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遺跡発掘作業員  作者: kanoko
2/5

二日目以降頑張ります

二日目の朝。

重い身体を引きずりながらも仕事の準備。

夜中、痛む身体でうとうとしながら考えた。

ガボガボする長靴には下敷きを入れよう。

擦れて痛む手には手袋二枚重ねにしよう、と。

寒さには中の服を増やして、おまけに雨の日用のカッパを着れば良い。

お腹が空いてエネルギー切れ防止にとおやつも持って。

よし、出発だ!


本日も陽気に体操から始まり、昨日の続きの場所を掘る。

土器出てこいー!

アンモナイトなんか出ないかなー?


「アンモナイト、たまに出る事もありますよ。」


恐竜とか、ナウマンゾウなんかはどうですか?


「うーん、どうでしょうね?

出たら楽しいですね。」


私の冗談にもニコニコしながら答える調査員さんは優しい人だった。

遺跡オタクっぽくて、土器だとか石だとか、ここの地形だとか『千年前はですねー』って喋りだすと止まらなくなるけれど。

何人かいる調査員さん、皆同じようにオタク話が止まらなかった。

本当に遺跡が好きで堪らんって感じの人たち。

天職に就いているのかも知れない。


初めに掘った穴はほぼ何も出土しなかったので、違う場所に移って掘る。


辛い作業は同じだけど、手も足もさほど痛まず、心の中でニヤリとした。

少しずつ慣れたのか、初日ほど身体も辛く無い。


せっせと掘って黒曜石数個ゲットした。

私の土器はいつ出るのだろうか。

早く会いたいものである。




そして、運命の三日目。

移動した場所は笹だらけでした。

まあ、笹は先に刈っておいてくれてるんだけど、牧草地の根っこが貧弱に思える程、蔓延っている。

しかも超硬い!

スコップ、刺さらない。

結構な角度の斜面で力も入れられず。

オジサンも悪戦苦闘してるので運ぶ土もほぼ無し。

仕方ないのでハサミと手鍬でチマチマと刈り取った。


うー、何じゃこれ。

牧草地が天国に思える。

全然進みやしない。

こんな場所掘ろうなんて狂気の沙汰だわ!

家の笹には除草剤撒いて枯らしてやったってのに、丈夫過ぎて次々と笹が出てくるんですけどー!

笹の根っこ、こんなに蔓延っているんかい!!


自棄になりながら進めていく。



「助っ人が来てくれましたよ。

そちらのトレンチお願いします。」


顔を上げて見れば、スコップ片手にザクザクと笹を剥いでる男の人がいた。


「城野さん、彼の箕を運んであげてー。」


はい!


私とオジサンが数時間掛けてもほとんど掘れなかった笹をザックザクと掘り進めるヒーロー。


ヤバい、掘れそう。

間違った、惚れそうだわ。


あっと言う間に指定の笹を剥がし終える。


「向こうの竪穴も剥がしちゃいますかー。」


全ての笹を剥がしてくれた人はキラキラと輝いて見えた。


「ありがとうね。

彼は今日から手伝いに入ってくれる樋山くんです。

あちこち手伝ってくれてるベテランさんですよ。」


30歳位の陽に焼けたガッシリした男性だった。

そして、やっぱり遺跡オタクのようだった。





笹を剥がし終えたトレンチをせっせと掘っていく。

たまに出る黒曜石に癒されながら、掘っていく。


「ここは確実に出ると思いますよー。」


期待の穴らしい。


4つ伸びている溝のうち、オジサン、私、樋山さんとひとつずつ掘っていく。


「大抵、この方向に竃が作られるんですよね。

あ、そろそろ土の色が変わってきましたねー。

うーん、うーん、うん?」


私の掘ってた穴に入って調べている調査員さん。


「うーん、あれ?あーこれは、、、」


え、何?

すごく気になるんですけどー!


その時向こうから声がした。


「あ、出ましたー。」


樋山さん?

一体何が出たの?




「はい、はい。あー、土器かなぁ。

動かさないように慎重に掘っていってね。

きっと竃だと思うよ。」


え、樋山さんの方が竃?

と言う事は私の方はハズレ?

竃が作られる方向って言ってたのにー。

ここに住んでた人はあまのじゃくか!


「城野さんの方はこれ、柱の跡みたいだね。

どこまでが壁だったのか知るのに重要だからここまで掘ってみて下さい。」


はい、言われた通りに掘りますとも。

無心に掘り進めていると、オジサンの声がした。


「なんか石が固まって出てきたんだけど。」


「石、動かさないように慎重に掘っていって下さい。

これ、布とか織物する時の重石だと思うんですよね。

千年前の人は糸をこの石に結び付けて織物をしてたみたいなんですよ。」


調査員さんが嬉々として喋りだす。


私は何も出ない場所をせっせと掘っていった。





「土器出ましたー。」


樋山さんが呼ぶと調査員さんたちが集まり喜びの声を上げていた。


近寄って見る。


「え、凄い!」

そこにはほぼ丸ままの土器が横たわっていた。

上から土が被さっていたので割れてはいるものの、多分組み立てればひとつの土器が完成すると思われる状態だった。


「引っ越しする時には物を全部持って行ったり壊して行ったりするみたいなので、これは良い物が出ましたねー。

擦紋土器ですからここに住んでいたのは千年前の人だって確定しましたよ。」


ニコニコと話す調査員さんたち。


サツモン土器?

縄文土器なら聞いた事あるけど、違うのかな?

まあ、私は続きを掘りますか。

欠片も土器の出土しない女ですけどね!


(カマド):煮炊きする場所の事

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