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お披露目のその後で レオナルド王子視点

お披露目が終わってすぐの時です。王族視点の話です。

バルコニーの祝福が終わると、大叔母様から声が掛かった。



「レオとジョージは暇なら玉ねぎ屋に来てもいいぞ。晩餐会は終わっているんだろう?私らで薬局屋周辺は防御膜をがちがちに張るからここよりも安全だ。来たいなら夕方うちの裏の食堂に来ていいぞ。私はもう帰って飲むからお前ら来ても覚えてないかもしれんがな」



私が内心驚いていると、ジェーン様も頷いて、私達にカードを渡してくれた。



「師匠もこう言ってますし、良ければどうぞ。コレを来られる時に見せて下さい。薬局屋のカードですけど招待状代わりにして下さい。住所も乗っています」



ジョージも嬉しそうに受け取り、私も頷いた。



「有難う。行けるかどうか分からないけれど、嬉しいよ」


「街のパーティなんてどんなものだろうね?是非行きたいな」


話しが終わると、あっという間に大叔母様達は消えた。




ジョージはカードを嬉しそうに父上に見せていた。



「父上、パーティーのお誘いですよ」


「大叔母様の誘いなら何が何でも行って来い。この後は私とルーカスでどうにかなるな?」


「ええ、後は個人的に会う者だけでしょう?せっかくですもの。いってらっしゃい」



大叔母様から私とジョージがパーティーに誘われると、父上と母上はその後の外交の割り振りを考え出していた。



「兄上、是非行きましょう。体調は大丈夫ですか?」


「ああ。問題ない。護衛はどうしたらいいものか。大勢で押しかける訳にもいかないな」


「ええ。ロイス隊長、名無しの薬局の裏の玉ねぎ屋食堂に私と兄上を少数で護衛して欲しい。夕方までに準備をしてくれ」



ジョージが近くに控えたロイス隊長に声を掛けると、隊長は頷き口を開いた。



「ハヤシ大隊長から話を聞いています。軍団隊員も少なからず参加するようですので、騎士に準備をさせておきましょう。帰りは隊長達も護衛に付けれますね」


「さ、そういう事なら早く準備をしなさい。急ぎの仕事は夕方までに終わらせておきなさい」


「帰りは遅くなっていい。大叔母様に宜しくな」



父上達の言葉にルーカスが羨ましそうな声を出す。



「ああ、私も行きたかったですね。久しぶりに大叔母様に会いに行きたいな。名無しの薬局にお忍びで行ったら怒られますかね?宵闇の魔女様ともご挨拶が出来たらいいのですが」


「瘤を作られ、叩き出される覚悟があるなら行ってこい、瘤は二つ出来る覚悟でな」


「ええ、私はおすすめしませんわ」



父上は苦笑いをし、母上は少し顔を青くして頷いた。



「ちゃんと事前に連絡をして、お土産持参でいけば瘤は作られませんよ。先に大叔母様には他国の酒と煙草を贈っておきましょう。ジェーン様とラン嬢は何が好きなのかな?贈り物は大切ですからね」


ルーカスは飄々と言い返していたが、母上の顔色は戻らなかった。




父上達との話の後、私は急いで自分の執務室に入り、予備の薬を出すとバッグにしまった。

この薬の味も大分マシになったものだ。



幼い頃は大叔母様に薬を飲まされていた。



「大叔母様、新しい薬ですか?」


「ああん、そうだな。ほら、薬を飲め」


「うええ。なんだが変な匂いがする・・・、変な物が浮いてる・・・。なんで薬がぶくぶくしているの?」


「ヒヒヒ、新しい薬にしてやったからな。味は知らんが、効果は上がったはずだ」


「うげえ・・・」



ヒヒヒ、と笑われながら私は薬を流し込まれ、目を白黒させていたのを思い出す。





大魔女様がおられ、魔法使い様が三人もおられる我が国は他国から一目置かれている。そして新たに魔女様が誕生された。


今回のお披露目では他国の者が恐れと妬みを持って参加していたろうな。


ただ、それを表に出すような愚かな者は自国の代表者として来てないだろうが。


高位貴族も城に集まり、マイネンの後釜を狙う輩の牽制もお互いにしている事だろう、手綱をしっかりと握り直し国の結束を強くしなければ他国に狙われる事となる。



そのような思惑の中で開かれた魔女様のお披露目。



ジェーン様は色々な視線を受け、ホールを歩かれた。使い魔が先頭を歩き、教会に身を置きながらも王族のマリアが続いた。魔法使い様と、賢者とも名高い薬師長が続きさらに使い魔達を脇にジェーン様が歩く。


