玉ねぎ屋パーティー 4
私もサミュエル君に青の物を渡そうかしら。蕾がついた花を渡すのは、私は先生じゃないから変かしら。
でも、仕事仲間に多いのは白・・・。
友人だと緑・・・。
うーん、青に返すのはやっぱり蕾がついた花が一番よね・・・。蕾の色も大事かしら?
ハンカチか、クラバットか、花か・・・、そう考えていると後ろから声が掛かった。
「ジェーン嬢はワインですか?」
ジロウ隊長がワインボトルを置きながら隣の席に座り、マツさんがお肉やスープを目の前に置いてくれた。
「ええ、少しだけ。マツさん有難うございます」
「沢山お食べ。隊長もしっかり食べて頂戴。山盛り作ってるから残さず食べな。玉ねぎの丸ごとスープと、レッドボアの香草焼きだよ、パンはあそこにあるから、勝手に取っておくれ」
私達の前に料理をドンっと置くとマツさんは別のテーブルにも料理を運んでいた。私は自分のお皿にレッドボアを取り分けると、お肉にかぶりつきワインを飲んだ。
「あー、いい食べっぷりですね」
「ふう。凄く美味しいですよ!魔法を沢山使ったのでお腹はぺこぺこですね」
私はもぐもぐしながら杖を振って師匠が飛ばした火花を消していく。
「油断するとすぐに火花出すので困ったものです、火球出さないだけマシって思わなきゃダメなんですかね?あ、すみません、かぶりつくのはお行儀悪いですね」
「いや、自分は気にしませんけど。好きに食べていいんじゃないですか?晩餐会ではないのですし、気になるのなら、自分が切り分けますよ」
「見苦しい時は遠慮しないで注意して下さいね」
大丈夫ですよ、と言われ、私は頷いてワインを飲んだ。
「それにしてもジェーン嬢の魔法は凄いですね。今日のエスコートの時の祝福、綺麗でしたよ。自分には風でしたが嬉しかったです。王女様に光魔法を使われた時は成程なあと思ったんですよ、教会ですしね、水か光だろうなあと思っていました。薬師長に土を使われて、自分の祝福も土かな、と思っていたら風だったので驚きました。なんで自分が風だったんですか?」
ジロウ隊長はレッドボアを綺麗に切り分け、私の方に玉ねぎスープと一緒に綺麗に盛り付けたお肉を差し出してくれた。
私は汚れた手を拭いて、スプーンを持つと玉ねぎスープを口の中に入れた。
「ジロウ隊長、女子力高いですよね。あれ?土が良かったのですか?」
「なんですか、女子力高いって。あー、土でも風でも嬉しいんですが、風が意外だったと言うか。どちらかと言うと、風はハワード隊長かと思ったんですよ」
私が玉ねぎを飲み込み、ジロウ隊長を見るとワインを飲んでレッドボアを口に運んでいた。ジロウ隊長の方がいい食べっぷりだと思う。
「うーん、なんででしょうね?飛竜さん達は確かに風魔法のイメージですよね。でも、私はウィリデさんとジロウ隊長が、風を切って緑の草原の中を飛んでいる気がしたんですよね。国中を駆けている姿が風魔法だと思ったんですかね?」
ジロウ隊長はワイングラスを持ったまま、じっと私の方を見ている。
「風魔法はコロン領でも練習を沢山しましたし、コロン領ではジロウ隊長に沢山お世話になりましたしね。だから風魔法だったのかな?すみません、師匠から好きにして良いと言われて、その場で決めようと思ったんです。だからこう、感覚的な感じなのかな?」
「いや、光栄ですよ。ちょっと不思議だったから聞きたかっただけです」
私達が話しているとハワード隊長がジュースとパン、デザートを手に私の隣の席に座った。
「ジェーン嬢、オレンジジュースとデザートはいかがですか?パンも焼き立てで温かいですよ」
「オレンジジュース!頂きます、甘い物は別腹って言葉があるらしいですよ。ハワード隊長、ワインは飲まれます?」
私が新しいグラスにワインを注ぐと、ハワード隊長はジュースを注いで私の前に置いてくれた。
私がパンを自分のお皿に取っていると、ジロウ隊長はケーキを切り分けてそれぞれのお皿に取り分けていた。
「美味いです、良いワインですね。街の食堂でこのワインを置いてるんですか?ここは格式高い食堂なのですか?」
「王都で評判の下町の人気食堂ですよ。食堂の奥さんにお願いしてお酒は半分位ランさんが持ち込ませて貰ったそうです。師匠の前には最初だけ高いお酒を出して、後は、安い物を出しておくって言ってましたけど」
二人は笑って頷いた。
「それが宜しいかと。このワインをあのように飲んでいてはすぐに財布が空になってしまいますね。すみません、先程の話が聞こえてしまいまして、私にも教えて欲しいのですが」
「お披露目の祝福ですか?」
