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受験生

ご覧いただきありがとうございます!



受験生にとって入試はとても不安だ。


…でも俺には他にも不安なことがある。


渚だ。


渚の事になると心が忙しい。

入試まであと4ヶ月。


俺の地域の一般入試はだいたい3月の初めに試験があり、中旬に合否がわかる。


4ヶ月後の俺はどうなっているだろうか。


考えるだけで不安だ。


…待て。


4ヶ月後も不安だが、直近で不安な事があるじゃないか。


今は12月だ。


例年通りならこれから俺は

・高山家とクリスマスプレゼント交換大会

・高山家と紅白見ながらの年越しそば

・高山家と初詣

と何かと渚と関わるイベントが待ち構えている。


「はぁ〜」


自然とため息が出た。


今年はどうだろうか。


やはり彼氏とプレゼント交換して、年越しそば食べて、初詣に行くのだろうか。


…さすがに年越しそばは一緒に食べないか。


そもそも受験生はそういうイベントはしないのだろうか。


渚と会えなければいいと思っているが、彼氏と過ごす事を想像するのも辛い。


…結局会いたい、隣にいたいと思ってしまう自分がいる。


心の中はぐちゃぐちゃだ。


こんな気持ちになるなら、この気持ちに気がつかなければよかった。


「はぁ〜」


「なーに百面相しながらため息ばっかりついてるのよ。お味噌汁冷めちゃうわよ?」


…そうだった。


今は朝食中だ。


「な、なんでもないっ!」


「母さん、何考えてたか当ててあげようか〜?ん〜と…、渚ちゃんの事!」


「ぶっっ!!」


「ちょっと!なにやってんの!お味噌汁がパジャマに付いたじゃない!…てことは図星ね?」


「ち、ちがっ…!」


母さんがニヤニヤしている。


もう嫌だ。


早くこの場から立ち去りたい。


俺は朝食をかきこんだ。


ごちそうさまと言いながら立ち上がると母さんが微笑んでいた。


「恋って良いものよ。光太も怖がらずに恋しなさい」


「えっ…あ、うん。できたら」


俺はうまく返事ができないまま部屋に戻った。


(こんな苦しくて辛くて耐えるのが良いのか…?俺は潰れそうだ…)


そんな事を考えながら学校へ向かった。








ーーーーー


「あそこのケーキ屋さん、美味しいよ〜!」


「私、あれ欲しいんだよね〜!クリスマスプレゼントでおねだりしちゃおうかなっ!」


女子たちが騒いでいる。


受験生なのにとは思うが、受験生だからこそか、とも思う。


(息抜きは必要だしな)


そう思いながらも机に向かっていると、


「渚ちゃんは今年はどうするの?」


渚に質問が行った。


俺は思わず聞き耳を立てた。


俺の耳は気になる事になるとよく聞こえるらしい。


「え〜?まだなんにも決まってないよっ?」


「そうなの?毎年山口君とプレゼント交換してるんでしょ?今年もやるの?」


「こうちゃんとだけじゃないよ〜!家族みんなでだよっ!…今年はどうだろう?一応、受験生だし、暗黙の了解で無いかも!」


「そうなんだ〜!つまんないね!」


「まぁ…しょうがないよ!」


気付けば俺は渚を見ていた。


渚の顔は笑っていた。


…俺はあの顔を知っている。


寂しさを隠している時の笑みだ。


(…しょうがないな。プレゼントくらい用意するか)


俺はHRが終わると誰よりも早く教室を出た。






ーーーーー


「いらっしゃいませ〜」


商店街の雑貨屋に来た。


商店街もクリスマス間近で賑やかになっている。


(あいつ、欲しい物あんのかな?)


店内を見回したが何が欲しいか検討もつかない。


(困ったな〜)


アクセサリー?いや、彼氏でもないしな。


化粧品?…いやいや、俺にはレベルが高すぎる。


ぬいぐるみ?…微妙か?


今までは面倒だからとお菓子で済ませていた。


お菓子でもすごく喜んでくれていたが。


(いざあげるとなるとこんなに悩むものなのか)


世の中の人、すごいわ。


あれこれ考えていると小さなオルゴールが目に入った。


(これ…)


手に取り音を鳴らしてみると、心地よい音楽が流れてきた。


なんだか心が癒されるようだ。


(渚も同じ気持ちになればいいな)


光太は即決し、ラッピングしてもらった。


光太の心は穏やかだった。


ラッピングされた袋を見ると心が温かい。


(喜んでくれるといいけど)


あとはいつ渡すか、だ。


なるべくサラッと渡したい。


24日と25日は避けよう。彼氏とデートかもしれないし。




気付けば自宅の前まで来ていた。


「あの〜、こうちゃん?」


「わっ!」


「きゃっ!」


俺が驚いたのに驚いた渚が耳を塞いでしゃがみこんでいる。


「お前、なんでここにっ!?てかいつから?!」


「あ、え、と…おうち隣だし、5分前くらいから…?」


「あ…そう…。俺なんか変な事言ってた?」


「ううん。なーんにも。でもいくら話しかけても返事してくれなくて、とうとうおうちまで着いちゃったって感じ」


「そ、そうか」


「大丈夫?」


「あぁ。大丈夫だ。…それより、これ。」


俺はラッピングされた袋を差し出した。


「えっ?」


「これ、やるよ」


「え、あ、ありがとう…」


渚は半ば強引にそれを渡され少し困惑していたが、徐々に理解ができてきたらしい。


「これ、クリスマスプレゼント?!開けてもいいっ?」


「どうぞ」


「……わぁ〜!かわいい!これオルゴールだよね?こうちゃん、ありがとう!少しだけ鳴らしてみようかな!」


そういうとぜんまいを巻いた。


「…きれい。なんだか癒されるね!大切にするねっ!」


えへへと笑う渚は頬がほんのり赤く、今までで1番可愛く感じた。


「よかった。俺もその音色聞いた時、癒されたんだ。…じゃあ、寒いし、帰ろう!またなっ!」


「あ、うん!本当にありがとねっ!」


俺は恥ずかしくなり、急いで家へ入った。


(喜んでもらえて良かった。…それにしてもかわいすぎる。)


その日はいつになく機嫌が良く、勉強がものすごくはかどった。




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