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焦げたハンカチ 

少し長いです。

転移のコツを掴んだ次の日。


せっせと商品を作っていると、ランさんがお昼休憩に二階に上がって来た。



「ロゼッター、調子はどーう?携帯食料とハンドクリームの追加の注文書、ここに置くわねー」


「ランさん、今日はここでお昼を食べますか?ハンドクリームも売れますねー」


「そうなのよー。ブルワー夫人が知り合いの貴族夫人にお勧めしてくれてたりー、チェンさんがお店のお客さんの踊り子さんに勧めてくれたらしいのー。居酒屋から大量注文が来た時は驚いたわー。さ、美味しくご飯も食べましょうねー。あ、マツさんやジョゼッペさんが今朝、何回目かの突撃をしてきたけど、ちゃんとロゼッタは相変わらず引き籠ってるって言ったわよ?私もよよよ、と泣いて近況報告を二人にしてると、ウェルちゃんが水を悲しそうに降らしてくれたのー。二人ともぷんぷん怒って帰って行ったから、またドンドン噂を流すでしょー」


「・・・うわあ」



私は窓を開け、杖を振って薬局の周りに魔力を飛ばすと、マツさんやジョゼッペさんの健康を祈った。


私が祈らなくても二人は元気モリモリだけど、心配ばかり掛けている身としてはご近所を守るくらいはしたい。


振り向いてランさんを見ると、ランさんはパンとスープをテーブルに置いていた。



「美味しそうですね、食べましょう」


「玉ねぎ屋の日替わりセットよー」



ご飯を食べながら、ランさんの話に相槌を打っているとアルちゃんがピクンと反応した。



「ランさん、チェルシーさんが来たようです」


「あ、そー。チェルシーならここでもいいでしょ。呼んでくるわー」



ランさんは席を立つと、チェルシーさんを呼びに一階に降りて行った。



「ロゼッタさん、お久しぶり。どう?元気に引き籠ってる?差し入れと噂情報の続報よ。頂き物のリンゴを持って来たわ。一緒に食べましょう」


「チェルシーさん、お久しぶりです」


「チェルシー、狭いけどここ座って。リンゴも剥いてねー。ロゼッタ、お茶をお願いねー」



ランさんは私のベッドに移動して、チェルシーさんはランさんが座っていた椅子に座ってリンゴを剥きだした。私はチェルシーさんの分のお茶を淹れ、パンと一緒に出した。



「変な噂の続きよ。嫌な噂は少なくなった感じがしたのだけど、なんだか噂とは違う悪口みたいなものを聞くことがあったの。知り合いに聞いたら、魔女様を嫌っている一部の人が増えているって言うのよ。あと、恋のハンカチを持って薬局の方に行くと恋が叶うって噂があったわね」


「魔女のロゼッタを嫌いになるの?会った事も知りもしないのに?変な話ねー。女の子が最近ちょっとした物を買っていくようになったのは店に入りたかったのねー」


「あとは、魔女様は隊長達に振られたって噂も聞いたわよ?隊長達ってきっと、ジロウ隊長とハワード隊長でしょう?第二のホーキンス隊長は既婚者よね?この間は二人の隊長と良い感じって噂だったのに、今は振られている噂になってるわね。しかも二人からよ」



ランさんは皮がついたままのリンゴを一つ取るとむしゃむしゃと食べだした。ベッドの上で食べないで欲しい。



「そうねー。多分、臭い謝罪文のジロウ隊長と、キラキラ暴走のハワード隊長でしょうねー。ロゼッター、いつのまに振られたの?ロゼッタを振るなんていい度胸してるわねー。追い出すだけじゃ駄目だったかしら?隊服のポケットの中に臭い練薬をこっそり入れておけばよかったわー」


「ええ・・・。私、振られて無いですよ。そもそも始まってもないですし・・・え?私、知らないうちに振られたんですかね?それに、臭い練薬を隊長達の隊服の中に入れたら、二人が悪臭の発生源で問題になってしまいますよ。また噂が立ちますよ?」


「あら。そしたら、ロゼッタの噂よりもそっちの方が面白くて話題になるかしらー。本当にすればよかったわねー。スプレーじゃバレるから、アルちゃん使ってこっそりポケットに練薬入れるのが一番出来そうねー」


「ランさん、冗談よね?ランさんの冗談って何処迄が本気か分からないわ。私、ハワード隊長とジロウ隊長のイメージが崩れて来てるわよ?まあ、でもロゼッタさんの噂は少し落ち着いていたわね」



