武器の扱い方、サミュエル君との訓練
本日二回目の投稿です。
私は武器を買い終え、冒険者ギルドを出た。
ふっふっふ、良い買い物が出来たわ。
「サミュエル君、お願いがあるのですが」
「ロゼッタ様、なんでしょう?」
私は後ろを振り向き、帽子を深く被ったサミュエル君に向き直った。
「サミュエル君の時間があるなら、薬局の裏庭でこの武器を使ってみてくれませんか?どんな感じか見てみたいのです」
「えっと、上手く使えるか分かりませんが、いいですよ。一通りは使えますので」
「有難うございます!助かります!」
「それにしても、ロゼッタ様は珍しい武器をお選びになりましたね・・・」
「私は剣や弓を使うのは無理のようでしたから、どうせ無理なら格好良い物が良いと思いまして!アルちゃん達が興味を示した物がいいですしね。では、薬局へ行きましょう!」
私はウキウキと薬局に戻った。ランさんは苦笑いしているサミュエル君を連れている事に驚きながらも、携帯食料の売り上げとポーションバッグを渡すと喜んでくれた。
「ランさん、急ぎの注文の時は呼んで下さいね。裏庭でちょっと特訓をします」
「了解ー。明日はお店休みだし急ぎは無いわよー。沢山売れたわねー。サミュエル君も頑張ってー。あ、王宮から早速返事が来たわよー、侍女さん達に刺す花はオリーブがいいですってー。花はどんなものかしらねー?」
「ラン様、こんにちは。オリーブの花は白い花が多いですよ。図案を後ほど送ります」
「あ、サミュエル君、明後日にでもウェルに取りに行かせますので、送らなくていいですよ。魔鳩のお金がもったいないですからね。では、裏庭に行きましょう」
私がそう言うと、うんうん、と頷くランさんにサミュエル君は礼をして店の奥の材料等を興味深く見ながら私の後ろをついてきた。裏庭に出ると、フォルちゃんが防御膜を張り、皆はいい子に私の前に並んだ。
私は先程買った武器を裏庭のテーブルに出していった。大きな武器はテーブルに立てかけるように置いて、サミュエル君を見た。
サミュエル君もテーブルの前に来て私の方を向いた。
「サミュエル君、ではお願いします」
私がサミュエル君を見てダガーを渡すと、サミュエル君は迷いながらも受け取り説明を始めてくれた。
「えーっと、ではまず、ダガーですね。ダガーはこう持ちます。そして、武器の特徴としては近接攻撃ですね。スピードが重視されます。力よりもスピード重視で、手数で勝負と言う感じですかね。あとは、隠し持つ事も出来るので、身体のどこかに隠し持ち、いざと言う時に使うという武器だと思います。投げたりして、敵の注意を反らしたり、メイン武器と合わせ持つ戦い方をする方が多いと思います。ダガーをメインで使う人はもう少し大きなダガーを選びます。まあ、そうすると双剣として使うので、それは違うのでここではおいておきますね」
サミュエル君はダガーを右手に持つとポンと投げて左手でキャッチした。
おお、凄い。簡単にしているのがプロっぽいわ。
「ふむ。サミュエル君、フォルちゃんにダガーで攻撃をお願いします。出来れば色んな攻撃をお願い出来ますか?フォルちゃんは攻撃しちゃダメよ。皆もちゃんと見ててね」
「ええ!?では、いきます・・・」
サミュエル君は長いシャツを脱ぎ、ダガーを両手に持ち何本かベルトに挟むと、帽子を脱いでふっと息を吐いた。
その瞬間、サミュエル君の耳がピンと立ちゆっくりとしゃがんだかと思ったら、ヒュンっという音と共に地面を蹴り、フォルちゃんの後ろに飛んだ。地面を蹴りながら、移動し、飛び掛かって攻撃を繰り返し、フォルちゃんが逃げた所にダガーを投げ込んでいった。フォルちゃんはしっぽで弾きながら飛んだりして避けていった。
「うわあ、凄い・・・」
早くて、目で追うのが大変だ。最後のダガーを投げ、フォルちゃんが避けるとサミュエル君は動きを止めた。
「と、まあ、ダガーはこんな感じです。流石はロゼッタ様の使い魔殿ですね」
「凄い・・恰好良い!!フォルちゃんも強かったわよ。サミュエル君、モーニングスターをお願いします!」
私がモーニングスターを差し出すと、サミュエル君は投げたダガーを拾いテーブルの上に置いて頷いた。
「モーニングスターは、主に打撃です。大きさは色々あったり、形も若干変わったりしますが、力を重視する方の武器でしょうか。力自慢の方が持っていたり、南の国の部族や海賊が好んで使ったりもあったようですね。冒険者の方は剣ではなく打撃で攻撃を好む方もいます」
「アルちゃん、攻撃は駄目よ」
「では、いきます」
サミュエル君はモーニングスターを両手で持つと、助走も無しに真上に飛び上がった。アルちゃん迄、一気にモーニングスターを振り落ろし、アルちゃんが避けるとそこを突いた。何度かタイプの違う攻撃を繰り返してサミュエル君は止まった。
