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玉ねぎ屋パーティー 3

パーティーの夜は続きます。

私がレオナルド王子の肩に手を置くと、ゆっくりと私の腰に手を回されて踊りだした。



「ジェーン様、本日は素晴らしいお披露目だった」


「有難うございます」


「本当に素晴らしい魔法だった。お披露目を見て魔術士、治療師に憧れる者も増えると思う。ここに来るまでも、子供達が木の棒を振り回して魔女様、魔法使い様の真似をしているのを見た。魔術士、治療師の数が減った今、魔術に興味を持つ者が増える事は喜ばしい事だ」



必死にステップを踏みながら私は頷いた。



「魔術局も改革を進めたいのだが何せ人数が減ってしまった、早急に優秀な魔術士、治療師を増やさねば。王都の学園から特待生制度を見直す機会だと思う。特待生制度は下位貴族や優秀な平民の為、少なからず反発があったりするが今なら周りも文句は言えない」


「素晴らしいと思います。私も学園時代はアルバイトをしていました」


「薬師長からジェーン様は薬師科の優秀な生徒だったと聞いた。私は優秀な生徒が浮きこぼれない様にしたいんだ、才能を潰さないように教師の改革も必要だと思う、教師を育成する事にも力を入れたい。先の話にはなるが平民用の高等学校も作るつもりでね、その方が平民には楽な事もあると思うんだ」


「薬師長様が?・・・恥ずかしい点数ばかり取ってましたよ?でも、学校が増え、選べるようになる事は良い事ですね」



王子は柔らかい表情で、ゆっくりゆっくりとスッテプを踏む。


身体が弱いと聞いていたが確かに身体の線は細く、肌も色白だったが儚げな印象はなく芯が強い人の様だと思った。



「良かったらいつでも魔術局に遊びに来て欲しい、私も具合が良い時は薬局にお使いに来よう、護衛が伴う為仕事の邪魔になるだろうか?ジェーン様と魔術の話や研究の話が出来れば嬉しい。私は魔法属性の研究をずっとしていたんだ。まあ暫くは魔術局から出る事は難しくなるだろうし、仕事は山積みだから時間的に厳しいか」


「属性の?興味深いですね。もし薬局に来られるならお昼時か、閉店近くがお客様が少ないので、その時間が宜しいかと。事前に魔鳩でお知らせ頂くと嬉しいです。来られる時は気をつけてお越し下さいね」


「有難う。ダンスをジョージより先に踊ったのは久しぶりだ、ジョージと仲良くして欲しい。踊って頂けて嬉しかった」



私がくるりとターンをして曲は終わった。王子が礼をされると王太子が私の前に来られて礼をされた。



「ジェーン様。お疲れでないのなら、私とも踊って頂けますか?」



王子様二人と踊る私は凄いんじゃないかしら。



「はい、喜んで。お分かりだと思いますが、ダンスは下手なので宜しくお願いします。足を踏んでも許して下さい」


「それは勿論。どうぞ、手を」


私は差し出された手に、ゆっくりと手を乗せると音楽に合わせて踊り出した。王太子がステップを踏み出されるとゆっくりと話し掛けられた。



「大変お上手です、ワルツは見た目よりも難しいダンスです。お披露目も素晴らしい物でしたが良いパーティーですね。皆が笑顔で、笑い声が聞こえる、当たり前ですが王宮でのパーティーとは全然違う」


「ランさんのおかげですね、もう寝てる人もいますけど」


ジョゼッペさんは酒瓶を抱いてこっくりこっくりとしている。イアンさんが自分のジャケットを掛けてあげていた。



「はは、本当に良いパーティーですね、私はこのパーティーの様な国にしたい。民が笑顔で手を取り、気兼ねなく寝れて、優しく上着を掛けてあげ、食べ物を隣人に分けれるような楽しく踊れるような国を」



「ええ是非。私は、師匠がこうやって、お酒を飲めて笑える毎日にしたいですね。ランさんがお金の心配がないような日々にもしたいですけど、ランさんの金儲けは趣味だから無理ですかね」



