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ベンさんとゼンさん 

私が中庭で杖を振り、水と風魔法の練習をしているとベンさんがひょっこりとやってきた。



「あー、いたいた。ロゼッタちゃん、ケーキ買ってきたよ、食べる?」


「ベンさん、おかえりなさい。お茶淹れましょうか?フォルちゃんに防御膜を解いて貰いましょう。ケーキ、食べます。屋台の揚げ菓子もまだありますけど、ベンさんも食べます?」


「いいねー、食べようー」



私がお茶を淹れ、ベンさんが椅子に座ってケーキをお皿に出してくれていると、ゼンさんもやってきた。



「・・・・・」


「あ、ゼンさんもおかえりなさい。お茶いかがですか?お菓子もありますよ」


「ゼンもケーキ食べる?おいでよ。美味しいよ」


フルーツのケーキが色々並び、テーブルの上は華やかになった。


「・・・・・」


こくりと頷いたゼンさんは椅子に座りフードを脱いだ。

ケーキをお皿に乗せてゼンさんの前に置くと、ゼンさんは頷いた後、ゆっくりと食べだした。


「ロゼッタちゃんはお出かけしてたの?」


「ええ、ジロウ隊長と。素敵なグラスを買ってきましたよ、私の契約者さんから勉強を教わっているので、勉強代が色々いるんですよ」


「ふええ、凄いね、知識を授けられてるの?まあ、ロゼッタちゃんだからね。ジロウ君とデートだったんだ」


「え?あ、そうかな、デートだったのかな?グラスのお店に連れて行って貰ったから、デートとは思いませんでしたよ。なんだか、慰め会みたいな終わり方でしたけど・・・。大人って大変ですよね・・・」


「・・・・・」


「今度僕らともデートしようね」


「はい是非。ゼンさん、このケーキ美味しいですよ、フルーツ好きですか?ベンさん、このケーキは新しいお店ですか?」


ゼンさんがケーキを食べてコクリと頷く。


「・・・・好き・・・・」


「いや、貴族街の近くの昔からある店だよ。予約してないと買えないんだ。ほら、ゼンも沢山食べなよ。ロゼッタちゃん、何か辛い事があったの?慰め会って?」


「ああ、だから食べた事ないんですね。私ではなく、ジロウ隊長の慰め会です。先程お出かけ中に貴族女性にロックオンされてました。お相手の女性は既婚者でして、ジロウ隊長は愛人としてモテるって困ってました。私は一人の人と末永く一緒にいたいです」


ゼンさんがこくりと頷く。


「うーん、そうだね、貴族でも愛人がいない夫婦もいるよ。きっとそのご夫人が強烈なだけだよ。それにしても、ロゼッタちゃんがいるのに誘うんだ。ふーん。何処の誰か分かる?」


「えっと、ジロウ隊長と学園時代のお知り合いですので、歳はジロウ隊長と同じ位の方ですね。子爵夫人でした。名前はなんだったかな。家名はレモンかアーモンド、みたいな美味しそうな名前でしたよ」


「あ、レモンのタルトあるよ。ふーん、ロゼッタちゃんは横にいたの?」


「いいえ、私は馬車の中で。ジロウ隊長が乗り込もうとした所を話し掛けられたので、私はお会いしていませんよ。窓から覗いていましたが、女性は帽子を被っていましたし顔は見ていませんね」


「ふーん、そっか」


「・・・・」


パクリとケーキを食べてもぐもぐしながら考える。


「でも、色々ですよね。最近は積極的な女性が多いんですって」


「そうだよ、色々だよ。ロゼッタちゃんが積極的になるの?いいんじゃない?ねー、ゼン」


ゼンさんがコクリと頷き、アルちゃんと何か喋っていた。


「ベンさんとゼンさんはお出かけでしたか?」


「うん。僕は商家に頼まれごとがあってね。王都にいる間はこっちの仕事をしようと思うし。まあ、ちょくちょく転移で戻って弟子の様子も見ないといけないけどね」


「ああ、お弟子さんが一人で留守番されてるのなら心配ですね」


「・・・・」


ゼンさんが杖を振ると、鳥が集まって来た。


「ゼンも王都にいる間は動物達の様子を見ているみたいだよ。世界は人間だけの物じゃないからね、ゼンは動物から様子を聞いてるんだ」


「成程」



ゼンさんの周りには鳥が集まり、皆仲良さそうにピピピ、とゼンさんに話していた。



「ロゼッタちゃん、さっきは風魔法の練習していたの?」


「ええ、あ、そうだ、今度ブルワー法務大臣達と訓練があるんですけど、その前に私の訓練に付き合って貰えませんか?大隊長や、隊長も参加するので、情けない姿は見せれないですから」


「いいけど、僕で、ロゼッタちゃんの相手になるかな?使い魔ちゃん鍛えるのはゼンがいいと思うよ?まあ、僕は小技が得意だから、戦術の助けにはなるかなあ。ケーキ食べたら、原っぱに移動して、身体を動かそうか?ホグマイヤー様からも、動けってよく言われるしね」