その後ろには若い軍団隊長が二名続き、最後は大魔女様。


最後を歩く大叔母様は我が子を見守るように、優しい瞳でゆっくりと歩かれていた。



皆が礼を戻した後に祝福が始まっても、多くの者が期待と魔女の力量を見ようとしていた。



(どんなものかな)


(我が国の魔法使いの方が素晴らしいのでは)


(若いな)


(はてさて)



皆の心の声が聞こえてくるようだった。私もわくわくして待っていたのだが。


(なんだ、あれは)


私が見た事もないほどの大きな魔法陣。すっぽりとホールが収まるほどの物。


そして、大魔女様を始め、魔法使い達が魔力を注ぎ、その魔力をいとも簡単に自分の魔力に塗り替えて行った。魔術をかじった物であれば、祝福よりも何よりも、あの姿に背筋が震えただろう。ホールを覆う程の力、他者の魔力を扱う難しさ。何より、一度に魔法使い様達と大魔女様の魔力を練り、自分の色に変えていった。


全てのホールの者の命が宵闇の魔女様の中に握られていた。



わくわくなんて出来ない。ゾクっとした。背を鎌で撫でられたかと思った。



宵闇の魔女様の後ろに三人の魔法使い様がいて、一番後ろに大魔女の大叔母様がいる。


この人達だけで、簡単に国は落とせそうだ。




金色の魔力。キラキラと魔力粒子が辺りに飛び回り、ジェーン様の髪が揺らめていた。ほお、っと誰が吐いたか分からない溜息が聞こえた。




成長しても剣も触れず、馬にも乗れない。役立たずの第一王子。そう言われるのは慣れていた。


幼き頃に命を落とすと言われた私が生き永らえたのは、大叔母様のおかげだ。


変な物がぷかぷか浮いている薬や、死ぬほど不味い薬を飲まされたのは無駄ではなかった。今でも一日に一度は薬を飲むが、大分改良され、少し苦みがある白い粉薬に変わったのは有難い。




私がお披露目を思い出しながら何人かと挨拶をして、仕事の引継ぎをしていると、ジョージとルーカスの入室が知らされた。


ルーカスはソファーに座ると長い脚を組み、ジョージは機嫌よく話し出した。



「兄上、姉上が司教と共に教会代表で外交には参加してくれるそうですよ。私の側近も置いて行きます。姉上の側で今日は使って貰います」


「そうか」


「兄上、今夜の隣国の大臣クラスとの外交は私と第一事務達で行います。隣国の王族関係は父上とタウンゼント宰相が。母上が他国の夫人達と大好きなお茶をすると言われてましたよ。マリアと司教にはブルワー法務大臣がついてくれるそうです。国内の貴族達の相手は明日以降になりました」


「有難う、ルーカス」


「あーあ。二人ともいいですね。やっぱり、名無しの薬局にお忍びで私も行きたいな」



優雅に美しく礼をしたルーカスは羨ましがりながらも側近達に指示を出していた。



「ルーカスの事は大叔母様に伝えておくよ。予定よりは早くに行けそうだ」


「大叔母様だけでなくて、宵闇の魔女様や魔法使い様達にも宜しく伝えて下さい。クリス様と話したかったな。今度、新しい画材を調達するから私が会いたいって言っていたと、兄上伝えてくれますか?」


「ああ、伝えておくよ」



ルーカスは、肩をすくめて、「楽しんできて下さいね」と言うと、部屋を出て行った。




「兄上、準備は出来ましたか?早く行きましょう」



うきうきとした、弾む声でジョージが私を急かす。



「はは、楽しそうだな。待ってくれ、すぐに用意は出来る。後は着替えるだけだ。久しぶりの城下だな」


「兄上だって、楽しそうですよ?気分がすぐれない時はすぐにおっしゃって下さいね。薬は持って行って下さいね」


「分かっている」



私は急いで着替え、弾む足取りで護衛の騎士と共にジョージと玉ねぎ屋食堂にむかった。









レオナルド王子視点はもう一話続きます。

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