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大隊長の訓練 2 

三人の隊長達にウェルちゃんが回復の水をかけ、ポーションを渡して飲んで貰った。皆すぐに元気になり、大きな怪我は無かったようで、腕を振ったり剣を握り直したりしていた。


ほっ。流石隊長達ね。



「いやあ、瞬殺ですよ。参った参った」



頭を掻きながらジロウ隊長が言うと、ハワード隊長が破れた上着を脱ぎながら頷いた。



「はあ、情けない姿をみせないように頑張りましたが、力が違いすぎますね」



首を回しながら、ホーキンス隊長も頷いた。



「こんなに簡単にやられたのはいつぶりですかね、もっと精進しないといけません」



三匹はホーキンス隊長の言葉に、お前ら頑張れよ、と言うように頷いている。


ふふ。ゼンさんとの特訓の成果が出てたわね。それに魔力を毎日ドンドンあげて今は大分大きくなれるようになっているものね。



「ふむ。隊長達と使い魔殿達の相性もあると思う」


ブルワー法務大臣が三匹を見ながら隊長達に言うと、ハヤシ大隊長も頷いた。


「私もそう思います。バランスが良いハワードはフォル殿と、器用なジロウはアル殿と、力と防御が強いホーキンスはウェル殿が良い訓練になるでしょう」


「あー、ハヤシ大隊長、一対一は無理だと思いますがね」


ジロウ隊長がそう言うが、大隊長達は聞かず先程の訓練について話し合っていた。ジロウ隊長の足にはアルちゃんが巻き付いて舌をペロンと出してウインクしていた。



「ふふ。さて、ハヤシ大隊長は私でしょうか?ただし、私は戦いの訓練は、つい先日に白群の魔法使い様にして頂いたのが初めてでして。私なりの戦い方しか出来ません。騎士や隊員の戦いを知りません」


「勿論です。よろしければジェーン様の胸を貸して頂けますか?」


私はハヤシ大隊長に頷いて杖を出し、魔力を辺りに出していく。



「がっかりされないように頑張ります」



ハヤシ大隊長は私の方を向くと勇者の礼をした。私はゆっくりと歩き、見学している人達から十分に距離を取ると頷いた。



ハヤシ大隊長は私にむかってゆっくりと剣を抜くと、構えた。


うわあ、大隊長に剣を向けられる乙女っていないわよね。まあ、私は魔女だけど。怖いわね。


でも、私だって負けられないのよ。師匠が大隊長達を転がしたのなら、私だって転がしてやるわ。


ベンさんのスパルタ特訓もやったんだから。



私は十分に魔力を貯めると杖を胸の前に構えた。



「いいですよ」



私の声と同時に、ブルワー法務大臣が頷いた。



「・・・・始め!!!」



私は地面を靴で鳴らし、特大の魔法陣を出した。ドンドンと魔法陣を出していく。一つ、二つ、三つ。そして薬をマジックバッグから出すと辺りに撒いた。


ハヤシ大隊長は凄い勢いで走り込んでくる。



「守れ膜、土壁、火球」



私の周りに防御膜が出来、辺りに薬を撒いた所から白い煙が立ち込めた。ハヤシ大隊長めがけ、火球が飛んで行った。さらに私達の周りを壁で覆って行く。魔法陣をドンドン出す。