ゆっくりとターンをして、一、二、三とリズムに合わせながら視線を上に上げると王太子と目が合った。王太子はじっと私の目を見るとゆっくりと口を開いた。



「ジェーン様は?ジェーン様の夢はどうなのですか?」


「私?ポーションを作って皆と楽しく過ごせる魔女になりたいですね。まだ作りたい薬も商品も沢山ありますし、色々な場所に行ってみたい。私は私の出来る事を見つけたいですが、一番は強くなりたい」



王太子は私の手をきゅっと握られた。



「そうか・・・、そうですね。私も強くなり、強くあろうと思います」



私達がゆっくりと踊り静かにターンを終えると、手をゆっくりと離し優雅に礼をされた。



「とても素敵なひと時でした。兄上と大伯母様の所に参ります」


「こちらこそ、有難うございました。とても楽しく踊れました」


「ええ、とても楽しかった」



優し気にふわっと笑われた王太子は頷かれて、少し離れて私達を見ていた王子の元に行かれた。



「・・・・・もっと・・にお会い・・て・・ば・・・・・」



立ち去る時に言われた最後の言葉は小さくてよく聞こえなかった。





私もさすがに踊りつかれたと、椅子に座り飲み物を飲もうとすると、隣にサミュエル君が座った。音楽は明るい曲に変わり、皆が好き好きに手を取り踊り合っていた。



「ロゼッタ様、飲み物はいかがですか?素敵なダンスでした。踊られて喉は乾いてないですか?ワインとジュースを持ってきましたよ」


「サミュエル君、ジュースをお願い出来ます?」


「はい、どうぞ、ワインは飲まれませんか?」


「ジュースの後に飲みましょう、ふう、美味しいですね」



私がジュースを一気に飲むと、サミュエル君がワインを注いでくれた。



「サミュエル君も飲みましょ、あ、飲めないなら無理しないで下さいね?」


「では、僕も少しだけ飲みます。顔が赤くなるから恥ずかしいのですけど。ロゼッタ様はチョコケーキが好きですか?魔法使い様が先程言ってましたよ。美味しいお店を教えて貰ったって、大通りの新しい店、僕も店主さんのお使いで行きましたよ。人気ですよね」



サミュエル君は今日は可愛い帽子を被っているが、耳は隠していない。ワインを私が注ぐと手で頬を押さえて少し飲んでいた。仕草が可愛い。



「ええ、甘い物は好きです。あのお店、チョコケーキだけではなくて、フルーツケーキも美味しかったです。あの、サミュエル君にお願いがあるのですが、冬祭り用のリボンを三つ、クラバットを三つ、使い魔ちゃん達用のリボンを六つお揃いで注文出来ますかね?今、色々注文をしているので、忙しくて無理ならいいのですが」


「冬祭りならまだ時間ありますし大丈夫ですよ。リボンはロゼッタ様用ですか?」


「リボンは私、師匠、ランさんです。クラバットは魔法使い様達で、使い魔ちゃん達の分は師匠と私の子達ですね」


「成程、問題ないです、色は?」


「黄色でお願いします。すみませんパーティーなのに仕事の話をして。今度詳しく話しましょうね」


「あの・・、ロゼッタ様に青のリボン、差し上げてもいいですか?」



サミュエル君は手をもじもじさせて私を見た。


冬祭りで身に着ける揃いの衣装の色には意味がある。


洋服の色を合わせる人、帽子を合わせる人、でも一番多いのは造花を帽子にさしたり、見える場所に揃いのリボンやハンカチやクラバットを身に着ける。


黄色は家族。赤は恋人、婚約者。緑は友人。白は仲間。


そして思いを伝えたい時には相手に自分の気持ちの色を贈る。赤や黄、白や緑を贈る事もあるが、好きな人にはピンク、そして尊敬する人や、大切な人に贈るのは青。


恋人同士はピンクと赤の花をお互いの帽子に挿したり、老夫婦が黄色の帽子を被りピンクの花をお互いに挿しあっているのを見た事がある。


学校の先生は生徒から青のリボンや、ハンカチを貰ったりする。そして先生も黄緑の葉が多い蕾の花を生徒に送る。



「皆さんのリボンが黄色なら青なら邪魔にならないと思いますので・・・、僕からの贈り物で・・・」


サミュエル君は耳をピコピコしてワインを注いでくれた。可愛い。



「有難う、楽しみです」


サミュエル君は、ニコリと笑って店主さんの方へ行き、私はご飯を食べワインを飲みながら皆を見ていた。




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