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大隊長の訓練 1 

晴れ渡る空、気持ち良い風。


ふう、いい天気だわ・・・。



私の心とは裏腹に、天気は澄み渡っていた。



今日はブルワー法務大臣の邸宅の裏庭で大隊長訓練が行われる。


心の中は暗雲って事はないけれど、やっぱり大隊長との訓練はちょっと怖い。こんなにいい天気なら、訓練よりもピクニックの方が良い。



ブルワー法務大臣からは薬局に訪れた次の日に訓練希望日がいくつも書かれた手紙が届いた。ハヤシ大隊長からの手紙も添えてあって、二人がウキウキしている感じが読み取れた。


これ、一日だけでいいのよね。書かれている日、全部とか言わないわよね。


私はちょっと頬をひくひくしながら手紙を読んだ。



そうだ、二人は脳筋だった。良い人で、やり手なんだけど、賢い脳筋だったわ。


ランさんに賄賂も頂いてるし、しっかり訓練頑張らないとと思い、ランさんに相談してなるべく早めの日程で返事を返すと、すぐに折り返しの返事が「楽しみですな!!」と来て、そして本日の訓練日となった。


大隊長の特権を使ったのかちゃんと三人の隊長達も集合するらしい。王太子殿下から手紙も届き、「訓練を頑張って。ポーションバッグはいつでもいいので持って来てくれたら嬉しい」と書いてあって、王太子が脳筋じゃなくて良かったとホッとした。


こういう、気遣いが出来る王太子殿下って良い人よね、優しい王子様だわ。レオナルド王子も良い人だけど、脳魔術?なんて言うのか分からないけれど、魔術に関する手紙がよく届くので頭の中は魔術で一杯の様だった。


ひょっとしてネーロさん(素敵な飛竜)やウィリデさん(これまた素敵なスレイプ)もやって来るかと思ったが、流石に無理だったらしく、お二方はお留守番と聞いた。


私がブルワー法務大臣のお迎えの馬車に乗せられて薬局を出る時は、ランさんから激励を貰った。



「ロゼッター頑張ってー!!ボコボコよー!ロゼッタなら勝てるわー!!ギッタンギッタンのズタボロよー!!」


「何事だ!!戦か!!」



ランさんの声に驚いたお隣のジョゼッペさんが出てきてしまい、私がどこかに戦いに行くかと慌てさせてしまった。


「ジョゼッペさん、大丈夫ですよ。隊長達と訓練に行ってくるだけです。夜には帰って来ますからね」


「そうか、気をつけてな。お土産はいらんよ」



私が二人に手を振り馬車に乗ると、やはり権力とお金を感じるふかふかの椅子であっという間にブルワー邸についた。


ブルワー法務大臣と奥様、それにハヤシ大隊長に迎えられ、ブルワー法務大臣によく似た男性からも礼をされた。



「ようこそジェーン様。本日はご足労頂き有難うございます。こやつは嫡男のオスカーです。今日は見学をしたいと申しましてな。仕事の休みの兼ね合いでギリギリまで分からなかったのですが、こやつは休みをもぎ取ってきおりました」


「オスカー・ブルワーと申します。第二騎士隊事務長であります。宵闇の魔女様、本日は宜しくお願いします」



勇者の礼をし、深々と挨拶をするオスカーさんはブルワー大臣にそっくりだった。おお、事務方なのに体格がいいわね。ムキムキだわ。



「宵闇の魔女、ロゼッタ・ジェーンと申します。私の事はジェーンとお呼び下さい。ブルワー法務大臣とお父君をお呼びしていますが、ブルワー事務長とお呼びしても?ブルワー夫人、本日はお騒がせ致します。こちら良かったらどうぞ、姉弟子からです。傷薬と石鹸の詰め合わせと、まだ売り出し前ですがハンドクリームです。ハンドクリームは来週から売り出します」