「火球、火球、火球」


ハヤシ大隊長は火球を避け、土壁を避け、私の方に飛び掛かろうとして足が取られた。ねばねば薬が効いたわね。壁のせいで、私への攻撃経路は決まって来る。


ランさん作戦を試してみよう。


「そよ風」


私は移動しながらマジックバッグから小麦粉を出した。クズ石を上に投げ杖を向ける。


「膜、包め、火球」


煙に紛れて膜の中に粉を撒き、自分の周りに防御膜をもう一膜張り、私達を大きな膜でさらに覆う。そして大きな火球を一気に飛ばす。


「弾けろ」


一気に風魔法と同時に火球を投げこむと、大きな爆発が起きた。


どうかしら?と思った瞬間に後ろから殺気がした。私は防御膜で守られたが、急いで土壁をさらに出して守ると、ブーツを脱ぎ若干焦げたハヤシ大隊長が切り込んできた。


流石ね。防御と身体強化をしたのかしらね。普通は息も出来ないと思うけど。魔法も使えるのかもしれない。特別なスキル持ちかも。



まあ、いいわ。ランさん作戦はまだまだある。視界を奪う為に薬を撒いて杖を振る。


「光網」


ハヤシ大隊長が切り込んでくる目の前に光魔法で見えない長く細い網を作り、しなるように鞭のようにイメージをする。私は身体強化で後ろに勢いよく逃げる。


網の根元は地面に魔力でしっかりと根付かせる。


ハヤシ大隊長は構わず私に突っ込んでくるが、網のせいで身体がどんどん重たくなってきているはず。


「!?」


ハヤシ大隊長は私までもう少し、という所でぐぐぐ、っと前に進むのが難しくなり動きが止まった。


「光よ」


私が魔力を網に一気に流すと、網が光り、一瞬驚いたハヤシ大隊長は網の力に押され、ポーンっと勢いよく空に飛んで行った。


「あ、いけない、飛びすぎよ。防御膜にぶつかって落ちちゃう。土壁」


背もたれの有る巨大な椅子をハヤシ大隊長が飛んでいる先に急いで作り、背もたれにバンっと当てて捕まえる事が出来た。


「ふう、危なかった」


私は土壁をゆっくり小さくしていき、地面迄下ろすと私の方に礼をしているハヤシ大隊長と目があった。


「参りました」


「そこまで」


「有難うございました」



ブルワー法務大臣が訓練終了を告げ、私が魔法陣を消して礼をすると皆がポカンと見ていた。オリバー君だけはぴょんぴょん跳ねて喜んでくれた。


ゼンさんがやっていた魔法が使えたらもっとスムーズに勝てたと思うのだけど、ゼンさんはしゃべらないし、魔法のイメージがつかめないのよね。


ランさん直伝の何故爆発するのか分からない小麦粉火球と、強い力がどうのこうの言っていた、光網型投石もどき。


練習通り上手く出来てよかったわ。



「ウェルちゃん、回復してあげて。アルちゃん、ハヤシ大隊長にポーションもお願いね」


「いやはや、戦術が素晴らしいですな。さて、私はどうしたものか」



ブルワー法務大臣はポーションを貰っているハヤシ大隊長を見て頷くと剣を抜き、顎を触りながら考えられた。



「ふうむ、魔法だけを使われるわけではないのですな?」


「ええ、魔法だけで戦うのはしないようにします。今も薬を使いました。私が魔法を使えない事もあるかも知れません。なので、今度は杖が無い場合の戦い方をしましょう。ブルワー法務大臣達が魔術士達と戦う時に一番に狙うのは杖でしょう?そして魔力切れを待ちますか?もしくは近接攻撃でしょうか?なので薬を使う戦い方等を考えました。魔法のみのごり押しでもいいですけど、一対一の訓練では向かないと思います。人に直接使った事がないんですけど、新しい魔法を今度は使ってみましょう。ブルワー法務大臣なら大丈夫かな。もしかしたら杖よりも強力になってしまうかもしれませんが」


「おお、それは楽しみですな」


私の言葉にブルワー法務大臣はギラリと目を光らせた。



「では」



私はマジックバッグからハルバートを出した。モラクスさんに手伝って貰って準備をした、魔力たっぷりのハルバート。


「うわあ、格好良い・・・」


オリバー君の声が聞こえる。


そうでしょう、そうでしょう。


私は両手で持つとさらにゆっくりと魔力をハルバートに流し、闇属性たっぷりのハルバートにしていく。


ふっふっふ、魔王って感じね。恰好良いわ。私の魔力をどんどん流し、黒に金が混じった強そうなハルバートになった。


「ジェーン様が武器を?」


「ジェーン嬢がハルバート・・・あの大きさを使えるのですか?」


「杖を使わないで?」


隊長達の驚いた声が聞こえる。皆、戸惑っているわね。ふっふっふ。



「おお、凄まじい魔力ですな」


「ふふふ。この間、武器屋で購入したどこにでもある武器ですよ。ただし、ちょちょいといじりましたが。杖よりも魔力を扱うのが難しいのですが、杖が無い時の事も考えました。制限は凄くかかりますが、きっと弱くはないですよ。魔法使い様以外にこの武器を見て貰うのは初めてですね。魔法使い様達にも驚かれましたよ」



