表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
遺跡発掘作業員  作者: kanoko
1/5

遺跡発掘作業員のバイト?!

「バイトの応募者が少なくて困ってるんだ。

是非とも出してくれ!」

叔父さんが手をあわせて拝んでくる。


え?何、何のバイト?

「遺跡発掘作業員?

えー?一体、何するの?!

土掘って一輪車に乗せて運んだりとか?

やった事無い、無理、無理、ムリ!」


自慢じゃ無いけど、体力には自信が無い。

階段上れば息切れするし、十キロのお米を持つのもやっとな人間だ。


「やー、何かそんなに大変な作業じゃ無いみたいなんだよねー。

どっちかと言えば女性に向いてるみたいな?

とりあえず、面接だけでも受けてみてよ。

今、家にいるんでしょ?

頼んだからね、じゃ、又!」


そう言い捨てて逃亡した。


仕方ないなぁ、もう。


短大を卒業して就職したのは良いけど、会社が倒産してしまった。

私はたった二年半でプータローになってしまい、実家に戻って来てしまったのだ。

就職活動を、と思ったのだが半端な時期だったのでどうしようか悩み中。

コンビニでバイトでもしようかと思いながらも、ダラダラと実家に居着いていたのだ。


仕方ないなぁ、面接受けてみるか。

遺跡発掘だなんて、ちょっと興味もあるし。

一生縁の無い事だと思っていたのに。


履歴書用意しながら胸のトキメキを感じていた。




無事に面接も終え、採用通知が届いた。

服装は動き易くて汚れても良い物。

ヨレヨレのジーンズとTシャツを着て、母親オススメのシャカシャカした上下の上着を着る。

婆ちゃんが畑の草取りする時に着てたなーって思ったが、お金を掛けたくなかったので我慢する。

この、何とも言えない色と柄、どうにかならないものかなー。

同級生なんかには見せられないファッションだわ。


長靴を履いて首にはタオルを巻いた。

元々お洒落なんて縁の無い人間だったけど、どこのオバサンよ、ってうなだれてしまった。


帽子に眼鏡、マスク。

なんて怪しい格好だろう。

この格好ではお店で買い物はお断りされるだろうな。

緊張しながら指定された現場へと赴いた。




「皆さん、おはようございます。

怪我などの無いように、まずは朝の体操から始めます。」


現地に集合すると軽く説明があって、体操が始まる。

子供の頃から事ある毎にやってた体操なので、音楽が始まれば自然と体が動く。

まあ、うろ覚えの所もあるが、周りの人を見て真似る。

会社の研修でもこの体操やったなーってちょっとしんみりしてしまった。


「今回は重要遺跡確認調査です。

ここは竪穴群の跡地ですね。

二人一組になってクロップマークの箇所をトレンチ堀りしてもらいます。」


専門用語みたいなのでよく分からなかったが、紐で区切ってある場所を掘って行くらしい。


って、この牧草地、スコップで掘るの?!

もう、ある程度掘ってある穴があってそこを手でチマチマと掘るんだと思っていたわ!

スコップなんて使えるかなーって気が遠くなった。

しかも、大量に穴を掘る場所が指定されてるみたいなんですけどー。

1日どんだけ掘れば良いの?!


堀り上げた土を置くためのビニールシートを広げ、まずは草をスコップで剥いでいく。

スコップ、刺さらないー!


「じょうちゃん、俺が掘ったのを運んでくれ。」


ペアになったオジサンがそう言ってくれた。

このオジサン、多分70歳位だろうなー。

お年寄りよりも体力の無い20代。

仕事に来てすいませんって言いたくなった。

私の名字が城野と書いてじょうのだから、城ちゃんと言ってるのか嬢ちゃんと言ってるのかは不明だが。

もう20代半ば、嬢ちゃんは無いかなー?


プラスチックで出来た箕に次々と入れてくれたので、せっせとシートに運んで置いて行く。

手袋ははめているが、結構な重量が同じ場所にのし掛かるので、指が痛い。

これ、血豆とか出来るかも知れない。

足も、長靴の中で動いているので靴擦れしそうだ。

長靴で靴擦れって、中々体験出来ないよなー。


休憩時間はもうヘトヘトで、魂が抜けて行く気がした。


拠点に張ったテントで休憩ーーー。

うーん、屋根はあるけど周囲を囲って無いので吹きさらしで寒いんですけど!!

その後もひたすら土を運んだ。


時々腰を伸ばしたり回したりして休み休みだけどね。


掘った穴が膝位の深さになった頃、黄色の土が混ざり始めた。


「ここからは手で少しずつ掘って行きます。

移植スコップや手鍬等を使ってこうやって進めて下さい。

石や土器等の遺物が出てきたらこのザルに上げて下さい。

土の状態が変わってきたら知らせて下さいね。」


「はい、分かりました。」


土の状態、、、?

ま、とりあえず掘ってみるか。

風呂マットを切ったような物を敷いて穴に座り込み、少しずつ掘り始める。

草を剥がした下の土は割りとやわらかくて掘りやすかった。

草の根があちこちから飛び出してくる。

この小さいスコップ、ちゃんと研磨してあって刃が付いている。

よく見れば大きいスコップにも刃が付いてた。


小説で剣の代わりにスコップ持って戦うってあったなー。

この研磨されたスコップならば魔物と戦えるのかも知れない、なんてしょうもない事考えながら土を削っていた。


カチ。


うん?石に当たったような音がする。

手でさぐれば、黒っぽい石?ガラス?


「これ、石ですかね?」


近くにいた指導してくれている調査員の人に見せる。


「あ、これは黒曜石ですね。

刃がついているから昔の人はこれをナイフの代わりにしてたのかも知れませんよ。」


ふおおぉぉ!

黒曜石!ナイフ!遺物発見!!!

疲れきってた身体に力がみなぎり、俄然やる気が出て来た気がした。




本日の私の収穫。

黒曜石三個(わりと小さめ)


土器の欠片を出土させた人を羨ましく思いながらも1日目を無事に終えた。


家に帰りまずはお風呂に直行。

体は冷えきり、服を脱げば土がパラパラと落ちる。

手足どころか身体中痛み、どこが『そんなに大変な作業じゃ無いみたい』だよ!

思いっきり土方作業ですわ!!


風呂上がりに湿布をペタペタ貼りため息をつく。

明日動けるかなー。

不安に思いながらも、怒涛の1日目は過ぎたのだった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