「まあ、まだ、売られてないものを?過分な物を恐れ入ります。ラン様、ホグマイヤー様にも宜しくお伝え下さい」



お付きの侍女さんに渡すとブルワー夫人は喜んでくれた。


これで、ちょっとドカンドカンやっても大丈夫かしら。



ブルワー事務長は私に礼をして、頷いた。


「は、ジェーン様のお好きに呼ばれて下さい」


私が頷き、ブルワー事務長と話しているとウェルちゃんが近くの生垣にぴゅっと水を飛ばした。


「うぎゃ」


声と同時に生垣から子供がコロコロと転がり出てきて、ウェルちゃんがさらに水をかけていた。



「「オリバー・・・」」



転がった子供はオリバーと呼ばれ、泣きもせずむくっと起き上がると、タタタっと私達に駆け寄りブルワー法務大臣の所に来るとペコリと礼をした。


「おじいさま、父上、わたしも見学させて下さい!」


これまたブルワー法務大臣に目の色がそっくりな子供が目をキラキラさせていた。


「・・・・ジェーン様。申し訳ない、こやつもよかろうか?」



ブルワー法務大臣が頭を押さえ、私の方に頭を下げながら聞いた。



「しっかり挨拶をせんか」


「オリバー・ブルワー、七さいです!よいやみのまじょさま、はじめまして!」


「宵闇の魔女です。宜しくお願いしますね、もう、一人も二人も一緒ですよ。でも、期待されている所、申し訳ないですが大した事は出来ないかもしれませんよ」


「愚息が申し訳ない。オリバー、後でしっかり説教だ。その前に見学だけはさせて貰え。こんな機会はないからな」


「はい!父上!あとで、しっかりしかられます!」



七歳で挨拶もしっかり出来るし、良い子だわ。ほっぺも可愛いし触らせてくれるかしら。


私達は挨拶をかわし、やっと裏庭の方へ歩いて案内をされた。



まあ、広い。



貴族街の端の方と言う事もあるけれど、それは裏庭がちょっとした公園の様だった。裏庭に到着すると、メイドさんや執事さんもいて、お茶の準備等もされていた。


この広い庭は、訓練の為だったり、何かあった時の避難場所にも使う予定らしい。



「何かありましたらそちらの者達に申し伝え下さい。では魔女様、ごゆっくりどうぞ」


ブルワー夫人はそう言うと、礼をしてブルワー邸の方へ帰って行った。



「ジェーン嬢、今日は宜しくお願いします」



ジロウ隊長、ハワード隊長、ホーキンス隊長は軽く運動をしていたのか、少し汗をかいていた。



「皆さん、今日は宜しくお願いします。さて、どういう風に訓練をしましょうか。まずは私の使い魔ちゃん達だけでお相手します?」


「おお、早速参りますか。誰が一番槍かな?」


「一対一でいきます?三匹対隊長三人にします?」


「おお、それもいいですな。最初は一対一が良かろうか。隊長達はそれで良いかな?」



隊長達は顔を見合わせ、頷いていた。



「ジェーン嬢は抜きですね?分かりました」


「ふふふ、三匹は強いですよ?皆、いい?隊長達をボコボコよ?攻撃していいからね。この間教えた物も使っていいわよ。皆強くて素敵よ、頑張ってね」



私が三匹を撫でると三匹は目を細め、やる気に満ちていた。



「いや・・・ちょっとは手加減してもいいんじゃないですかね?」


「ジロウ隊長、ホーキンス隊長、私がウェル殿と」


ハワード隊長が剣を抜き、ゆっくりと構えた。


「では私がアル殿と」


ホーキンス隊長は槍をぶんぶんと振った後に、アルを見つめ礼をした。


「じゃあ自分がフォル殿ですね」



ジロウ隊長がフォルに礼をすると皆が間合いを取り、私もゆっくりと後ろに下がり魔法陣を出した。



