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傲慢な良い魔女 

私はチェルシーさんが帰った後にベンさんに魔蝶を飛ばした。



「ベンさん、ロゼッタです。もしお時間があるなら焦げたハンカチを見て頂けませんか?魔力を纏ったハンカチがあります。私が感じた事のない物なのです」



ベンさんからはすぐに返信の魔鳩が届いた。



「ロゼッタちゃん


心配しなくていいよ。ロゼッタちゃんは無事なんだよね?僕はおやつの時間の頃に行くよ。ちょっとだけ薬局で待ってて。僕、お昼ご飯を食べれてないから美味しいスープが飲みたいな。食後のおやつも宜しくね。変なハンカチは大丈夫だよ、僕に任せて。  格好良い先輩のベンさんより」



ベンさんの返事を読んで、ホッとした。


自分で思ってたよりも、気が張って行ったようだ。


訓練の時に思ったけれど、ベンさんはとても強い魔法使いだわ。凄く頼もしい。



(一番多い物がアクセサリーやハンカチに呪いをかけて渡す)



クリスさんと以前話した内容を思い出す。


確か、呪いに属性は関係ないって言ってたわ。


後は・・・、相手を呪う気持ちを魔力に乗せる、だったかしら・・・。


私が考え込んでいると、ランさんは私の肩をポンっと叩いた。



「大丈夫よ、ロゼッター。ベンさんも来てくれるんでしょー?ロゼッタはそのハンカチが悪意ある悪い物だと思うのね?もし悪い物でも、もう、回収出来ているわ。ベンさんに見て貰えば大丈夫よ。私からも師匠には連絡しておくわー」


「ええ、ランさんお願いします。これは凄く悪い物だと思います」


「任せてー。ロゼッタが言うなら悪い物で間違いないでしょうね。ロゼッタはいつも私の好きにさせてくれているけど、ロゼッタも好きに動いていいのよー?色々な連絡や、面倒な事は優しい姉弟子に任せなさいねー」


「はい、ランさん。ランさんも何かあったらすぐに教えて下さい。ジルちゃんはランさんにずっとついていますよね?御守りは常に身に着けて下さいね。私も色々準備はしています。私はランさんの様に優しくないですから、杖を向けられれば潰す時はすぐに潰します」


「そうね。ロゼッタは強いから。それに、動くまではのんびりでも、動き出したらあっと言う間よね。ロゼッタも気をつけてねー」



ランさんは今日は少し早めに店を閉める、と言うとお昼休憩を終えて一階に降りて行った。


私はベンさんがスープを飲みたいと言っていたのでカボチャのスープを作り、お菓子の準備をしてフォルちゃんに師匠の工房に運んで貰った。


私も師匠の工房に入るとモラクスさんを呼び出した。



「モラクスさーん」


「なんだ」



私が師匠の工房に入りアルちゃんから本を吐き出して貰って、杖を振って魔力を出すとモラクスさんはすぐに現れた。


私はお酒とお菓子をテーブルに出し、ソファーに座った。



「教えて欲しい事がありまして」



モラクスさんは目を細め、言ってみろ、と言い、黙って私の話の続きを促した。



「変な魔術がついたハンカチが店の前に落ちていました。おそらく呪いだと思います。誰かからおそらくですが私に呪いをかけようとしています。呪いから身を護るにはどうしたらいいのでしょうか?」


「お前がか?」



モラクスさんはニヤッと面白そうに笑うとソファーにドカリと座ってグラスを出した。お酒の栓を片手で器用にポンっと抜きグラスに注いだ。



「はい。おそらく。それか、名無しの薬局が標的かと。私の悪い噂も最近流されています。そして噂が流れた後に店の前に呪いと思われるハンカチが落ちていました」


「ふん。お前は、標的が自分だと思ったのだな?」



モラクスさんはグビっとお酒を飲み、私は頷いて自分の分のお茶を淹れた。



「はい。証拠はありません。ただ、チェルシーさんから言われたのは、私を嫌っている人がいるそうです」


「嫌い、か。成程な。勘は大事だ。ジュリエッタはなんと言っている?」


「師匠には噂の事は知らせましたが、まだ呪いの事は言ってません」


「そうか、ジュリエッタは動かずか。いや、わざとか」



ふうん、と言って楽しそうにモラクスさんはお酒を飲んだ。



「私に向けられた呪いはどうすればいいのでしょうか?」


「そうだな。まず、「呪いから身を護る」だったな。それはお前には必要ない。もう出来ている。お前が着けているジュリエッタのブローチ。それより強い魔力を持つ者じゃないとお前に呪いは届かんだろう」



