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122/237

私の方がふさわしいのに ある令嬢視点 

幕間を追加します。

オースティン国を挙げての魔女のお披露目が行われ、王都はお祭り騒ぎになっていた。




「素晴らしい祝福ね!!」


「ねえ!宵闇の魔女様見れた?とても綺麗な方だったわよ!」


「可愛い魔女様だったなー」


「ねー、ママ。魔女様きれいねー。お空がキラキラしてるー」




私の横で、後ろで、前で、宵闇の魔女、ロゼッタ・ジェーンが褒められていた。



(薬師科の落ちこぼれのくせに!!)




私はその様子を見てイライラが止まらなかった。


王宮のバルコニーから、魔法使い様達や大魔女様に囲まれて魔女のローブを着たロゼッタ・ジェーンが祝福を飛ばしていた。


見たくもなかったが、王都の空を埋め尽くすような祝福は嫌でも目に入った。



(サレ女のくせに)



私が王宮から少し離れた臨時救護所の中に戻ると、そこは怪我人や急病人で溢れていた。


祝福を見ようと押し寄せた群衆の中で気分が悪くなった者や、人ごみで怪我や喧嘩をした者が運ばれてくる。軍団治療師だけでは捌ききれず、王宮治療師の私も駆り出されて、臨時の救護所に詰めていた。



「ガレルさん、何処に行ってたの?新しい怪我人が運ばれたの。腕を洗っておいて、そっちの椅子に座って貰って」



私の一つ上の先輩治療師が私に命令をする。



(気に食わない。平民上がりのくせに、偉そうに指図出すんじゃないわよ)



「・・はい」



私は返事して怪我人を椅子に案内した。平民の男性の腕を洗い、傷口を念入りに濯ぐ。準備が出来ると治療師に声を掛ける。


私が黙って腕を洗っている間も、側にいる女性が心配そうに声を掛け、怪我した男性は顔を顰めながらも、「大丈夫だよ」と話していた。


(大丈夫なら来るんじゃないわよ。なんで私が平民の治療準備なんてしなくちゃいけないのよ)



私はまだ治療させて貰えない。先輩の指示に従って、傷を洗ったり、言われた薬を飲ませたり、治療前の準備をして患者を見るだけ。



こんなはずじゃなかったのに。



学園を出たら、王宮上級治療師として活躍するはずだったのに。


私は腕を洗い終わると、先輩に席を譲り、汚れた布や水を持って臨時救護所の裏手に回った。



祝福が終わってもまだ、熱気が伝わってくる。皆が口々に、ロゼッタ・ジェーンを褒めている。


落ちこぼれのロゼッタ・ジェーンが、灰茶の魔法使い様に名付けをして頂いたと言う。


その上、あの馬鹿女の師匠は伝説の白金の大魔女様。



ありえない。



そこに立つのはあの女じゃない。


私の方がふさわしいのに。


ロゼッタ・ジェーンは王立学園の薬師科にいたとはいえ、成績だってパッとしなかったくせに、美しい魔女のローブを着ていた。


貴族の私の方が家柄だっていいのに。ダレン・ウッドマンだって、私が先に目を着けていたのに。





◇◆◇◆◆◇◆◇





ダレン・ウッドマンはハンサムだったけど、男爵家の家柄でしかも三男だった。


出来れば嫡男が良かったけど、顔は凄く好みの上、明るい性格で運動場で見かけた時にすぐに好きになった。我が家は子爵家だし、私は二女だけど家柄的にも問題ない。私から声を掛けるのは嫌だったけど、ハンサムで明るい性格で、貴族にも平民にも人気者のダレン・ウッドマンなら私にぴったりだと思ったのに。


美人で、成績だって上位の私から声を掛けてあげたのに好きな人がいるからと交際を断られた。


両親にウッドマン家に婚約の打診が出来ないかお願いをしてみたが、両親は子爵家以上ではないと婚姻は認めないだとか、子爵家以下なら金持ちの嫡男ではないと駄目だとか言って話にならなかった。


娘の幸せを願わないなんて、と両親にはがっかりしたが、昔から両親は出来の良い姉ばかり構っていた。私には適当な家庭教師だったのに、姉には一流の家庭教師。見た目が悪い姉の為に、上等なドレス一式を姉は仕立てたのに、私にはドレスだけ。小物は姉に借りればいいと言われた時は腹が立った。


王立学園の魔術科に受かって、治療師の道に進める事になった時は姉に勝てたと思って嬉しかった。姉が家を継ぐ為に勉強をして、パッとしない婚約者と仲良くしてるのも可笑しく思えた。


姉の婚約者は平凡な見た目の背が低い母方の親戚の真面目な伯爵家の次男。



「お姉様は自分で婚約者を選べないなんて可哀そう」と姉に言ったら、姉はふふっと笑って、「そうかしら?とても誠実だし、両家とも仲が良いのは良い事だと思うわ。お婆様のお茶会の時に一目ぼれしたって言われたのよ」と言って頬を赤らめたのが憎らしかった。


私は姉達に興味を無くして、ダレン・ウッドマンが好きな女の事が気になった。



どんな美女なのか、私よりも良い家柄の令嬢なのかと思っていたら、薬師科にいる少し可愛いだけの平凡な女だった。



(はあ?)