「防御膜を張ります。ルールの一つで防御膜の中で戦って下さいね、邸宅の弁償なんて嫌ですよ」



杖を振り特大の防御膜を張り、見学の人達の周りにももう一つ膜を張った。私はゆっくりと皆が見学をしている場所まで移動をし、オリバー君の横に立った。


オリバー君がキラキラした目で私を見る。



「いい子に見学をしましょうね」



私が言うと、拳を握り込み頬を染めこくりと頷く。可愛い。



「では宜しいな。いいな、ルールは降参するまで、相手が戦えなくなるまで、大けがせぬよう、殺すのも駄目だ。使い魔殿宜しいか?」



三匹は私を見て、私が頷くと三匹も頷いた。



「では・・・・・始め!!!!」



ハワード隊長は一気に間合いを詰め、ウェルちゃんに飛びかかった。ウェルちゃんは飛んで逃げずに同じように飛び掛かり、ハワード隊長の剣を避けながら水矢を出していった。


ハワード隊長は剣で弾き、横によけて逃げ、飛び掛かって行く。


「ほお、やりますな」


ハヤシ大隊長が頷きながら呟いた。



ホーキンス隊長は槍を構え、ゆっくりとアルちゃんにむかい、勢いよく突いた。アルちゃんは、身体の形を変え、しゅるんと避けると、闇魔法を出し、ゆっくりとあたりを暗くしながら影を鞭のようにしならせ、ホーキンス隊長に攻撃を開始した。ホーキンス隊長は槍を上手く使い、鞭をはじいては突きを繰り返した。



ブルワー法務大臣はホーキンス隊長達を見て腕を組みながら、「ふむ」と言い、満足そうに頷いた。



ジロウ隊長はゆっくりとフォルちゃんの周りを移動し、飛び掛かって行った。


フォルちゃんも避けて飛び掛かり、お互いが攻撃を繰り返しては間合いを取り、激しく移動を繰り返していた。


「ほう、なかなか」


ブルワー事務長も頷き、訓練を嬉しそうに見ている。


暫く攻撃の掛け合いが続き、私は三匹の方に声を掛けた。



「やっぱり、隊長達は強いですね。みんなー、少し大きくなって良いわよー!!武器も使っていいわよー!!」


私の声に三匹は魔力をぶわっと膨らませると、一回り体を大きくさせた。隊長達は驚き一瞬動きが止まった。


ウェルちゃんは風魔法に水矢を混ぜ、水矢と一緒に攻撃を始めた。勢いよくハワード隊長に攻撃をし、頭上から飛び掛かってダガーを浮かせると一斉に打ち込んだ。ダガーや水矢を剣で弾いて守ったハワード隊長の腕を嘴で咥えると、思い切り放り投げ、水矢をさらに放った。


ガードはしたが、ハワード隊長は勢いよく攻撃され、そのまま土ぼこりをあげながら地面に激突した。



アルちゃんは霧を勢いよく出すと、ホーキンス隊長の影に移動し、足元から槍を鞭でかすめ取ると、鞭をもう一本出して、ゆっくりとホーキンス隊長を絞めていき静かに気絶させた。


フォルちゃんは、ウォンと大きく鳴き身体強化をし、身体の蜂蜜色を少し濃く変えそのままジロウ隊長に目にも止まらぬスピードで突っ込んだ。ガードをしたもののジロウ隊長は近くの木に勢いよくぶつかって動かなかった。



「・・・・そこまで・・・・」



口をポカンと開けたハヤシ大隊長と、ブルワー事務長、腕を振り回しぴょんぴょん飛んでいるオリバー君を見て、私はにこっと微笑んだ。


「みんなー。よくやったわ!素敵よ!」


私が三匹を褒めると、身体を元の大きさに戻した三匹は褒めて褒めてと私の周りにやってきた。


「さて、では、次はハヤシ大隊長ですか?」


私がニコリと微笑むと、ピシっとハヤシ大隊長が私に礼をした。



明日も投稿致します。

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