ブルワー法務大臣はニヤリと笑うと、大きな剣をふん、っと構えた。


「伝説の武器のようですな。儂が初めてのお相手とは光栄の至り。うむ、ダンは回復したか。オスカー、お前が見届けよ」


「は。では、宜しいでしょうか?」


「ええ」


「うむ」



私はハルバートを構え、魔力を辺りに出していく。魔力で髪がふわふわと揺らめく。視界の隅でオリバー君が腕を振り回しているのが見える。



「それでは・・・始め!!」



マジックバッグから薬を出して、辺りに撒いて行く。ポケットに入れていたクズ水晶を辺りに撒き、ハルバードを振り回して貯め込んだ魔力を辺りに散らして行く。



「闇鎌」



闇属性の魔力をハルバートを振り、鋭く飛ばす。ふんっとブルワー法務大臣は剣を構えられると、顔が赤くなっていた。


「どっせい!!!」


気合なのか、力業なのか、ブルワー法務大臣の魔力なのか。闇で出来た鎌を薙ぎ払うと、どすどすと私にむかって来る。


いや、可笑しいでしょ。気合で闇魔法を打ち払ったの?


私はハルバートをくるりと回し、トン、と地面を突いた。



「闇夜」



辺りを暗くし、視界を奪う。私が移動をしながらねばねば薬を撒いて行くが、ブルワー大臣は器用に避けていく。


流石ね。


動物的勘なのかしら。


私は逃げてハルバートの魔力を撒きながらくるりくるりと振り回す。ブルワー法務大臣の剣は風圧が凄い、ビュンビュンと音を鳴らし切りかかって来る。私はそれをふわふわと避けていく。


身体強化を重ね掛けしてるから避けれるけど、これ、一発でも貰ったらやばいわね。


でも、そろそろいいかしら。辺りに魔力を十分に撒き、私の魔力を辺りに充満させる。


大切なのはイメージ。絶対出来る。


クズ水晶を撒いて、ハルバートをくるくると回す。杖とは違って、出来る魔法は少ない。事前にハルバートに魔力を貯め、それを出していく事しか出来ないが、モラクスさんに手伝って貰って出来上がったハルバートは中々使えると思う。今出来るのは闇魔法だけ。


相手にそれがバレたらやり辛くなる。


だから、万が一の場合の火魔法と水魔法をたっぷりとしみこませたダガーはローブの下のブーツに隠している。


さて、避けきるのも難しくなってきた。長引けば一撃でやられてしまう。


私は思い切りブルワー法務大臣から距離を取ると自分に防御膜を重ねて掛けた。


そして、ハルバートを空にむかって勢いよく投げる。



「雷」



空に投げられたハルバートから雷が放たれ、地面に置いていた水晶めがけて雷が落ちていく。



「!!!!!!!!」



ドガアアアアーーーーーン!!!!と言う、凄い音の後は空気が震え、静寂になり、ずしんと、ブルワー法務大臣が倒れた。



「ウェルちゃん、お願い」



「・・・・・あ・・・そこまで・・・・」


「有難うございました」


皆がポカンとしている顔を見ながら私は礼をすると、防御膜を解いた。


ランさんとモラクスさん直伝の雷攻撃の効果は凄いけど、対人相手には難しい事が分かった。モラクスさんが言っていたイメージがまだ弱いのかしら。私の所まで少しピリピリしてしまった。もっと弱く出来たら使いやすいわね。


防御膜をしっかり張ってもこれじゃあ使い勝手が悪い。


私が皆の所に行くと、皆が苦笑いしていた。



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