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心を溶かすのは

ご覧いただきありがとうございます!


秋山に本当の事を伝えた渚。

渚をライバルとし、正々堂々と勝負することに決めた秋山。

光太の気持ちはこれからどうなるのでしょうか?

「「お疲れー!また来週っ!」」


リレーの練習が終わった。


(あー楽しかった!来週も頑張りますかっ)


俺はそんな事を考えながらふと校舎の方を見ると秋山が見えた。


秋山はぼーっとグラウンドを見ている。


こちらには気付いていないようだ。


(いつも明るい秋山でもぼーっとするんだな。)


秋山の初めて見る表情に思わず見とれてしまう。


「あっ光太くん!練習終わったんだ?お疲れー!」


俺に気付いた秋山が話しかけてきた。


「あ、あぁ!終わった!」


秋山に気づかれただろうか。俺は慌てて返事をした。


「もうこんな時間なんだね。光太くん帰る人いないなら一緒に帰ろ?」


「おっけー!じゃあ校門集合で」


「はーい」






俺たちは他愛もない話をしながら帰っていた。


「今日はまだ明るいし、ここまででいいよ!」


「ああ、分かった、また来週な」


「……、光太くん。…あのね…?」


「ん?どうした?」


「…なんでもないっ!また来週!」


そういうと秋山は手を振りながら走って行ってしまった。


(なんだったんだ?)


秋山は何を言おうとしたのか。


悩みがあるなら聞いてあげたい。


俺は秋山にたくさん救われているから。


(話してくれるのを待った方がいいのか、自分から聞くべきか…どうするかな)


そんな事を考えながら俺は帰宅した。







ーーーーー


夕飯中。


珍しく母さんが早く帰ってきたので一緒に食べている。


「光太、もっと食べなさい、あ、お茶いる?ご飯お代わりは?」


…母さんは俺をフードファイターにする気なのか。


「大丈夫だよ、自分で好きなだけよそうから」


「あら、そう?いつの間にかそんな事を言えるようになったのねぇ」


…俺、そんなに幼く見えますか。


「はぁ〜」


「なーに、ため息ついてるのよ。幸せが逃げるわよ。あっそういえば渚ちゃん元気?最近どうしてるの?」


…聞かれたくない事を聞かれてしまった。


「あー、渚は彼氏ができて幸せそうだよ。最近はあんまり話してないからよく分からんないけど。」


「えっ?!渚ちゃん彼氏できたの?!聞いてない〜。」


「会う時間もないし、別にわざわざ言う事でもないだろ」


「渚ちゃんに彼氏ができたなんて信じられないわ!それ本当なの?ショック〜、渚ちゃんと光太は結婚するって母さん信じてたのに〜!」


「付き合ってもないのにいきなり結婚するかよ」


「え〜あなたたちお似合いなのに?」


「どこがだよ。てか渚から家の鍵返してもらった方がいいんじゃね?」


「えっあぁ、そう?渚ちゃんなら別に返さなくてもいいけど、一応後で高山家に行って話してみるわ。ケーキでも買って一緒に食べようかしら。光太も来るでしょ?」


「あ〜もうごちそうさま!俺部屋に戻るわ。勉強しないといけないから高山家には行かない。」



「あらそう?」


バタンッ


俺はドアを勢いよく閉めた。


…渚の話はもういい。話したくないんだ。


暗い部屋に戻るとなんとも言えないモヤモヤが心に貼り付いた。


(あー宿題やる気でねぇ)


ベッドに横になると天井を見上げた。


(…渚、幸せか?)


(俺は…)


そのまま俺は目を閉じた。










ーーーーー




ついに運動会当日になった。


みんな張り切っている。


母さんも渚のお母さんと見に来るらしい。


玉入れに徒競走。どんどんプログラムが進行していく。


次は借り物競争。


色々なお題があり、毎年盛り上がる競技だ。


俺は今年は特に委員会や応援団には所属しなかったので出番がない時はクラス席でみんなと談笑している。


これがまた楽しい。


借り物競争が始まった。


先生やら保護者やら先生の眼鏡までもがどんどん連れられていく。


「山口先輩!いますか?!」


「…おれ?」


「はいっ!一緒に来てください!」


1年生が俺を呼びに来た。


1年生と俺は飛び出し、その組1位となった。


「先輩…っ、ありがとうございました!」


「はぁ、はぁ…。それなんて書いてあったの?」


「『1番好きな先輩』です」


「…それが俺?まぁ、ありがとなっ、じゃあな!」


「はい!ありがとうございました!!」


…男に好かれているらしい。


同性に好かれている事が分かり純粋に嬉しかった。






クラス席に戻ると渚が連れられて行くところだった。


…小西に。


ついさっきまで嬉しかったのにどす黒い気持ちが一気に心の中を覆った。


(なんだよ。わざわざ運動会で見せつけんなよ、クソッ)