(魔力しか能がない女なんかと?)


(私がわざわざ声を掛けてあげたのに、あの女を選んだの?)


(私はあの女より下なの?)



ロゼッタ・ジェーンは薬師科にいるくせに、魔術科の私よりも魔力が多いのも気に食わなかった。


友人に侯爵家の人間がいるのも生意気だった。


魔術科に来ないかと教授に声を掛けられたとも聞いた。


編入なんてよっぽど優秀な者しか認められない。


そんなに優秀なのかと思って調べてみれば、薬師科の成績は中の下。魔術は凄いと聞いたけれど、大した事のない成績で呆れた。


家柄だって調べてみれば準男爵家。要するに、平民。


ダレンは自分よりも下の馬鹿な女に騙されたのね、と思って、ダレンの事もどうでもよくなり、もっといい男を狙おうと思ったが、中々コレと思うような男はいなかった。


学園卒業間近に、受ける試験のランクを上げようと思い、上位王宮治療師試験を受ける事を教授に報告したら渋い顔をされた。



「挑戦するのは良い事だ。ただし、下位治療師試験と同時試験が出来るからそちらで申し込みなさい」



そう言われ、納得は出来なかったが素直に頷き試験に申し込んだ。


私の試験当日は薬師試験の合格発表の日と重なり、王宮でロゼッタ・ジェーンを見かけた。


難関の薬師試験を受けたのか、落ちたのだろうな、と思っていたら、友人から抱きしめられあの女は喜んでいた。



(まぐれよ)



私はイライラして治療師試験を受け、試験は手ごたえを感じたのに上位治療師試験に落ちて、愕然とした。



(は?うそでしょ?)



学園で私より成績が悪かった子が上位治療師試験に受かっていた。



(あの時、ロゼッタ・ジェーンを見たせいだわ!あの疫病神め!)



上位には落ちたが下位の方には受かり、私は学園卒業後下位王宮治療師見習いとして勤務する事が決まった。


納得は出来なかったが、王宮勤務だし、騎士や文官と知り合えればそこで縁が生まれる。学園ではいい男がいなかったけれど、ここでは出会いがあるはずだと思って、気持ちを切り替えることにした。



それに、薬師試験にまぐれで受かっただけじゃ何処にも弟子入りさせて貰えない。ロゼッタ・ジェーンは弟子入りを難航しているはず。ざまあみろと思っていた。


私は下位とはいえ王宮治療師だから、やっぱり優れているのは私なのね、と思った。



それでも、上位に落ちた事は納得は出来なかった。おかしいと思って上位に受かった者を調べれば自分よりも上位貴族が多かったので、きっと、コネで受かったはずだと思った。下位治療師は見習い期間が長くなるし、下位は王宮の外にも治療に行かなくてはならない。上位であれば、王宮勤めの方や高位貴族に治療が出来て、出会いも必然的に優秀な方とになる。



(いつか見返してやるわ)



私がそう思って王宮の外の寮に帰っていると、ダレン・ウッドマンを見かけた。


相変わらず爽やかな顔で学園にいた頃よりも垢抜けていた。


第二軍団の隊服を着ているダレン・ウッドマンは素敵だった。



(あの女がいなかったら私が付き合ってたのに)



私がそっと見ていると、ダレン達は女性がいるお店の話をしていた。



(ああ、ダレンもあの女に飽きたのね)



私は可笑しくなって、それから偶然を装ってダレンに挨拶をした。


三回ほど挨拶を交わした所で、ダレンに、「学園時代からずっと好きだった。告白した後も忘れられない」と言ってデートに誘ったら渋りながらも付き合ってくれた。



その後も、何度かアプローチしてプレゼントを贈ったり、デートを重ねたある夜に、「今日は帰りたくない」と言って、二人で宿に泊まってからはすぐに私に夢中になった。馬鹿みたいで可笑しかった。


結局、あの女より私を選んだのよ。


その後、結局ダレンは異動になり、私との仲も終わったので噂を流してやった。ロゼッタ・ジェーンがサレ女と言う噂が立ってざまあみろと思ってすっかりあの女の事を忘れていたのに、暫くして王宮内をあの女が騎士と一緒に歩いていた。


一緒にいた同僚が「王太子付きの騎士様だわ、素敵ね」と言った事に驚いた。


なんで王太子付きの騎士があの女を案内してるの?王太子殿下に会いに行ける立場と言う事?



(は?どういう事なの?)



気のせいだと思っていたのに、今度はハワード隊長と話をしている場面を見た。第五軍団の若き隊長。国中が知っている、私の憧れの人。ダレン・ウッドマンなんて比べられない。家柄もよく若くして隊長になり、強さと美しさを持つ人。貴族、平民問わず、女性がうっとりとされている。そんな人の隣を、あの女が歩いていた。しかも微笑みかけられて。


あの、魔力だけの馬鹿女のくせに!!!!


ふざけんじゃないわよ!!


こっちは平民の出の上司から教えを請わなくてはいけないのよ。


こんなはずじゃなかったのに。


私は何処迄もロゼッタ・ジェーンが憎くて仕方なかった。





もう一話幕間が続きます。

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