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陰陽師

依頼の件で来たのはいかにも日本家屋といった感じの古めかしい木造一軒家だった。

だだし、敷地が異様に広く門が開かれてから建物まではテニスコート三面分ぐらいある。石畳の道の脇には盆栽、池、どこの国だか分からない珍妙な猿の置物まである。

「‥すぐに終わるよ」

言うなり、隣を歩いていた先生が、両手を組んで口元に当てた。ふっ、と息を吹きかけると手の中から光を帯びた蝶が浮かび上がる。そのままひらひら舞い上がって、日本家屋の二階の窓まで飛んで行く。

「我力を欲さんとせん者なり。生まれいでよ、急急如意令」

言葉に遅れて一拍。2階から眩しい光と呻くような声が聞こえた。

「面倒だからこれで終わり。なんだっけ?あの流行りの。リモートワークってやつ」

「だったら事務所から飛ばして下さいよ」

思わずそう言わずにはいられなかったが、ともあれこれで依頼は終了した筈だ。



先生こと、賀茂探偵事務所の所長にして陰陽師の、賀茂雅勝(かもまさかつ)さんは長いこと探偵業務と陰陽師を兼任しているらしかった。正確には、妖怪とか幽霊とか「そういう類」のモノを専門に扱うかなりマイナーな事務所だ。表向きは、なんでも屋。流行りの占い屋やスピリチュアル系統の店ということになっている。

「あー、なんか甘い物が食べたいなぁ、買ってきておくれよ」

構えた指先を二本下ろしながら笑うその人は、長髪黒髪で切れ長の瞳。後ろ姿だけなら女性のようにも見えた。180はあろうかという長身を、紺の和服で包んでいる。

「なんか、じゃなくて具体的に。洋ですか?和ですか?」

「んんー、おいしそうなやつ」

溜め息を吐きながら門を閉めると先生の髪が一瞬、白く光った気がした。

あれ、という僅かな違和感。

「どうしたんだい?」

「え、あぁ‥いや、なんでも」

違和感を空気に包んで無理やり喉奥に収める。ゴクリ、と嫌な音が鳴った。


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