「ええ、私も自分は風かと思っていました。だから火で少し驚きました。先程感覚的な物とおっしゃってましたが、私のイメージは火でしょうか?」
ハワード隊長は私に向き直って聞いてきた。私はパンをちぎってスープに浸して口に入れ込み、もぐもぐとしながら考える。
「うーん、気になります?イメージでは風でしょうね。おそらくハワード隊長自身も。どちらかと言うとジロウ隊長の方が火だと思います」
オレンジジュースを一気に飲み、ワインを注ぎながら二人を見ると、二人もワインを飲みながら私の方をじっと見ていた。私はドライフルーツがたっぷり入ったパウンドケーキを口に入れて杖を出した。
うん、お酒が効いてて美味しいわ。
マジックバッグから小粒の水晶を二粒出すと、水晶に魔力を流す。
「気になるんですよね?うーん、魔力や属性を知られていいのなら分かりやすいかなあ、試してみます?お酒を飲んでるから上手く出来ないかもしれませんが、まあ、小さい水晶ですし出来ると思います。お二人は魔力を今、出せます?私の手を握ってみて下さい。手元だけ膜をはって見えなくしましょうか。あ、おぼろげマントをテーブルに掛けますか」
「あー、隊員の検査みたいなやつですね、え?ジェーン嬢、出来るんですか?まあ、自分は属性は隠してないのでかまいませんが」
私はおぼろげマントを出して私達のテーブルに掛けた。ジロウ隊長が私の手を握って魔力を出す。私は杖を振りジロウ隊長の魔力を引き出していき、水晶に魔力を流していった。
水晶がジロウ隊長の魔力に染まっていく。そしてゆっくりと私の魔力を流していくと、属性に合わせて水晶の色が赤と黄色の二色に変わった。他の人には水晶は見えない。
私はジロウ隊長に水晶を見せて小さな声で話す。
「ふう、成功です。ほら、これ。ジロウ隊長の魔力は黒ですけど、色が変わりましたよね、赤と黄なので、土と火が強い感じですよ。黄色の方が多いので土属性が強いですね。ジロウ隊長の特性としてはこれですね、以前されてから変わりましたか?では、ハワード隊長も宜しければどうぞ」
「失礼します」
ハワード隊長も私の手を握ると魔力を流す。私は同じように水晶を出して魔力を引き出して練っていく。
「ほうほう、風と光ですね。緑が多いので風がメインですね」
私は小声で話しながら緑に白が混ざった水晶を見せる。
「うーん、せっかくなので・・・」
私は小さな魔法陣を出し、水晶に祝福を授けた。
「守護者に力を、剣となり、盾となれ」
ぽわっと水晶は光り、私の魔力も混ざり二つの水晶の中に蜂蜜色の粒がキラキラと輝いた。
「どうぞ、小さいですけど守護を掛けました。御守りにして下さい。御守りはいくつあってもいいでしょう?小さな袋に入れておけばいいですよ」
二人は水晶を受け取った。
「いいんですか?教会で作って貰ったらお布施が結構いる奴ですよ?遠慮なく貰いますが」
「ええ、有難く受け取ります。大切に致します。凄いですね、ジェーン嬢はこのような事も出来るのですか・・・」
私はマントをマジックバッグにしまうとワインを飲み頷いた。
「まあ、作ってくれって言われて作るのは面倒なんで普段はしませんよ。聖職者じゃありませんしね。私、本当に魔力操作が下手でして、色んな人の真似をして練習していたんですよ。皆がどうして魔力操作が出来ているか気になってですね。で、魔力検査の時にこうやって魔術士の人や教会の人が検査をしているのを思い出して、魔力操作によさそうだと思って練習していたら出来るようになったんですよね。勉強の役には立ちませんでしたけど」
「いえ、凄い事だと思います」
「いや、普通出来ないでしょう」
「話がそれましたが、要するに二人の特性はその水晶です。でも、祝福を授ける時はハワード隊長は火だと思ったんですよね。コロン領に行く時に空を飛んで行ったでしょう?太陽にあんなに近い事は生まれて初めてでした。だから風よりも太陽のイメージになったのかな?飛竜は太陽な気がしました。ハワード隊長は火属性はありませんよね?だから、あくまで私がその時に感じたイメージです」
「成程。魔法使い様の闇もお聞きしても?祝福で闇は珍しい気がしました」
「そう言えばそうですね。祝福を授ける時は光か水で授ける事が多いですね。闇の祝福は、私が闇魔法が得意な事もありますがクリスさんに付けて貰った宵闇、そして一緒に見た景色ですかね。あと、夜って長いですよね、皆寝ちゃいますけど。その間をしっかり優しく守ってくれるような人だと思いました。クリスさん、私のパパですから」
「「成程・・・」」
二人はワインを飲みながらご飯を食べて私の話を聞いた。