「・・・・・」


ベンさんがお腹をぽんっと叩いて揺らして、ゼンさんが頷く。


「え、早速?いや、有難いですけど。そうですね、私も少し動かないといけません。私も必殺技もあるので、見て頂きたいですよ。ふっふっふ」


「いいね、ゼンも、頑張るよねー?」


「・・・・頑張る・・・・」


「私も負けませんよー!みんなも頑張ってね!さ、ケーキを食べて頑張りましょう!」



それから残りのケーキをもぐもぐ食べ、ゼンさんとベンさんに転移で原っぱに移動して貰い、私は容赦なくベンさんの攻撃を受け続けると言う訓練をした。


「どんどんいくよー」


「ベンさん、私が思ってた訓練とちょっと違います!うわあーーーー!!」


考え事なんて出来なくて、私は闇魔法もなんでも使って、とにかく魔法を無効化したり避けまくった。


「凄いねー。結構本気でしてるんだけど、ロゼッタちゃんに全然当たらないね。無効化も上手だね」


「・・・・・」


「ゼンさん、頷いてないで、助けてくれていいですよ?」


わあわあ言って、ベンさんが気のすむまで魔法攻撃を避けまくって、無効化しまくって、魔法を避ける練習は終わった。


「ベンさん・・・。よく考えたら、今度の訓練は魔術士がいないので、魔法を避けたり無効化の練習は必要ないと思いますけど・・・」


「分からないよ?よーし次の練習をしよう。ロゼッタちゃんの攻撃の練習だね!」


ベンさんにいわれるがまま、私は魔法陣を何個も出して、水魔法をベンさんが出した火球に正しく当てていく訓練や、風魔法のみを使って、ベンさんの水矢を避ける訓練等をした。


ベンさんって見た目に依らず、すごくスパルタ。


でも、相手がいる魔法攻撃を使った事が無いから、少しだけ楽しい。


それからは新しい魔法を見て貰ったり、ベンさんが逃げるのを傷つけずに捕まえる訓練なんかもした。


「ロゼッタちゃーん。ロープを出して、僕を掴まえてみて?怪我させないように、抵抗できないように。出来るかな?」


「むうー。逃げて抵抗する人を怪我させずに、捕まえる?怪我させていいなら簡単ですけど・・・。うーん」


モラクスさんに習った霧の魔法を使ったり、べたべた薬を使ったりして作戦を練ったが、私が薬を出す時に間違えてクッキーの缶を出してばらまくと、ベンさんはクッキーに寄って来て、私はそこを土魔法とロープで掴まえた。


「うわあ、捕まっちゃった。罠にかかっちゃったよ」


「・・・。うーん、掴まえたけど、クッキーのおかげですから複雑ですね・・。でも、やっぱり罠は有効ですね」



使い魔ちゃん達はゼンさんに相手をして貰った。ゼンさんは土魔法と闇魔法を混ぜたような魔法を使っていた。


「・・・・重くなれ・・・・」


「凄い、なんですか?なんでみんな動きが鈍いの?身体強化の逆みたいなかんじですか?」


私はゼンさんと使い魔達の訓練を見て、ベンさんに聞いた。


「ランちゃんに聞いたら分かると思うよ?」


「ああ、成程。では私は聞いても分からない奴ですね。よく分からないけど凄いって事ですね」


「うん、そうだね」


ウェルちゃんは飛ぶのもきつそうだ。フォルちゃんが身体強化をして動き、アルちゃんは影に逃げ、ウェルちゃんは風魔法を使い、魔法の範囲外に逃げようとした。


「凄い、みんな考えてる」


「・・・軽くなれ・・・」


今度は一斉に皆が動きが速くなったが、制御が難しいようで、バランスが取れていない。

それでも、ゼンさんにむかって皆が一斉に動いた。


「・・・・網蜘蛛・・・・」


皆が一斉に網に絡めとられ動きを封じられると、ゼンさんが杖を振り訓練は終わった。



「ロゼッタちゃんの子達もがんばったね。凄いよ」


「ええ、皆頑張ったわね」


皆もへとへとになるまで頑張ったが、ゼンさんには叶わなくて、それでも訓練後はとても楽しそうだった。


「それにしてもゼンさん凄いですね・・・。三匹相手にして・・・」


「・・・・疲れた・・・・」


そう言ってゼンさんは三匹を見たけど、表情はとても優しくて三匹はゼンさんにしっかりお礼を言っていた。



「あ、ゼンも全力出した?僕もだよ。本気で訓練しないとあっという間に負けちゃうよね。もう少し、先輩魔法使いとして負けないようにしないとね。ふー、運動したからお腹空いちゃった、帰ったらマツさんの所に行こうかなー。ゼンも一緒に行こうよ」


私がくたくたになってる横で、お腹を触りながらのんびりと言うベンさんはやっぱりすごいと思ったし、黙って涼しい顔でこくりと頷くゼンさんも変わらず凄いと思った。


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