チェルシーさんはリンゴを剥き終わると、八つに切り分けてお皿に綺麗にリンゴを並べた。



「ロゼッタさんは振られないと思うわよ。まあ、噂はそんな事だろうと思ったわ。それより、ランさん、ロゼッタさん、これを見て欲しいの」



チェルシーさんが鞄から出したのは二枚の焦げたハンカチだった。



「薬局の前に落ちてたのよ。その時は綺麗なハンカチだったの。でも、私が触ったらパチッと音がしてね、その後、ハンカチが少し焦げちゃったの。もう一枚は私が驚いて店の前にいるのを、ジョゼッペさんが見てて「あんたもかい?」って言って、手に持ってるハンカチを見せてくれたの。私がジョゼッペさんの分も受け取ってきたわ。ジョゼッペさんが拾ったのは、さっき店の前に出た時ですって」



チェルシーさんはテーブルの上に二枚のハンカチをそっと置いた。



「・・・チェルシーさんが拾ったのも先程?」


「ええ」



小さな焦げたハンカチを私は黙って見つめた。


私は新しい布を使ってそのハンカチを掴む。綺麗に刺繍がされていたハンカチだ。杖をハンカチに向け魔力を出すとハンカチから魔力を感じた。



「コレ、貰っていいですか?あと、チェルシーさんに何か異常は?」


「ないわ。ねえ、この刺繍、私が前持ってきた恋のハンカチの刺繍と同じよ。コレ、恋のハンカチだと思うの。ハンカチの触った感じも同じだわ。私のハンカチは今手元にないから比べられないけど、間違いないと思うの」


「これはチェルシーさんが持っていた物とは違う物です。・・・チェルシーさん、以前渡した御守りを持っています?」


「ええ、財布に着けているの。ほら。あら?色が変わった?」



チェルシーさんは財布を出して御守りを見せてくれたが、御守りの色が綺麗な青と茶色の二色だったのが、淀んだ色になっていた。


私はチェルシーさんの御守りを見つめて声を掛けた。



「少しお借りしますね」



私は魔法陣を出し御守りをその上に置いて考えた。


祝福の重ね掛けは、石が耐えれないかも知れない。私は悩んだ後に、御守りとハンカチに防御膜を掛け、アルちゃんに渡した。


私は魔法陣を消し、うーんと考えてランさんに聞いた。



「ランさん。今、この御守りを祝福したり解析したりはちょっと時間かかりそうです。私ではまだ出来ません。ベンさんが詳しいようなのでベンさんに連絡をして見ます。チェルシーさん。代わりの御守りを作りますので、それを持ち歩いて下さい。今度は悪意、害意を跳ね返すように作りましょう。また変化があったら魔鳩ですぐに教えて下さい」


「ロゼッター、カウンターの棚の奥の石を自由に使っていいわよ。店に来るチェルシーに店からの御守りよー。御守りに必要な石はそこから使いなさいね?」


「ランさん、ロゼッタさん、いいの?遠慮なく貰うけど。今度、何かお礼を持ってくるわ。ロゼッタさんの御守りのおかげで私、助かったのかしら?なんだか分からないけれど、凄く有難いわね」



私はランさんに言われた通りに材料棚からアルちゃんに水晶を持って来て貰うと、チェルシーさんの手を握り強い御守りを作った。



「アルちゃん、有難う。チェルシーさん専用の強力な感じにしますからね。では、悪意を退け、害意を返せ、友人の盾となれ」



杖を振り、魔法陣を出し魔力を一気に流すと辺りに魔力粒子がふわふわと舞った。


水晶に魔力が籠り御守りが出来上がった。



「ふう、これを持ち歩いて下さい。そして、何かあればすぐに連絡を」


「あいかわらず綺麗ね。分かったわ。なんだか怖いわね。でも、ロゼッタさんのおかげで安心よ。皆にも注意するように言っておくわ。また気付いた事があったら教えるわね。あと、関係ない事かも知れないけど、この店に入ったらスッキリした感じがしたの。ロゼッタさんの御守りのおかげかしら?」


「それは師匠の防御膜や祝福やその他諸々の結界のおかげだと思います。このハンカチもこの中にあるうちは安全だと思いますが、一応防御膜で覆ってますので、安心して下さい。私も最近は店周辺を祝福の結界が出来ないかと試していますのでジョゼッペさんの店や、マツさんの店位までは御守りの効果が上がるはずです」


「うわあ、なんだかロゼッタさん、凄いわね」


「そうよー。ロゼッタは凄いのよ。私も皆に魔鳩を飛ばしておきましょー。ちょっと、ジョゼッペさんから小さめの石を仕入れて来るわ、心配してるかもしれないし、大丈夫だって伝えておくわー。ロゼッター、大変だけど、御守りを多めに作ってくれるー?」


「了解です。サミュエル君とチェンさんにも贈りましょう」



私は杖を振り、魔力を溢れさせるとフォルちゃん達をみた。三匹は私の魔力を食べながら、頷いてくれた。



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