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2話 追放

「それで伝えたいことっていうのは……」


 俺はギルドマスターに連れられてギルドの3階にあるギルドマスターの部屋に訪れていた。

 ギルドマスターは俺の質問に直ぐには答えず、懐から煙草とマッチを取り出すと一服を始め、ゆっくりと自分の椅子に腰かけた。


「お前がここに来て、確か2年だったか?」

「はい」

「お前がその間に稼いだポイントは?」


 クエストは達成するとそのクエストの内容と達成者を国に報告し、クエストの達成の内容、難易度によってギルドには『ポイント』が付与される。

 ポイントが多ければ多い程、国から受ける事の出来るクエストの種類が増えたり、援助金が増える。

 つまり、クエスト達成は自分の生活の為だけではなく、ギルドの為にもなるのだ。

 だが、俺がこの2年間で得たポイントは……。


「580……です」

「580……リーベルトなら一週間もかからず稼げるな」

「……」

「その弛んだ体型、スズメの涙程度のポイント、しかもギルドで騒ぎを起すとは……」

「さっきのは俺の所為じゃ……」


 言い訳をしようとするとギルドマスターの鋭い視線が俺に向けられた。

 ギルドマスターのがたいの良さも相まったからか、圧が強すぎて言い訳も出来ない。


「先に手を出したわけでなくても騒ぎの原因になっていたのは本当だろ」

「……」

「リーダイト・ファリド。この時をもって冒険者ギルド蟒蛇の肝臓ビックドリンクレバーのメンバーから強制脱退を言い渡す。2年間ご苦労だった」

「……は、い」


 ああ、予想してた通りだった。

 思えばここに入れた事さえ奇跡的だった。

 2年間ギルドメンバーとして置いてくれただけよしと思わないと。



 そう。頭では理解している。



 だけど、目からは涙が溢れ、嗚咽が漏れ出す。

 どうしよう、動けそうもない。


「……。そっちの扉は緊急避難用の階段に繋がっている。落ち着いたらそっちから帰ってくれ」

「は、い゛」


 それから30分程経って俺はとぼとぼと部屋を出た。




「その、えと、おねがい」


 フラフラと街をさまよっていると誰かに話しかけられた。

 どこかで見たような気もする顔。

 だが、それに応える気にも、聞く気にもなれない。

 今は何も考えたくない。何も見たくない。


「これ、あとで見て」

「……」


 なにかを手渡されて俺は再び歩き出した。

 ただ目的もなく、無意識に、自動的に。

 

「……家だ」


 しばらくしてほぼ無意識だった俺は、いつのまに自宅の玄関で突っ立っていたのだった。





「わっ! あんたなんでここで突っ立てんのよ。そのでかい図体の所為で家に上がれないんだけど!」

「姉さん」


 玄関で突っ立ったまま結構な時間が経ったらしい。

 いつの間にか姉さんが帰宅する時間になってしまっていたなんて……。


「なーに情けない声出してんのよ! 気持ち悪い」

「……ギルド、追い出された。俺が太ってるから、だから……もう冒険者なんてやめようかな」

「そ、でもあんたの手に持ってるのはなんなのかしら?」

「えっ?」


 俺の手には手書きで作られた冒険者ギルドのチラシが握られていた。


「これってあの時の……」

「やめる気なんて全然ないじゃない。ほら、ご飯作ってあげるからさっさと中に入りなさい。どうせ明日からまた所属できるギルド探すんでしょ?」

「姉さん……」

「なに?」

「ありがとう」

「はぁ? 急に気持ち悪いんだけど。っていうかとっと中に入んなさいよ」



お読みいただきありがとうございます!

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