7話 無反応
「紫紺色はプラス60点だ」
「あ、ありがとうございます!」
「よし、次!」
姉さんが優秀っていうのはなんとなく知っていたけどまさかあのリーベルト以上の魔力だとは思わなかった。
「ミナさん流石だな。お前と違って」
「ん? リーベルトは驚かないのか? 自分が姉さんよりも魔力保有量が少ないこと」
「あ? ミナさんに勝てる位なら蟒蛇の肝臓なんかに居ねえよ」
「それってどういうことだ?」
「おまえ、まさか自分の姉貴のこともろくに知らないのか?」
「なんだよそれ? どういう事だよ?」
姉さんは家でごろごろするばっかりで仕事で忙しい素振りは一切見せない。
仕事の話を聞こうとしても罵声を浴びせられるだけで何も話してはくれなかった。
だから俺も余計な詮索はしなかった。
「いいか、ミナさんはな――」
「君で最後なんだけど、魔石玉見せてもらえるか?」
リーベルトと話しているといつの間にか他の参加者の魔石玉は灯り終わり、残すは俺だけとなっていた。
「えっと、それが……」
「灯ってない、だって?」
俺の魔石玉にな変化はなく、ただただ鏡のように自分の顔を映していた。
「こんなの見た事がない。もしかしてそもそも魔力がない? いや、そんな……。魔力を持ってない人間なんて聞いたことが……」
「あの、これって……」
怪訝な顔でぶつぶつと呟きだしたルトラさん。
俺の点数……嫌な予感しかしない。
「反応がないんじゃ点数は……。でも、点数は就けないといけないし。……じゃあもし本当に魔力が無いとしたら」
「魔力が無いとしたら?」
「マイナス100点。かな?」
「マイナス100!?」
さっきの人でさえマイナス10点。
俺、もう終わったのでは?
「あははははははははははははっ! そんな事あんのかよ! ある意味天才だなお前!」
「は、はは」
爆笑するリーベルトに怒りの感情は不思議と沸かなかった。
むしろつられるように俺も笑ってしまう。
「わ、笑いすぎ、ま、まだ、試験は終わってない」
「クロさん」
俺をフォローするようにクロさんが割って入ってきた。
せっかく誘ってもらっているっていうのにこんなフォローまでさせて。自分がどうしようもなく情けない。
「ま、まだ、試験二つ、残ってる」
「そ、そうだぞ! 試験はまだ始まったばかり。次は実際に戦ってるところを見せてもらうぞ」
「が、頑張って」
「は、はい」
いわゆる模擬戦での試験。
応援して貰っていて申し訳ないが、これが一番苦手なんだよなぁ。
「地下に模擬戦が出来る鍛錬上を用意してあるから皆速やかに移動してくれ」
こうして一抹の不安を感じながらもルトラさんの指示で次の試験の為俺達は地下に移動するのだった。
◇
「それにしてもなんで魔石玉が反応しなかったのかしら? あら? この玉……」
「ん? どうしたガディ。私達も地下に行くぞ」
「え、ええ。でもその前にこの魔石玉を見て」
「えっ? うわっ! ひびが入ったのか! ま、まぁでもこのくらいならバレないって! そんなに気にするな! さ、今は試験を優先優先!」
「別にバレるのを気にしてるわけじゃなくて……。うーん。でも私の気にすぎかも知れないわね」