんはお腹をさすりながら私を見た。



「ふう。お腹一杯。ごちそうさま。ロゼッタちゃんのスープ、美味しかったよ。レシピを教えて欲しいな。また作ってくれる?」


「お口にあって良かったです。簡単な物しか作れないんですけどね。今、お茶を淹れますね。お菓子はクリームパイですよ」


「美味しそうだね。有難う。さ、じゃあ、話を始めようか」



私は頷き、お茶とお菓子をベンさんの前に出した。ベンさんはローブの下から小さなチョコレートを幾つか出すと私達の前に置いた。そして、黒い布を出すとその上に焦げたハンカチを置いた。



「さて、ロゼッタちゃん。結論から言うとこれは呪いで間違いないよ」



ハンカチを見てベンさんは呟いた。


分かっていても、言葉を聞くと胸がドキンとした。



「かなり悪質な呪いだよ。ただ、腕はあまりよくないね。呪いって隠す気もないのか、隠す術を知らないのか。魔力も洗練されてない。これはロゼッタちゃんに届いたの?」


「いいえ、名無しの薬局の前に落ちていたそうです。誰かが落としたのか、わざとなのかは分かりません。パーティーに来ていたチェルシーさんを覚えていますか?今日、薬局の前でチェルシーさんが拾い、その時にハンカチが急に焦げたそうです。それに私がチェルシーさんにあげていた御守りが少し濁っていました。もう一つのハンカチを拾ったのは隣の店のジョゼッペさんで、ジョゼッペさんの店の前に落ちていたそうです」



ハンカチは一部分が焦げているが、いたって普通のハンカチに見える。そのことがかえって不気味に感じた。



「うん、二つとも同じものだね。うーん。ロゼッタちゃん、少し聞いてもいいかな?」


「はい」


「まず、御守りが反応した事。ジョゼッペさんとチェルシーさんの御守りはどんな風に作ったの?」


「確か恋愛の話をしていて、チェルシーさんに良い出会いがあればという感じだったので・・・。幸せと守護の御守りで作ったはずです。ジョゼッペさんには健康を願って、同じように守護を掛けたと思います」


「成程、守護が反応したんだね。よっぽど悪意があるハンカチだったんだろうね。そして力の差がはっきりとしているから、御守り一つで抑え込んじゃったんだね。あと、もう一つ。最近この辺りを祝福して防御膜を重ね掛けしているのはロゼッタちゃんだよね?」


「はい。引き籠ってから、何か出来ないかと本を読んだりして師匠の防御膜の上に重ねて掛けたり、加護の練習もしています」


「闇魔法で加護を掛けたね?防御膜はまだ分かるけど、闇魔法の加護、祝福は珍しいよね」



ベンさんは二枚のハンカチを黒い布の上に置いて、腕を組んだ。



「うん、成程。多分だけどこのハンカチをロゼッタちゃんに渡そうとした、もしくは薬局内に置きたかったけど薬局の中までハンカチが入ってこれなかったんだね。ホグマイヤー様とロゼッタちゃんの防御膜が弾いたのかな。ロゼッタちゃんが感じたように、このハンカチにはまだ魔力があるよね?だから呪物で間違いはないけど、今はもう呪いが外に出る力はないよ」



私はベンさんに聞いた。



「御守りが呪いを抑え込んだのですか?」


「うん、ロゼッタちゃんの守護が相手を燃やさないといけないくらいの悪意をね」


「・・・・呪いの対象は私で間違いないですか?」


「うーん、そうだね。今、調べて分かった事の悪い方から話そうか。さっきも言ったけど、このハンカチは呪術を受けた物で間違いない。問題は数なんだ。二枚ある事から相手は本気だね。で、対象者。まれに対象者がいない場合もあるんだ。でもこのハンカチに限ってはそれは無い。じゃあ、チェルシーさんか、ジョゼッペさんかランちゃん、それ以外かと思うけど、十中八九、ロゼッタちゃんが対象だと思う。御守りが反応したことが一番大きいかな」



私はベンさんの言葉を聞いて、ゴクリと喉がなった。



「ごめんね、気の利いた言い方が出来なくて。ただ、悪意、憎しみ、嫉妬なんかはね、勝手にされるんだよ。ロゼッタちゃんが良いも悪いもないんだ。恨み、辛み、妬み、富むものを羨み、美しい者を妬んだりする。ロゼッタちゃんが悪いとかではないんだ。だから、呪いを掛けた者に同情はしなくていいし、自分の悪い所を見直そうなんてしなくていいよ。大事なのは気持ちを強く持つ事だ。弱い心は付け込まれる。ロゼッタちゃんは気持ちをしっかりもってね。さて」



ベンさんはハンカチを黒い布の上に置いて杖を出した。



「ロゼッタちゃん、受けた呪いには二つの道がある。一つは呪いを解く事。もう一つは呪いを返す事。僕は返す事をお勧めするよ。なんでかと言うと、新しい呪いだから一つ解呪しても次が出てくる可能性がある。すでに二枚あるしね。これが過去の呪いで不特定にかかる呪いのアクセサリー、なんかだったら解呪する方がいいんだけどね。これはさっさと相手に返す事が早い。そして、呪い返しは相手を特定しやすい」



ベンさんは杖に魔力を貯めていく、そしてマジックバッグからいくつかの宝石を出し、瓶に入った粉を魔法陣の周りに撒いていった。



「呪い返しは怖いかい?でも、呪いは禁忌。相手にかける時はそれ相当の覚悟が必要だ。そしてね、僕は杖を向けられた相手に容赦はしない」



穏やかなベンさんの口調とはうらはらにベンさんの眼はとても力強かった。

次の投稿は明日の夜です。

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