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葛藤

ご覧いただきありがとうございます!


晴れて恋人同士になった光太と渚。


恋人同士になって少しずつ変わっていく。


心が追いついていけません。

カリカリカリ。


カリカリカリ。


ここは俺の家のリビング。


(…ふぅ。今何時だ?)


いつの間にか時計の針は22時を指している。


隣では渚が欠伸を噛み殺して勉強をしている。


ここ最近、夜は俺の家で毎日一緒に勉強している。


「渚。今日はそろそろ終わりにしよう。」


「ん?あ、もうこんな時間なんだ!なーんか眠いと思ったら!」


「そろそろ帰って寝ないとな。送るよ」


「隣だし、一人で帰れるよ〜!」


「送って行きたいんだから、いいだろ?」


「…ふふっ。ありがとう」


俺達は支度をして玄関を出る。


「「さむっ」」


「明日、お前日直だろ?俺も朝早く行って勉強するから一緒に学校行こうぜ」


「うん、わかった!じゃあ7:20に集合ねっ!」


「おぅ、じゃあまた明日。」


俺は渚の頭をゆっくりと撫でた。


「…うん、また明日ね。」


渚は恥ずかしそうに笑っている。


このままもう少しだけ、と思ったが、渚が風邪をひいたらいけないと思い家に入るよう促した。







バタンッ


自分の部屋に戻った俺はベッドに倒れた。


渚と付き合いだして1ヶ月。


今までには無かった欲がどんどん溢れ出してきている。


もっと一緒にいたい。


渚に触れたい。


(あー、ダメだ。寝よう)


俺は受験生だ。


今は我慢だ。


(手ぐらい繋いでもいい…か?)


まだ手すら繋いでいない。


抱きしめたのも告白の時が最後だ。


手を繋いだら、きっともっと他の事もしたくなる。


(今はダメだ。)


そう考えながら眠りについた。










ユサユサ


ユサユサ


(…なんか俺揺れてないか?)


「こうちゃん!起きて!間に合わないよ!」


「!?渚っ!?」


「もぉ〜!やっと起きた!もう7:20過ぎたよ〜。私、先に行ってるねっ。ちゃんと朝ご飯食べてくるんだよ〜」


渚はそう言って俺の部屋を出て行った。


(やべっ、昨日目覚ましかけるの忘れた。)


俺は急いで支度し、朝食を食べる。


(…はぁ、俺が一緒に行こうって言ったのにかっこ悪。)


今さらかっこつける気は無いが、かっこ悪いのも嫌だ。


(…やべっ、そろそろ行かないと!)


なんだか今日は余裕がない。


俺は急いで家を出た。










ーーーーー

昼休み。


俺は渚の今日の予定を聞くために渚の所へ行った。


「渚、今日…」


渚に話しかけようとすると渚の周りにいた女子たちの目線が一斉にこちらを向いた。


「ごめん!こうちゃん、今日は用事があって!だから先に帰ってて!」


なんだか慌てている。


「…?どうした?」


「…っ!何でもないよっ!ほらっ、奏太くん待ってるから早く戻りなよ!」


「…わかった」


渋々奏太の所へ戻り、お弁当を食べる。


「…。」


渚は女子たちと集まり何か話している。


「女子たち、盛り上がってんなー!」


「はぁ。なんか疲れた。」


「なんだよ〜!彼女ができて毎日幸せなくせにそんな事言うなよ〜!」


「うっせーな。今日はなんか上手くいかない日なんだよ。」


「まぁたまにはいいんじゃね?渚ちゃんと放課後一緒に帰らないならたまには俺と帰ろうぜ!」


「あぁ、そうだな。帰ろう。さんきゅー奏太。」


「おう!」








放課後。


「光太〜。商店街、ピンクだな。」


「そうだな。もうこんな季節か。」


バレンタインデーは次の日曜日。


商店街はバレンタインデーに向けて派手に装飾されていた。


「光太はもらえるんだろ?渚ちゃんの手作りチョコ。いいよな〜!俺も食べたいなぁ〜!」


「ん〜、聞いてないけどどうなんだろうな?まぁ、毎年貰ってるし今さら新鮮味はないな。」


「そんな事言うなよぉ〜!毎年親からしか貰えない俺の事も考えてくれよ〜」


「ごめんごめん。渚も今までは幼馴染チョコだったから親からのチョコと変わらないだろ?」


「違うだろ〜。まぁいいや。俺さ、気になってる子いるんだよね。だからバレンタインデーに逆チョコしようと思うんだけど、どう思う?」


「そうなのか?!知らなかった。で、誰だよ?」


「…秋山さん。」


「?!…秋山か、いいやつだもんな。いつから気になってたんだ?」


「ん〜、今までずっとクラスの友達って感じだったんだけどさ。たまに光太の話を一緒にしたり、他愛もない話をしてるうちにさ、なんか気になってきちゃって。本格的に気になりだしたのは年明けかな?秋山さんとは志望校は違うし、今言わないとと思ったんだよね」


「そうか、頑張れよ!逆チョコ。」


「おう。お前も一緒に選んでくれよ〜!」


「なんで俺も選ぶんだよ」


「光太、秋山さんと仲良かったじゃん。好みとかしらねーの?」


「しらねーよ。ってかお前が選ぶから意味があるんだろ?」


「そうなんだけどさぁ〜、じゃあ一緒に行こうよ。一緒にいてくれるだけでいいからさぁ!一人じゃ心細いんだよ!」


「わかったよ、そんでいつ買いに行くんだよ。」


「金曜の放課後とかどう?」


「おっけー」







家の前に着いた。


渚はまだ帰ってきていないようだ。


(今日は1人で勉強するか)


渚がいないとなんだかつまらない。


今日1日、上手くいかなかった。


いや、実際はいつもと変わらないのだが。


特にいつもと変わりのない日でも、渚と関わらないだけで『今日は上手くいかない』と感じてしまう。


(こんなに渚の事考えてるなんて、渚にはバレたくないな。)


「はぁ〜」


もう少し、冷静になろう。


毎日会えているじゃないか。


なにが不満なんだ、俺。







不満と戦いながら勉強していると、渚がひょこんとやってきた。


「まだ勉強してる?」


「おう。今日は遅かったな」


「ごめんね、用事がなかなか終わらなくて。」


「いいけど。」


「今日は1時間くらいしたらおうちに戻るねっ!」


「…わかった。」


カリカリカリ。


カリカリカリ。


今日はあまり一緒にいれなかった。


渚はどう思っているのか。


横目で渚を見ると真剣に勉強している。


もしかしたら、こんなに想っているのは俺だけかもしれない。


(なんだよ、俺。重すぎ。自分が気持ち悪いわ)


勉強に身が入らない。


(今日はもうやめよう。)


「渚、俺風呂入ってくるわ。渚はキリのいい所まで勉強やってていいから。」


「うん、わかった。」




風呂から上がるとまだリビングに明かりが付いていた。


(まだ勉強しているのか?)


リビングを覗くと渚がテーブルで眠ってしまっていた。


近づいても起きる気配がない。


(…久しぶりに寝顔見たな。こんなに睫毛長かったっけ。)


渚に毛布をかけてやる。


隣りの椅子に腰かけた。


渚の寝顔を見ていると不思議と安らぐ。


頭をゆっくりと撫でた。


(ずっと一緒にいられますように)


俺はしばらく渚の寝顔を見ていた。

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