パーティーの後
軍団隊員が多く参加していたので隊員達がパーティーに来ていた人をそれぞれ家まで送ってくれることになった。
「ジェーン様、本日はパーティーに招待して頂いて嬉しかった。先程話した、私が魔法属性について研究したレポート。よければ今度意見を聞かせて頂きたい」
「ええ、いいですよ、私の意見で宜しいなら魔鳩で送って下さい」
「有難い。早速送らせて貰おう」
レオナルド王子が私に挨拶をし、ジロウ隊長とハワード隊長も王宮に戻られると言う事で騎士の方達と一緒に護衛についていた。
「素晴らしいパーティーでした。お土産まで頂いて嬉しいです。姉上と兄上が喜びます」
王太子は帰る時にランさんからワインとケーキ、その他諸々が入った籠を貰って、お土産の籠を自分で持ち嬉しそうに中身を覗いていた。
「私も楽しかったです。気をつけてお帰り下さいね。フォルを付けますが、皆さんが帰られるまでウェルも王都の上空から見守りますから」
「ああ、有難う。ジェーン様、何か困った事があればすぐに魔蝶を送って欲しい。微力ながら力になります」
王太子は微笑まれると、馬車に乗り込み王宮へと帰って行った。
「ロゼッター、明日迄お店はお休みだからねーまた明後日ー!」
沢山飲んでいたのに、スキップしそうな足取りでリーさん家族と一緒にランさんも帰って行った。
挨拶をされ、手を振られ、皆はわいわいにぎやかに帰った。
玉ねぎ屋に戻ると、広い食堂ががらんとしていて音楽団の人も帰り支度を始めていた。私は空っぽのグラスが沢山乗ったテーブルと、散らかった食器を眺めた。
楽しかったパーティーの後はなんだか寂しい気持ちになる。
私が空のグラスを一つ持って、テーブルの隅に置いていたらマツさんから睨まれた。
「片付けは私の仕事だよ、それに今日はもう私も寝るよ。片付けは明日にするさ。ロゼッタちゃんは魔法使い様達や、ホグマイヤー様を連れて帰ってくれれば一番だよ」
「はい、今日は有難うございました、とっても楽しかった」
「ああ、開店以来の売り上げになったよ。こちらも楽しかったさ。今日はゆっくりお休み」
マツさんはそう言うと、私からグラスを受け取りゆっくりと私に礼をして「いい夢を」と言ってくれた。
「師匠、起きれます?帰りますよ」
「うエ?もう、飲めねエ・・・」
「ベンさん?立てますか?」
「うーん、お腹一杯だよ・・・」
「クリスさん・・・も、駄目ですね・・・」
私はマツさんに頷くと、ぐでんぐでんになっている師匠達に声を掛けて回った。クリスさんもいつの間にか紅茶にお酒を入れて飲んでいたのか、ほんのり赤い顔で寝ていた。
もう、さっさと回収して帰ろう。
「アルちゃん、魔力を分厚く作れる?こんな毛布みたいな感じよ。その上にクリスさんとベンさんを乗せて浮かべて帰りましょう。ドアを通れるように二つ作ってそれぞれ乗せましょう。ギルちゃんは大きくなって師匠を乗せてくれる?師匠の工房に連れて行って寝かせてあげて。後はお任せするわね」
アルちゃんは頷くと闇で毛布のような魔力を出した。その上にゼンさんに手伝って貰ってクリスさんとベンさんを乗せた。アルちゃんはクリスさんのイーゼルや皆の荷物をパクリと食べると私の方を見た。
ギルちゃんを見ると大きくなって器用に師匠を乗せ、ゼンさんが師匠のポシェットをギルちゃんに持たせていた。
「では、帰りますか。ゼンさんは大丈夫ですか?お酒は飲みませんでしたか?」
「・・・・飲んだ・・・大丈夫・・・」
「では、皆さん今日は有難うございました」
玉ねぎ屋にいる人達に手を振って私達は店を出た。
フードを外したゼンさんはゆっくりと頷くと、ドアを開けアルちゃんを通しギルちゃんもふよふよと着いてきた。
名無しの薬局に着くとギルちゃんはふよふよと工房へ消えて行き、アルちゃんは私の指示を待っていた。
「どうしましょう、ゼンさん。ベンさんとクリスさん何処で寝かせましょうか?」
ゼンさんは少し考えると、アルちゃんの方を向いて指をさしていった。
「師匠二階・・・ベンさん・・休憩室・・・俺、工房・・・」
「了解です、アルちゃん、分かったわね?ベッドに下ろす時は優しくね。出来れば毛布も掛けてあげて」
アルちゃんは頷くと休憩室に入って行き、出てきた時はベンさんはいなかった。そしてクリスさんを連れて二階へと行った。
「・・・・・・」
「私はお茶淹れてから寝ますけど、お茶のポット持っていきます?シナモンたっぷりのホットミルクの方が寝る前にはいいですかね?ゼンさんも今日は朝から疲れたでしょう?」
「・・・お茶・・・」
ゼンさんはゆっくりと頷くとポットを受け取り階段下の工房のドアの方へ目線を向けた。
「あ、どうぞどうぞ、寝て下さい、私も歯磨きしたらすぐに寝ます。今日はお疲れさまでした、バタバタの一日でしたね。ふふ、ゼンさんとは今日の朝に合ったばかりなのに凄く濃い一日ですよね。お休みなさい、また明日」
私が挨拶をするとゼンさんも頷き、ゼンさんは真っすぐに私を見た。ゼンさんの眼は瞳孔が少し縦に長い。
「・・・・ロゼッタ・・・・」
「はい?」
「・・・・・怖くない?・・・・・」
「ゼンさんがですか?怖くないですよ?」
ゼンさんはゆっくりと頷き、少し口元を上げ微笑むとゆっくりと目線を私から外した。
「・・・・おやすみ・・・・いい夢を・・・・」
「おやすみなさい、ゼンさん、いい夢を」
ゼンさんは頷くと、師匠の工房に入って行った。
私はお茶の入ったポットをアルちゃんに持たせ、歯磨きをすると二階に上がりベッドにボフンと寝転がった。
寝転がって、ウトウトと今日の一日を思い出した。
私は杖を出し、杖を振って魔力を撒いた。
「今日はお疲れ様、忙しい一日だったわね。でも、楽しかった。アルちゃん、フォルちゃんとウェルちゃんが帰ってきたら窓を開けてあげて。あと、そこのカップにお茶を淹れてくれる?」
アルちゃんは頷くとベッドサイドに紅茶を準備してくれてた。
「明日からもまた、頑張りましょうね。アルちゃん、ちょっとだけモラクスさんの本を出してくれる?」
アルちゃんがぺっと、モラクスさんの本を出すと私は本にも魔力を注いだ。
「モラクスさーん、無事にお披露目終わりましたよ。今日はもう寝るので魔力だけあげますね、出てこなくていいですよ。また詳しい話をしますね」
私が魔力を注ぐと、アルちゃんがまたパクリと本を食べた。紅茶を飲んで今日の一日を思い出していた。
「濃い一日だったわね・・・」
私はゆっくりと目を閉じた。
お披露目も無事に終わって良かったわ・・・・。
パーティーも楽しかったわね・・・・。
私はうつらうつら、今日一日の事を考えていたらいつの間にか二匹も帰って来ていて、寝ていた。
暫く二日毎に投稿します。次回は月曜日です。