デート本番
ご覧いただきありがとうございます!
ついにデート当日。
楽しいデートになるといいのですが。
日曜日。
「光太〜!おーきーなーさーい!」
どこからか母さんの叫び声が聞こえる。
「ん〜。なんだよ…もうちょっと寝れ!?」
時計の針は7:45を指していた。
家から駅まで約20分。
集合時間は8:30だから、余裕を持って家を8:00には出るつもりでいた。
家を出るまであと15分しかない。
「なんで目覚まし鳴らないんだよっ!」
ガチャッ
「あら、やっと起きたのね。目覚まし鳴ってたわよ。自分で切ったんじゃない?」
母さんがやってきた。
「着替えるから早く行ってくれよ!」
「はいはい。デートなんだから変な格好で行かないでね。あ〜母さん楽しみっ!」
そう言いながら母さんはリビングへ戻っていった。
(何が楽しみなんだよ。行くのは俺だっつーの。ってそんな事考えてる場合じゃない!)
急いで支度をし、リビングへ行った。
「母さん、ごめん!朝ご飯食べてる暇ないわ!いってきます!」
「いってらっしゃい。楽しんできてね!あんまり遅くならないようにね〜!」
(ふぅ。間に合った。…渚はまだ来てないみたいだな。)
『男は女を待たせるべからず!渚ちゃんより早く駅に着いてろよ!』
昨日、奏太からそんな電話がかかってきた。
金曜に伝え忘れたからとわざわざ電話してきたらしい。
(渚はそんな事気にしないと思うんだけどな)
渚が来るまで本でも読んでるか。
ペラッ
ペラッ
…内容が頭に入ってこない。
(渚、まだか?)
そう思い顔を上げた時、渚が走ってくるのが見えた。
「こうちゃん。遅くなってごめんね?待った?」
「大丈夫だ。…それよりその格好…」
「えっ?…変、かな…?」
渚は恥ずかしそうに下を向いた。
渚は白いブラウスに青いミニスカートを着ていた。
初めて見る服装に胸がドキドキした。
「…なかなか似合ってるじゃん」
俺は恥ずかしくなり顔を背けた。
「…!!…ありがとう!昨日、ママと買いに行ったんだよ〜。えへへっ!」
「昨日の用事ってそれだったのか?」
「あ、うん。他にもあったけど、買い物がメインだったかな」
「そうだったのか。あ、電車来るぞ。急げ!」
俺たちは電車に乗り、水族館へと向かった。
水族館の最寄駅に到着した。
「…なんか早く着きすぎたな」
「そうだね〜、乗り換えうまくいっちゃったから!」
ぐぅ〜
「…腹減った。」
「えっ?こうちゃん朝ご飯食べてないの?じゃあどこかで食べよ!ん〜、あそこは?」
…あれ?なんだか見覚えがある気がする。
「あそこって、行ったことあるか?」
「え〜忘れちゃったの?昔山口家と高山家みんなで水族館に行った時、寄ったじゃん!」
「え、俺たち水族館来たことあんの?」
「あるよ〜!保育園のときだったかな?」
すっかり忘れていた。
渚は初デートはここで良かったのか?
「渚、今日、ここでいいのか?」
「え?なんで?」
「いや、一回来たことあるし…」
「水族館は何回来てもいいでしょ!私、水族館好きだし、嬉しかったよ?」
「お、おう。ならいいんだけど。とりあえず入ろうぜ」
「うんっ!」
「渚、何頼む?」
「私はオレンジジュース!」
「おっけー。じゃあ席取っといて」
「はーい」
俺たちは向かい合わせに座った。
渚の顔をよく見ると、薄く化粧をしているようだ。
いつもより大人っぽく見える。
心臓がうるさい。
(俺、こんなんで1日もつのか…?)
不安でしかない。
「あ、こうちゃん。そろそろ開館時間だよ?」
「そろそろ行くか。」
「うん、楽しみ〜!どこから行く〜?」
「お前の好きなところから行けばいいよ」
「えっいいの?!じゃあ、クラゲ!」
「…お前クラゲ好きなの?」
「うん!あのふわふわ浮いてるのを見てるのが好きなの〜!早く行こっ!」
「わぁ〜きれい…。」
「だな。」
渚は水槽を眺めてうっとりしている。
俺は水槽の中の魚より渚を見ていた。
「次行こ?」
「あぁ」
そう言って進もうとすると、2人の手が少しだけ触れた。
「「!!」」
「悪い!」
「大丈夫!」
心臓がドキドキする。
(手、あのまま繋げば良かったかな)
少し手が触れただけでこんなにドキドキするなんて。
(何考えてるんだ、俺。手を繋ぐのも、触れるのも受験が終わってからだって決めただろ)
「こうちゃん?どうしたの?」
「…なんでもない。次、何見る?」
「イルカショー、もうすぐ始まるみたい!行ってみよう!」
「わかった。」
渚との時間はあっという間に過ぎ、気づけば夕方になっていた。
正直こんなに楽しいとは思ってなかった。
帰るのは名残惜しいが、渚の両親を心配させる訳にはいかない。
お土産屋さんでお土産を買い、電車に乗った。
帰りの電車のスピードが早く感じる。
あっという間に自宅の最寄駅に着いてしまった。
「こうちゃん、今日はありがとう。…おうちまで一緒に帰ってくれる?」
「当たり前だろ。隣だし」
「ふふっ。そうだよね」
家の前に着いた。
「ちょっと待っててねっ!」
そう言いながら渚は家の中に入った。
「おまたせ〜!」
戻ってきた渚の手には綺麗にラッピングされたプレゼントがあった。
「これ?俺に?」
「うん。バレンタインデーのチョコだよっ!初めて手作りしたから美味しいか分からないけど、何回も練習したから大丈夫だと思う…」
「開けてもいいか?」
「うん!」
中には不揃いの生チョコが入っていた。
「すごいじゃん。これ渚が作ったのか?」
「うん、そうだよ!こうちゃんに用事があるって言ってたのは生チョコを作る練習してたからなの。隠しててごめんね」
(俺の為だったのか…)
「さんきゅーな。これ、食べてもいいか?」
「うん。家でお茶入れるよ!」
「あっ、ちょっと待て。俺からも」
俺はポケットから水族館のお土産を出した。
「これ、やるよ」
「え!いいの?!ありがとう!!これ、欲しかったやつ…!」
渚の顔がキラキラしている。
渚が手に取って欲しそうな顔をしてるのを見て、後で思わず買ってしまったのだ。
「どういたしまして。さ、入ろう。」
俺は渚のキラキラした笑顔をいつまでも見ていたいと思った。




