平行線
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気づけば光太の胸の中に渚がいた。
ここからどうなるのか?
光太は一歩踏み出せるのか?
(…あったかい。渚の匂いがする。)
…。
……?
………!?
「わっ、なにやってんだ俺!ごめん!」
ふと我に返った俺は、慌てて渚から離れた。
恥ずかしい気持ちやら情けない気持ちやらで頭がパンクしそうだ。
「…。」
渚は何も話さず俯いている。
「ごめん、渚!俺、何やってんだろな!彼氏がいるのにこんな事!ってか許可も無くいきなり抱きつくなんて犯人と一緒だよな!ほんとごめん!」
俺は渚を見る事ができず急いで部屋を出た。
(こんな事になるなんて…。渚があんなにかわいいなんて。もう、近づけない…)
今まで経験した事がないくらい心臓がうるさい。
今にも張り裂けてしまいそうだ。
(帰ろう…。この家にいたら俺、おかしくなりそうだ)
その日はご飯も喉を通らなかった。
ーーーーー
「おはよ〜光太、具合どうだ?」
奏太だ。
「まぁぼちぼちかな。もう体は痛くないし、あとは顔の傷が治ればな!」
「お前、渚ちゃんを守ったんだろ?すごいよな〜!ヒーローだよな〜!俺だったらできないよ!んでんで?その後あつーい口づけでもしたか?」
「!!」
「ん〜何顔赤くなってんの〜?もしかして図星〜?」
…ここまで奏太を恨めしく思った事はない。
「…そんな事あるわけないだろっ!だいたい彼氏持ちにそんな事するかよっ!」
「なーんかムキになっちゃって!気になりますなぁ〜」
「何もない!!」
バンッと机を叩いて立ち上がり、その場から逃げようとした時、渚が近くまで来ている事に気付いた。
「あ、あの、こうちゃん。この前はありがとね?怪我、どう?」
「あ、あああぁ!言っただろ?大丈夫って!…じゃあ俺トイレ行くから!」
俺は逃げた。
あの場にいるのは危険だ。
「光太のやつ変なの〜。ね!渚ちゃん!何か知ってる?」
「えっ!…しらないっ!」
渚は顔を赤くしながら首をブンブンと横へ振った。
「ほんとに〜?怪しいなぁ〜!」
奏太は興味津々の様子だ。
「ほんとだよー!信じてよ〜!」
真っ赤な顔で必死に否定する渚。
「あははっ!そうだよな!2人とも面白くてつい!渚ちゃんに彼氏がいるのに光太が何かするわけないもんな〜!ごめんごめん!」
「…!私に彼氏がいるって、こうちゃんから聞いたの?」
「そうそう!あいつ、渚ちゃんに彼氏ができたって結構ショック受けててさ!って渚ちゃん!?」
気づけば渚は光太の元へ走っていた。
「…っ!こうちゃん!」
「渚?!ど、どうした?」
「あのっ話したい事があるのっ…!」
「ま、また今度じゃダメか?」
「今日、学校が終わったらこうちゃんのおうち行っていい?」
「今日は…ごめん!」
俺はまた逃げた。
(むりむりむりむりっ!今2人で会ったらきっと抑えられない!もう少し落ち着くまでは無理だ!)
…もう少し落ち着くまで。
いつ落ち着くのだろうか。
明日?いや、無理だ。
一週間後?…怪しい。
とりあえず、受験が終わるまで…?
そうだ。
受験が終わるまでなら勉強があるからと言い訳できる。
(渚の話を聞いて受験勉強に支障が出ない保証ないしな。ごめん、渚。)
(…俺、逃げてばかりでカッコ悪いな。)
受験が終わったら渚に俺の気持ち全て話そう。
それが俺のケジメだ。
それまで待っててくれ、渚。