「これがモーニングスターです。最後はハルバートですね。これは騎士の方が主に使うので冒険者は使う事が少ないのですが、槍に一番近いでしょうか?斧にも似ています。槍が得意な方が上手く使えると思いますよ。バランスが難しいのと瞬発力、腕力が要りますね」
「ウェルちゃん、頑張ってね」
サミュエル君は大きなハルバートを持つと、ゆっくりとウェルちゃんに近づいた。ウェルちゃんめがけて地面を蹴るとハルバートを正面に突き出し、ウェルちゃんが飛んで避けると真上に振り上げた。ウェルちゃんが避けると連続で突きを繰り出し、薙いで、払い、突いた。
「と、まあ、こんな感じです」
「サミュエル君凄い!恰好良いですよ!!皆も素敵よ!!」
「え・・・そうかな・・・」
サミュエル君はもじもじして、ハルバートをテーブルの上に置いた。尻尾もふよんっと揺れているのが見えた。三匹の使い魔達も満足そうにしていて、やるじゃないか、と言う感じでサミュエル君を見ていた。
「なんだか私も頑張れそう!サミュエル君って力持ちなんですね!ジャンプの凄さはパーティーで知ってましたが、強いのですね!」
「えっと、半獣人だからですかね・・・。獣人は力が強い者が多いですから・・・」
可愛くもじもじして恥ずかしそうにするサミュエル君が、モーニングスターを振り回すのは驚いたけど凄かった。
「成程、素敵でしたよ。サミュエル君、時間があるならお茶にしましょう?お菓子もあるので食べて下さいね。武器の事をもう少し教えて下さい」
「はい、今日はゆっくりして良いっていわれているので。頂きます」
その後、アルちゃんは闇魔法を使ってモーニングスターを掴むと振り回し、ウェルちゃんは風魔法と一緒にダガーを浮かせて投げれるようになり、フォルちゃんはハルバートを使いたかったようだが諦め、しっぽを膨らまして二匹の攻撃を受ける盾を作っていた。サミュエル君は三匹にアドバイスをしたり、攻撃を上手く避ける方法等を教えていた。
「うん、これで隊長達やハヤシ大隊長もやっつけれそうね」
「え?」
「今度、ハヤシ大隊長と元大隊長のブルワー法務大臣、それにパーティーにも来ていたジロウ隊長とハワード隊長、あと、第二軍団のホーキンス隊長と訓練があるのですよ。だから魔法が使えない場合も考えて物理攻撃が必要かなと。サミュエル君のおかげでいい感じになってきました。ふっふっふ」
「え・・・?ジロウ隊長とハワード隊長?パーティーに来ていた隊長達ですね?・・・ロゼッタ様と踊っていた?金髪と黒髪の?・・・喜んでお手伝いします。ロゼッタ様が二人共やっつけていいと思います。使い魔さん達も頑張ってやっつけましょう!」
サミュエル君の眼がギラリと光り、三匹の方を見て話し掛けると、三匹もニヤリと笑い力強く頷いていた。
「ダガーも大きさは色々あるのですが、ロゼッタ様が買われた物は比較的小さな物なので、ロゼッタ様も使えると思います。ローブの下にも隠せますし隊長達に投げるのが良いかと。ブーツや足に鞘ベルトを着けて隠し持ったりもします。抜き身では危険ですのでしっかりと鞘を確認されてつけられて下さい。鞘ベルトは防具屋や武器屋で売っています」
「おお、なんだか恰好良いですね、隠し武器ですね。私はハルバートを使いたいです」
「ハルバートは懐に入られると弱いので、二本はダガーを隠し持つのが良いかと。ダガーは、鎧の隙間からグサッとする目的もあります。隊長達はやっつけていいと思います」
「うわあ・・・。なんだか怖いですね。うん、ダガーは万が一の隠し武器にしましょう。隊長達とは訓練ですので、グサッとはしませんよ?あと、サミュエル君の好きな色ってありますか?」
可愛いサミュエル君だけど、容赦なくアドバイスをくれる所は流石だわ。きっとご実家の武器屋も立派なのね。
グサッとはちょっと怖いけど。
サミュエル君は小さな声でぶつぶつと呟いて、近い・・・持ち上げた・・・刺していいとか、聞こえたけど私と目が合うと、可愛く微笑んでくれた。
「僕ですか?ロゼッタ様の色が好きです。青はロゼッタ様の濃い紺色も、夜の訪れの黄金色が混じった色も好きです」
サミュエル君は頬を少し赤くしながらお茶を飲んだ。耳がピコピコ動いて可愛い。
サミュエル君、仕草が本当に可愛いけど、凄く強いのよね。
その後もサミュエル君は使い魔達に武器の使い方を教えてくれ、一通り使い魔ちゃん達が武器の使い方を覚えると、いつでも訓練に付き合いますよ!と言ってフラワーコットンに帰って行った。
私は店に入り王太子殿下とブルワー法務大臣にポーションバッグが出来上がった事を知らせた。王太子殿下には携帯食料は食べすぎると太るかも知れませんと付け足した。
私はキムハン副隊長にも手紙を書き、第五軍団のお世話になった皆の分のポーションバッグと手紙を書いて渡して貰うように頼んだ。
ブルワー法務大臣からはすぐに返事が届き、夜に薬局に伺います、との事だった。