「…、…太くん、光太くんっ!何ぼーっとしてるの!早く来てっ!」


はっと我にかえると秋山が俺を呼んでいる。


「早く!借り物のお題、光太くんだから!」


「お、おれ?」


頭の整理が終わらない間にぐっと秋山に手を引かれるとそのままダッシュでゴールに向かった。


「あー!2位だったよ〜。あと少しで抜けたんだけど。」


「悪い、ぼーっとしてて。」


「ほんとよ!何回も呼んだのに!…まぁ楽しかったからいいんだけどねっ!よしっクラス席戻ろ?」


「あぁ。で、お題なんだったの?」


「じゃーん。好きな人。」


「…おぅ。」


お題の紙を見せながら秋山は悪戯っぽい笑顔を見せた。


さっきまでのどす黒い気持ちが一気に晴れた。


秋山にはいつも救われる。


(ありがとう、な)


「ぼーっとしてると先に行っちゃうよ〜っ」


気付くと秋山は数歩先で立ち止まっていた。


俺は走りだした。





ーーーーー


お昼休憩。


母さんと渚のお母さんがお弁当を作ってきてくれたらしい。


…という事は


渚も一緒に食べるという事だ。


(はぁ〜)


憂鬱だ。



「「たくさん作ってきたからたくさん食べてね〜」」


「わぁ〜豪華!いただきまーす!」


「いただきます」


久しぶりに渚が隣にいる。


…緊張する。


母親たちはあーでもない、こーでもないと話に花を咲かしている。


渚はおいしいと言いながらニコニコ食べている。


(緊張してるのは俺だけか)


俺は何も言わず黙々と食べた。


「光太くん、リレー出るんでしょ?頑張ってね!」


渚のお母さんに話しかけられた。


「あ、うん。頑張るよ」


「うちのクラス優勝候補なんだよ!ねっ?こうちゃん」


「あ…あぁ。」


久しぶりにこうちゃんと呼ばれ、体が硬直してしまった。


「そうなの〜!応援してるから頑張って!」


「光太、父さんのために動画撮るからカッコいいとこよろしく」


「あ…はい…。」


「もう〜ママたちっ!こうちゃん、緊張しちゃったよ〜」


「してないっ!」


思わず渚を見た。


すると目が合ってしまった。


渚は目をそらす事なくこちらを見て微笑んでいる。


俺は恥ずかしくなり顔をそらした。


「頑張るよ。じゃあごちそうさま」


そういうと俺はクラス席へ戻った。






ーーーーー



運動会も残すところあと1種目。


そう、リレーだ。


「プログラムナンバー15。クラス対抗リレーに出場する人は集合場所に集まってください。くりかえし…」



集合のアナウンスがなった。


「光太くん、いってらっしゃい。頑張ってね!」


秋山が声を掛けてくれた。


「おう、頑張ってくる」






「よーい、バン!」


ピストルの音が鳴ると一斉に走りだした。


現在2位。


いい勝負だ。


(がんばれ!)


俺は集中する。


2位のままアンカーの俺にバトンが渡った。


アンカーはグラウンド一周するから抜けるチャンスはある。


俺は必死に走った。


さまざまな歓声や応援が沸き起こっている。


「こうちゃん、がんばれー!!」


しかし俺の耳には渚の声だけが響いた。


(今ならなんでもできる気がする)


俺は必死に走った。


1位との差が縮まっていく。


…並んだ。


俺も隣のやつも負ける訳には行かず一歩も引かない。


「こうちゃーん!負けないで!」


渚の声が聞こえた。


(負けてたまるか…!)


ゴール!


僅差で俺のクラスが勝った。


「はぁ、はぁ…」


「光太!やったな!」


「お疲れ!」


クラスメイト達はリレーメンバーに駆け寄り、口々に感謝や労いの言葉をかけた。


「…こうちゃん!凄かったよ!おめでとう」


渚も来てくれた。


「あぁ。ありがとな。渚。」


「ん?何が?」


「走ってる時、渚の声が聞こえた」


「え…?私、そんな大きい声出てたかな?」


渚は赤面している。


「…ほら、行くぞ。閉会式。」


俺はそういうと渚の頭にポンッと手を置くと先に歩きだした。


「あ…ちょっと待ってよ〜」


俺を追いかける渚は少し嬉しそうな顔をしていた。


(この感じ、久しぶりだ)


なんとなく気持ちが良くて空を見上げた。


空も俺の心を表すかのように澄んでいた。


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