モラクスさんは私の胸元を指さした。



「このブローチが?」



私はローブに着けている黒いブローチを触る。確かに魔力は常に感じる位だけどそんなに凄い物だったなんて。



「ああ。ジュリエッタの特大の加護がかかっている。我でもお前には手を出せん。まあ、契約しているのだからそれは無いがな。ジュリエッタ以上の人間がいるとしたら一人だけだ。だから実際には不可能だな」


「師匠以上の人?」


「なんだ。お前は分かってないのか。まあ、良いだろう。次だな。お前に向けられた呪いをどうしたらいいのか、だな。一番確実なのは呪いをかけた呪術者を探し、消せばいい」


「呪術者を探せない、もしくは分からない時は?」


「やり方は色々あるが、簡単なのは呪物だ。呪物があれば探せる。呪術者の魔力が宿っているからな。呪物は手に入っているのだろう?」


「はい、手元にあります。これです」



私はハンカチをモラクスさんに見せるとモラクスさんは嬉しそうに笑った。



「ああ、間違いないな。呪いだ。なんだ、お前が防御膜で覆ったのか。そんな事をしなくてもこれはもう役には立たん。我が手を出してもいいが、どうする?」


「ベンさんに助けを求めました。白群の魔法使い様です。モラクスさんの力を借りるのはもう少し後で。教えは乞いたいですが」



私はハンカチをしまった。



「モラクスさん、呪術者を消す以外に方法は?」


「ああ、お前らが大好きな話し合いか?呪術をするような奴に話が通じると思うのか?お前は馬鹿だな。相手は話がしたくもない、まともに戦いたくもない、お前に会いたくもない。だから隠れてお前を呪おうとしたのだぞ?」



モラクスさんはお菓子を食べて、はあ、っと息を吐いた。



「お前は格と言うのが分かるか?人間は格と言うのが解り辛い。ああ、お前らは貴族とか平民で分けるのか。それではない。魂の格だ。我ら悪魔は分かりやすく明確にある。いいか、格が違うと考えも力も何かも違う。話が合わない奴は大抵が格が違うのだ。初めから考えも視えている物も違うんだ。解りあうには力で示す事が分かりやすい。己の力で相手をねじ伏せるんだ、明確だ」


「私は分かり合えなくてもいいのです。分かりたくもない事もあります。でも、知ろうとしない事は違う事かと思います」


「面倒な奴だ。賢くないな。では、呪術者を特定し、力を抑え込んだのち話をしてみろ。まあ、相手は望まないと思うぞ?お前は相手を押さえつけ、力を封じ叩きのめした後に、「お話をしましょう」と言うのか?いい趣味だな。相手に情けを掛けるのか?お前の独りよがりの優しさか?傲慢な良い魔女だな。ロゼッタ」



ニタアとモラクスさんは笑うと、空になったグラスにお酒を注ぎ、一気に飲んだ。



「ええ・・・。気持ちの押しつけでしょうね。でも、私は順番を守り、筋を通したいと思うんです。これは私の自己満足です。私が後悔をしたくないだけで相手の気持ちを考えてないのでしょうね。そもそも、呪いを掛けてくる相手の気持ちを考えたくないとも思いますが。それでも叩き潰すにはちゃんと私が納得して叩き潰したいのです。話をしたくない気に私もなるかもしれませんが」


「お前の言葉は自分に力があるから言えることだ。いいか、杖は力が無いと振る事はできん。お前のその考えを貫きたいのなら、力をつけろ。周りに何も言わせるな。お前が従わせろ。そして、お前ら人間は責任という言葉が好きだな。我らには無い考えだ。やりたい事をやり、従わせ、好きにする。でも、お前らは相手を慈悲深く見守り、責任を取るのだろう?愚かで哀れで可愛いな」



私はコクリと頷いて目を伏せた。







明日の夜、投稿します。

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